2社目の現場で、自分の単価は年間490万円だと聞いていました。月に直すと約41万円です。
自分の月収は、残業代を含めた額面の平均で約30万円。差額は月に約11万円になります。
SESエンジニアとして5年ほど、4社の客先常駐を経験してきました。単価は各現場のリーダーや営業の裁量で、聞かされる現場と聞かされない現場がありますが、私は4社とも自分の単価を聞いています。その数字を並べると、単価と月収の差は現場ごとにかなり違っていました。
今回は、2社目の数字を中心に、単価と月収の差、手取り、年収ベースで見た還元率を計算し直します。あわせて4つの現場の数字も並べます。「単価と比べるべきは手取りではなく額面だった」という整理も書いておきます。
この記事で分かること
- 2社目の年間単価490万円(更新後530万円)と、額面月収の平均約30万円という実際の数字
- 単価と比べるべきなのは手取りではなく額面だという整理
- 月次だけで見た差と、ボーナスを含めた年収ベースで見た還元率の違い
- 1社目から4社目までの単価と月収の差(現場によって約8万〜約32万円と幅があった)
目次
2社目で聞いていた単価は、年間490万円でした
2社目の話です。所属していた会社が受けていた案件は、元請けから見て3次請けの立場でした。多重下請け構造の中でも比較的深い階層で、上流の工程を担う元請けや2次請けとの間に、複数の会社が挟まる形になっていました。
現場で作業をしているだけでは、自社がいくらで契約しているのかを知る機会はほとんどありません。単価の情報は営業担当や上司が把握しているだけで、常駐しているエンジニア本人には基本的に降りてきません。
私の場合は、各現場に入っている自社のリーダーや営業から、単価を聞かされる環境でした。2社目では、アサイン時に年間490万円、4月の更新で530万円になったと聞いています。
月に換算すると、約41万円から約44万円です。一方で、自分の月収は額面で平均約30万円(28〜32万円の範囲)でした。残業代は全額実費で支給され、みなし残業の枠はありませんでした。この額面には、その残業代が含まれています。
差額は、更新前で月に約11万円、更新後で約14万円になります。
その差額が実際にどこへ流れていくのかは、内訳まで聞いたわけではなく、今も正確には把握していません。
2社目・3次請けの現場の数字。月換算は年額を12で割った概算で、手取りはこの記事を書くにあたって試算した目安です。
単価が上がった4月、基本給の昇給は月6,000円でした。単価は年間で40万円(月に約3.3万円)上がっていますが、基本給の昇給は年に直すと約7.2万円です。単価が上がっても、その分がそのまま月収に回るわけではありません。
差額約11万円の内訳を、私は把握していません
単価を聞いた時も、差額の内訳まで説明があったわけではありません。月に約11万円の差が、どの会社のどの項目に充てられているのかは、今も分かりません。
分かっているのは、多重下請けという構造そのものです。元請けから2次請け、2次請けから3次請けへとお金が流れていく過程で、それぞれの会社が自社の取り分(マージン)を乗せていきます。
業界メディアの調査では、SESのマージン率はおよそ20〜60%、還元率(請求単価に対して本人に払われる給与の割合)はおよそ60%前後とされています(出典: SES Beginner)。
マージン率と還元率、言葉の整理
マージン率は、元請けからの請求単価のうち、その会社が自社の取り分として差し引く割合を指します。還元率はその逆で、請求単価のうち実際に本人へ給与として渡る割合のことです。ネット上の解説記事では「マージン率30%」のように語られることが多いですが、実際にどの契約の、どの階層のマージン率を指しているのかは記事によって曖昧なことも多いです。
自分の場合、アサイン時は月換算で約41万円の単価に対して額面が約30万円なので、単純計算するとマージン率は約27%、還元率は約73%です。4月の更新後は約44万円に対して約30万円で、マージン率は約32%、還元率は約68%になります。業界メディアが示す還元率60%前後より、やや高い水準でした。もちろんこれは自分の1件のケースを単純に割り算しただけの数字であり、会社の経費構造や契約条件まで踏み込んで検証したものではありません。また、この差額には複数の会社を経由する過程でそれぞれが乗せた分がまとめて含まれているはずで、自社1社だけの取り分がいくらなのかは、この数字からは分かりません。
比べるべきは「額面」であって「手取り」ではない
ここで一つ、整理しておきたいことがあります。単価と比べる自分の側の数字は、会社から支給される額面の月収約30万円です。
そこから税金や社会保険料が引かれた後の「手取り」が、実際に口座に入る額になります。
今回この記事を書くにあたって、額面30万円から標準的な控除で試算してみたところ、手取りはおよそ23万円になるようです。
この試算の前提
独身・扶養なし・協会けんぽ・40歳未満という前提の目安計算です。内訳は社会保険料が約4.27万円、所得税が約8,178円、住民税が約1.99万円(出典: 税金奉行の税金解説書)。自分の実際の手取り額と厳密に一致するとは限りません。
額面30万円と手取り約23万円の差、およそ7万円は、SESの多重下請け構造による中抜きとは無関係の、給与所得者なら誰でも引かれる税金と社会保険料の話です。
単価と手取りの差を見て「差が大きすぎる」と感じるとき、比較の対象にすべきなのは手取りではなく額面のほうです。この7万円分まで「会社に中抜きされた」と考えるのは正確ではありません。
単価と手取りを比べてショックを受けたことがある人がいたら、その差の一部は会社の取り分ではなく自分自身の税金・社会保険料である可能性があることは、判断材料として知っておく価値があると思います。
この整理を踏まえると、単価と比べるべきは額面の約30万円で、アサイン時のマージン率は約27%、還元率は約73%という計算になります。ただ、この数字も、月々の単価と月収だけを比べたものです。
年収ベースでも計算し直しました。
自分の月収には別途、ボーナスが年2回(夏・冬)、合計で年3ヶ月分支給されています。基本給(約23万円)の3ヶ月分として概算すると約70万円です。額面の年収は、30万円×12ヶ月+約70万円で約430万円になります。
年間単価490万円と比べると、還元率は約88%です。530万円に更新された後は約81%になります。
| 月次で見た場合(アサイン時) | 年収ベースで見た場合 | |
|---|---|---|
| 単価 | 約41万円 | 490万円(更新後は530万円) |
| 私の額面 | 約30万円 | 約430万円(月収×12か月+賞与約70万円) |
| 還元率 | 約73% | 約88%(更新後は約81%) |
賞与は基本給をもとにした概算です。単価が税別か税込か、残業の精算がどう含まれているかは確認していないので、この還元率は目安として見てください。会社が別に負担している社会保険料や、営業・管理部門の経費、会社の利益は、この差額の中から出ています。
業界でよく説明されるマージンの中身
- 営業担当者が案件を探し、契約や稼働管理を行うための人件費
- 社会保険料の会社負担分
- 有給休暇や研修費といった福利厚生
- 各社の利益
ただし、このうちどの項目にいくら充てられているのかを、常駐しているエンジニア本人が内訳付きで知らされることはまずありません。自分の場合も、単価は聞けても、差額の内訳まで説明されたことはありません。この「聞いても内訳が分からない」「そもそも単価を教えてもらえない」という感覚は、自分だけのものではないようです。公正取引委員会が2022年に公表した調査では、多くの事業者が実際の取引に関与していない「中抜き」事業者の存在を感じている、と指摘されています。同じ調査の法人向けアンケートでは、回答した事業者の15.7%が「買いたたき」に該当すると考えられる経験があると答え、13.5%が下請代金の減額を挙げています(出典: ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(概要)|公正取引委員会)。
出典: 公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(2022年)。
報告書には、買いたたきを経験した企業から寄せられた具体的な声も紹介されています。
「予算が足りないから」と著しく低い金額を一方的に提示された、賃上げに伴う単価引き上げを求めたのに一方的に据え置かれた、元請け事業者の落札価格が低かったことを理由に30%カットされた、といった内容です。
自分が聞いた単価がこれらの事例のどれかに直接当てはまるわけではありませんが、下請けの立場にある会社が値下げ圧力にさらされやすい構造の中に、自分の会社も、そして自分自身もいたのだろうと思います。
調査の対象と、業界の中での位置づけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査期間 | 2021年10月〜2022年6月 |
| 対象 | 下請法上の下請け事業者になり得る、資本金3億円以下のソフトウエア業者2万1000社(4739社が回答、回答率22.6%) |
| 別途のアンケート | フリーランスのSE2540人、企業に所属するSE1776人 |
| 位置づけ | 公取委がソフトウェア業でこの規模の調査を行うのは、2003年の前回調査以来18年ぶり |
| 出典 | 出典: ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(本体)|公正取引委員会 |
調査の背景には、情報サービス業が下請法(2026年1月から取適法)違反の措置件数でもっとも多い業種だという実態があります。同じ報告書によれば、2021年度に公取委が下請法の実体規定違反として措置した7878件のうち、業種別で見ると「情報サービス業」が686件で最多でした。2位の機械器具卸売業が678件ですから差はごくわずかですが、全業種の中でトップであることに変わりはありません。
これを受けて公取委は2022年2月に「優越的地位濫用未然防止対策調査室」を設置し、同年5月には、下請法の適用対象にならない取引にも立ち入り調査を行う「優越Gメン」の体制を創設しています。
調査では、商流には形式的に関与するだけで実際には何の業務も行わないまま利益を上げる「中抜き」事業者の存在を感じたことがあるかも聞かれており、全体では25.9%、多重下請けの一番下流に位置する最終下請け事業者に限ると33.5%(3社に1社以上)が感じていました。自分がいた3次請けという立場は、この最終下請けに近いか、あるいはもう1段階手前だったはずで、この数字が示す状況とそう遠くない場所にいたのだと思います。
私の場合
正直に言うと、こうした業界の相場や調査結果を自分の意思で調べたのは、この記事を書くにあたって今回が初めてでした。単価を聞かされた当時は、そこまでする気力も関心もありませんでした。
数字を聞いて受け止めるだけで、それ以上調べようとはしなかった自分がいます。
なぜ、単価を知っても何もしなかったのか
結論声を上げても、会社同士の契約の構造は変わらないと感じていたからです。
単価を知った後、自分がとった行動は「特に何もしなかった」に尽きます。リーダーや営業に交渉を持ちかけたわけでも、その日から転職活動を始めたわけでもありません。理由を一言で言えば、「一手も変わらないから」でした。
交渉するという選択肢が頭に浮かばなかったわけではありません。単価を上げてほしいと申し出ることも、還元率の見直しを求めることも、理屈の上ではできたはずです。
交渉も転職も選ばなかった理由
- 契約の当事者は会社同士だった常駐しているエンジニア個人が単価交渉の場に呼ばれることはありません。仮に営業やリーダーに相談しても、実際の契約条件にまで反映されるとは考えにくいと感じていました。
- 転職しても構造は変わらない予感があった単価と手取りの差そのものは、勤め先を変えても別の形で存在し続けるだろうと思っていました。SESという働き方を続ける限りこの構造からは逃れられない、という感覚がその時点ですでにありました。
今振り返ると、この感覚は自分が特別に諦めが早かったというより、3次請けという立場に置かれた個人ができることの少なさそのものだったのだと思います。自分にできたのは、聞かされた数字をただ受け止めることだけでした。
同じ現場にいた他のメンバーが、この差についてどう感じていたのかは分かりません。単価の話を誰かと突っ込んでした記憶もありません。給与や単価の話は、現場の同僚同士でもあまり話題にしないものだった、というのが自分の印象です。
ポイント: 単価と手取りの差を知ったからといって、それが即座に交渉力になるわけではありません。契約の当事者はあくまで会社同士であり、現場に立つ個人が持てる情報と、実際に動かせる範囲との間には距離があります。
だからこそ、単価を知って何もできなかったとしても、それは個人の交渉力不足ではなく、契約構造上の制約だと捉えておくほうが実態に近いはずです。
他の現場でも「単価より給与が低いのは仕方ない」と感じてきました
2社目の数字は、1つの現場だけの特殊な出来事ではありません。4つの現場で聞いた単価と、そのときの額面月収を並べると、差は現場ごとにかなり違っていました。
| 現場 | 単価(月換算) | 額面月収 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1社目(配属後) | 月55万円 | 基本給226,000円(残業は実費で別) | 約32万円(基本給との差) |
| 2社目(3次請け) | 約41万円→約44万円(年490万→530万円) | 平均約30万円(残業代を含む) | 約11万円→約14万円 |
| 3社目(離任時) | 約54万円(年650万円。開始時は年580万円で約48万円) | 約39.5万円 | 約15万円 |
| 4社目(現在) | 約53〜58万円(年640〜700万円) | 約40〜45万円 | 約8〜18万円 |
月換算は年額を12で割った概算です。額面月収は、3社目は基本給269,000円に職能手当等・家族手当・住宅手当・残業代(約5万円)を足した額、4社目は管理職で残業代が出ない状態の額です。
1社目は、単価の55万円に対して基本給が226,000円で、差額は約32万円と一番大きくなっています。残業代が実費で別に出る分を含めていないため、実際の額面との差はこれより少し縮まります。2社目以降は、単価の水準が上がっても、差額は約8万〜約18万円の範囲に収まっています。
単価と月収の間に開きがあるのは、SESで働く上での前提のようなものだと思っています。ただ、その開きの大きさは1社目の約32万円から4社目の約8〜18万円まで、現場によって動きました。一律に決まっているわけではないというのが、並べてみての感想です。
SESが単価を教えたがらない理由をどう見ているか
結論単価が伝わると賃上げの交渉が起きやすく、マージンの取り方も見せたくない情報だから、というのが業界でよく聞く説明です。
単価を本人に教えるかどうかは、現場や会社によって扱いが違います。多くの現場では、契約単価は会社同士の情報であって、常駐する本人に開示する義務はない、という整理がされています。私の場合は、各現場のリーダーや営業の裁量で、4社とも単価を聞くことができました。これは、一般的には開示されないことのほうが多いと言われる中で、恵まれた環境だったのかもしれません。
単価を明かしたがらない理由として業界でよく語られるのは、下位の階層に単価が伝わると「その分もっと給与を上げてほしい」という交渉が発生しやすくなる、という会社側の警戒です。
加えて、マージンの取り方自体が各社の経営判断に関わる部分であり、取引先である下請け企業に対してすら見せたくない情報だという事情もあるのだろうと思います。この点は自分が直接確認した話ではなく、業界の中でよく言われている説明として受け止めています。
準委任契約と多重下請けの基本的な仕組み
SESの契約の多くは準委任契約と呼ばれる形態で結ばれ、成果物の完成ではなく労働力の提供そのものが契約の対象になります。元請けが受注した案件の人手が足りなければ協力会社に声をかけ、その協力会社もまた別の会社に声をかけます。これが繰り返されて、1つの案件に3次請け、4次請けといった会社が連なっていきます。
SESの領域では、この多重下請け構造が長年問題視されながらも、業界の商習慣としてなくなっていません。そして、どの階層の取引が法律で保護されるかは、会社同士の規模で線引きされています。
私が単価を聞かされた当時は下請法の時代でしたが、下請法は2026年1月1日から取適法(中小受託取引適正化法)に変わりました(出典: 中小受託取引適正化法(取適法)関係|公正取引委員会)。ソフトウェア開発(プログラム作成)や情報処理の委託では、次のどれか1つの組み合わせに当てはまれば、取適法の対象になります。
| 発注元(委託事業者) | 発注先(中小受託事業者) |
|---|---|
| 資本金3億円超 | 資本金3億円以下 |
| 資本金1千万円超〜3億円以下 | 資本金1千万円以下 |
| 従業員300人超 | 従業員300人以下 |
下請法から取適法で変わった点(この記事に関係するもの)
- 対象の基準に従業員数が加わった(資本金の2つの区分は下請法のころと同じ)
- 価格協議の求めに応じず、一方的に代金を決めることが禁止された。ただし協議を求める当事者は会社同士で、常駐しているエンジニア個人ではない
- 呼び方が「親事業者」から「委託事業者」、「下請事業者」から「中小受託事業者」に変わった
下請法のころは、資本金がどちらも1000万円以下の小規模な会社同士の取引や、資本金の区分が同じ水準の会社同士の取引は、保護の枠から外れていました(出典: 日経クロステック)。取適法では、資本金で外れる取引でも、発注元の従業員が300人を超え、発注先が300人以下なら対象に入ります。それでも、小規模な会社同士が連なる深い階層には、どの基準にも当てはまらない取引が残ります。
多重下請けの階層が深くなるほど、間に入る会社の規模は小さくなりがちで、3次請け・4次請けという立場は、今も法律の保護が届きにくい場所に近いと考えています。当時の「言っても変わらない」という感覚は、あながち的外れでもなかったと思います。
自分がいた立場が当時の下請法の保護対象に入るかどうかを、当時の自分は確認していませんでした。もし今同じ状況に置かれたら、自社と発注元が上の表のどこに当てはまるか(資本金と従業員数)を確かめておくことは、判断材料の一つになるはずです。
単価を上げるための一般的な打ち手を、私は結局試しませんでした
還元率や単価の差について調べると、対策として語られる内容は大体決まっています。還元率の高い会社に移る、フリーランスとして元請けに近い形で契約する、資格やスキルを身につけて単価交渉の材料にする、といったものです。
どれも理屈としては理解できますし、実際にそうやって還元率を改善した人もいるのだろうと思います。
ただ、自分はそのどれも本気で試したことがありません。還元率の高い会社を探して転職活動をしたわけでもないですし、フリーランスとして独立する準備を進めたわけでもありません。単価を知った日から今に至るまで、結局は同じような働き方を続けています。
フリーランスになった場合の手取りと、資格が単価に効いたかどうかは、それぞれ別の記事で数字を出して確かめています。
なぜ試さなかったのか、はっきりした理由があるわけではありません。強いて言えば、目の前の現場の仕事に慣れてしまっていたことと、単価の差を知った時の衝撃が、時間が経つにつれて薄れていったことの両方だと思います。
「一手も変わらない」という感覚は、単価を知った直後だけでなく、その後もずっと自分の中にあり続けました。
行動しなかった一番の理由は、気力の問題である以上に、還元率の高い会社を探すにも転職するにも、今の現場を離れる具体的な踏ん切りがつかなかったことだったのだと、今振り返ると思います。
単価を知ることに意味はあったのか、今の自分の実感
結論給与は変わりませんでした。ただ、その差が自分で動かせるものか、動かせない構造かを切り分ける材料にはなりました。
この話を後輩にどう伝えるか、と聞かれたら困ります。単価を交渉しろとも、転職しろとも、正直あまり言う気になれません。実際、自分もそうしなかったからです。
単価を知ったところで、給与が上がったわけでも、現場が変わったわけでもなく、ただ「そうだったのか」と分かっただけでした。ネットには「だから交渉すべき」「だから転職すべき」と誘導する記事が多く、それが間違っているとは思いませんが、自分の実感は「知っても行動しなかった」というものです。
交渉して単価や還元率を見直してもらえた人もいるのかもしれませんが、自分の場合はそうならなかったですし、そうしようとも思いませんでした。「交渉すべきだった」と感じる人がいても間違いではないと思いますが、私自身は行動しなかったことを今になって強く後悔しているわけでもありません。
ポイント: 行動しなかったことを正当化する気はありませんが、動かなかった背景には「立場」の問題があったのだと思います。契約の当事者は会社同士であり、単価交渉は本来、現場のエンジニア個人が単独で挑む場ではありません。
もし今、単価と手取りの差を知らされたばかりなら、まず確認してほしいのは、自分がその差をどうにかできる立場にいるのか、それとも動かせない契約構造の話なのか、という切り分けです。前者であれば交渉や転職に意味がありますが、後者であれば、行動しなかったからといって自分を責める必要はないと思います。
単価を知らされたときに確かめること
- 単価と比べている数字は、手取りではなく額面になっているか
- ボーナスを含めた年収ベースでも、還元率を計算し直したか
- 自社と発注元が取適法(旧下請法)の対象に入るかを、資本金と従業員数で確認したか
- その差は自分が動かせるものか、会社同士の契約構造の話かを切り分けたか
まとめ
2社目の単価は年間490万円(更新後は530万円)、月収は額面の平均で約30万円でした。月次で見た差額は約11万円から約14万円で、その内訳は今も正確には分かっていません。分かっているのは、この差が現場によって約8万〜約32万円と幅があり、多重下請け構造の中で一律には決まっていないことです。
単価を知って何かが劇的に変わったわけではありません。それでも、この数字を記録として残しておくことには意味があると思っています。この記事を書いて気づいたことは、次の3つです。
- 単価と比べるのは手取りではなく額面 手取りと単価の差には会社の取り分だけでなく自分自身の税金・社会保険料も含まれるので、混同すると実態より差が大きく見えてしまいます
- 月次だけで判断せず、年収ベースで計算し直す 私の場合、月次の還元率は約73%、ボーナスを含めた年収ベースでは約88%(更新後は約81%)でした。月次だけを見るより、年収ベースのほうが実態に近い数字になります
- その差を動かせる立場かを見極める 動かせないと分かったなら、それを個人の力不足だと抱え込まないことです。単価を知らされた時にできることは、交渉や転職だけではありません
月次の数字だけを見て一喜一憂する前に、一度額面ベース・年収ベースで見直してみる価値はあると思います。それだけでも、当時の自分より少し楽になれるはずです。同じような立場で単価を聞かされた誰かが、この記事を読んで「自分だけじゃなかった」と思えるなら、それで十分です。




