現場が変わるたびに、単価は上がったり下がったりしました。右肩上がりでも右肩下がりでもなく、ただ現場ごとにバラバラだった、というのが正直なところです。
SESエンジニアとして5年ほど、4社の客先常駐を経験してきましたが、経験を積んだ分だけ単価が積み上がっていくという感覚は持てませんでした。
ただ、これが自分だけの話なのかを確かめたくて公的統計を調べてみたところ、経験年数と賃金の関係は、思っていたより素直ではありませんでした。今回は、SESの単価が上がらない理由を実感と統計の両面から整理した上で、契約更新のタイミングで最低限確認しておきたいことまでお伝えします。
この記事で分かること
- 公的統計で見た、ソフトウェア作成者の経験年数と給与の実際の動き方
- 経験年数の積み上げより大きく効いている、役割による差の大きさ
- メンバーの立場のまま単価を上げようとしたときに、何が壁になるか
- 単価交渉をしなかった立場から見た、契約更新前に確認・記録しておきたいこと
目次
- SESの単価が上がらない理由を、4社の推移から考える
- 統計で見ると、経験年数と賃金はどう動いているか
- 経験1〜4年は、経験0年からほとんど動いていない
- 15年かけて上がる幅より、職種の差のほうが大きい
- 会社の規模では、月給より賞与のほうに差がつく
- 年収で比べると、差はさらに広がる
- 単価を実際に決めているのは何か
- 案件の相場と商流が、先に上限を決めている
- 作る人か、決める人かで層が分かれる
- メンバーのまま単価を上げようとすると、何が壁になるか
- 「スキルを上げれば単価は上がる」はどこまで本当か
- 契約更新の前に、せめて何をしておけばよかったか
- 契約更新の1〜2か月前に、確認しておきたいこと
- 単価そのものを教えてもらえないとき、どう聞くか
- 交渉の材料として、記録しておけばよかったこと
- 単価の話を、どこで判断材料にするか
- まとめ
SESの単価が上がらない理由を、4社の推移から考える
先に、自分の側の事実から書きます。私はこれまで、二次請け・三次請けというSESの下流の立場で、業務システムのウォーターフォール現場をいくつか渡り歩いてきました。1〜3社目はリーダーやサブリーダーではなく、手を動かすメンバーとして入っていました。4社目では現場に入って数か月後に自社の役職上の管理職になり、現在は手を動かしつつ3〜5名を見ています(残業代は支給されません)。
その中で、単価も待遇も現場ごとに上下しました。前の現場より上がったこともあれば、下がったこともあります。
経験年数に比例して積み上がっていく形ではなかった、というのが4社を通した実感です。現場の当たり外れも運次第で、年数を重ねるほど良い条件を引きやすくなった、という手応えはありません。
この感覚を、長らく自分の能力や立ち回りの問題だと思っていました。ただ、それを確かめる材料を持っていたわけではありません。
単価の金額そのものは、4社とも各現場のリーダーや営業から聞けていました。ただ、その単価がどう決まっているのかを説明されたことは一度もなく、自分の値段が決まる過程は見えない場所にありました。
そこで、この記事を書くにあたって公的統計を調べ直しました。以下は、私が現場で検証した話ではなく、調査結果として確認できた内容です。実感と統計は、はっきり区別して書いていきます。
統計で見ると、経験年数と賃金はどう動いているか
結論経験年数と賃金は単純な比例では動いておらず、月給は経験1〜4年でも経験0年とほぼ同じ水準でした。年数の伸び幅より、職種(役割)の差のほうが大きく出ています。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査には、職種の小分類ごとに、経験年数階級別の賃金を集計した表があります。
「ソフトウェア作成者」という職種の令和7年の数字(企業規模計10人以上、男女計)を並べると、次のようになります。所定内給与額は2025年6月分、年間賞与その他特別給与額は2024年1〜12月分の数字です(出典: 第14表 職種(小分類)、性、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|令和7年賃金構造基本統計調査・政府統計の総合窓口)。
| 経験年数 | 所定内給与額(月) | 年間賞与その他特別給与額 |
|---|---|---|
| 0年 | 30.3万円 | 8.4万円 |
| 1〜4年 | 30.2万円 | 88.7万円 |
| 5〜9年 | 35.0万円 | 113.5万円 |
| 10〜14年 | 40.1万円 | 127.0万円 |
| 15年以上 | 41.3万円 | 154.7万円 |
| 経験年数計 | 35.7万円 | 109.5万円 |
経験1〜4年は、経験0年からほとんど動いていない
最初に目に留まったのは、上から2行目です。経験年数1〜4年の所定内給与額は月30.2万円で、経験0年の30.3万円とほぼ並んでいます。差はわずか600円ほどで、逆転と呼ぶには小さすぎる差です。
この差の読み方
経験0年の層には、他の職種や他業界から移ってきた人が含まれるため、新卒だけの数字ではありません。前職の給与水準を持ったまま入ってくる人が混ざれば、その分だけ0年の平均は押し上げられます。だから、この差をそのまま「働き始めると給料が下がる」と読むのは正しくありません。
もっと素直に読める事実は別にあります。1〜4年目の所定内給与額は、実質的に初任給の水準からほとんど動いていない、ということです。
年間賞与まで含めれば話は変わります。0年の8.4万円に対して1〜4年は88.7万円と、こちらは大きく上回ります。毎月の給与だけを見れば、最初の数年はほぼ横ばいですが、賞与を含めた年ベースでは景色が違って見えます。
5年目前後で単価が積み上がっている実感を持てなかったのは、少なくとも自分の能力不足だけが理由ではなかったようです。
15年かけて上がる幅より、職種の差のほうが大きい
もう一つ、同じ表で気になった点があります。ソフトウェア作成者が経験0年から15年以上までかけて上がる幅と、同じ調査の同じ年に見た職種による差を並べると、次のようになります。
15年以上かけて積み上げる年数の伸び幅より、作る側から設計・コンサル側へ職種が変わることによる差のほうが大きくなっています。年数を重ねることより、役割が変わることのほうが、賃金に対して大きなインパクトを持っている、と読めます。
この2つを並べて見たとき、自分の単価が横ばいだった理由が、少し違う角度から見えてきました。私は1〜3社目の間、一貫して「作る側」にいました。メンバーとして手を動かす立場で、設計や意思決定の側に回ったことはありません。4社目では管理職になりましたが、自社の役職上のもので、手を動かしつつ3〜5名を見る立場です。統計の上では、少なくとも1〜3社目の私は、年数の階段をゆっくり上がる列に並んでいた、ということになります。
この統計の限界
この統計が測っているのは会社が労働者に支払う賃金であって、SESの請求単価そのものではありません。単価と給与の間には会社の取り分が挟まっているので、両者は別の数字です。それでも、単価が上がれば給与にも反映されるはずだという前提に立てば、賃金の動き方は単価の動き方をうかがう材料になります。この記事で統計を見ているのは、あくまでその範囲でのことです。
会社の規模では、月給より賞与のほうに差がつく
同じ統計は、企業規模別の内訳も持っています。ここを開いてみて、月給よりも賞与のほうに、はるかに大きな差がついていることに気づきました。ソフトウェア作成者の経験年数計を、企業規模で分けると次のようになります。
| 企業規模 | 所定内給与額(月) | 年間賞与その他特別給与額 |
|---|---|---|
| 1,000人以上 | 37.0万円 | 138.6万円 |
| 100〜999人 | 35.1万円 | 95.0万円 |
| 10〜99人 | 34.5万円 | 85.5万円 |
月々の給与だけを見ると、1,000人以上と10〜99人の差は2.5万円です。大企業のほうが高いとはいえ、月給だけならそこまで極端な差ではありません。
差がついているのは賞与のほうです。1,000人以上が年138.6万円なのに対し、10〜99人は年85.5万円。その差は53.1万円、倍率にすると約1.6倍です。
年収で比べると、差はさらに広がる
所定内給与額を12か月分にして賞与を足すと、年収は次のようになります。
ソフトウェア作成者・経験年数計の年収の目安(所定内給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額)。
月給の差は2.5万円でしたが、年収に直すと1,000人以上と10〜99人の差は約84万円まで広がります。月々の数字だけを比べていると、この差にはなかなか気づけません。
この数字は、SESで働く立場からすると他人事ではありません。多重下請けの構造では、二次請け・三次請けを担うのは中小規模の会社が中心です。商流の下にいるということは、統計上この賞与の薄い側に属している可能性が高い、ということでもあります。
現場が変わるたびに単価が上下しても実感が曖昧だった理由の一つは、自分が月々の数字しか見ていなかったことにあると考えています。
なぜ賞与でこれだけ差がつくのかについて、統計そのものは理由を語りません。ここから先は私の読みになりますが、賞与は会社の業績から配分されるものである以上、商流が深く利益率の薄い会社ほど原資を確保しにくい、という構造は関係しているはずです。ただ、これは統計で裏付けた話ではないので、そう考えている、という以上のことは書けません。
単価を実際に決めているのは何か
結論単価は、案件の予算枠と商流の深さが先に上限を決めます。個人の経験年数が効くのは、その枠が決まったあとに残る幅の中だけです。
統計が示すのは全体の傾向までで、個々の単価がどう決まるかまでは分かりません。ここからは、下流の現場にいる立場から見えている範囲の話になります。
案件の相場と商流が、先に上限を決めている
SESの単価は、エンジニア個人の値段として決まるのではなく、案件の予算枠の中で決まります。そしてその予算は、現場に入る前の時点ですでに確定していることがほとんどです。工期が現場の外側で決まっているのと同じ構造で、単価の枠も外側で決まっています。
そこに多重下請けの階層が重なり、元請けから二次請け、三次請けへと降りてくる過程で、それぞれの会社の取り分が引かれていきます。同じ仕事をしていても、商流のどこにいるかで手元に残る金額が変わります。個人の経験年数が効いてくるのは、この枠がすべて決まった後の、残った幅の中だけです。
- 案件の予算枠現場に入る前に、外側で確定している
- 商流の階層元請けから二次・三次へ降りる間に、各社の取り分が引かれる
- 個人の経験年数枠が決まったあとの、残った幅の中だけで効く
だから、「この人は5年目だから単価を上げよう」という順番では動きません。先に案件の枠があり、その枠に人を当てはめる順番です。 この順番を理解するまで、自分は単価が個人の評価で決まるものだと思い込んでいました。
この見方は、自分一人の実感にとどまりません。公正取引委員会が2022年にソフトウェア業を対象に行った実態調査でも、買いたたきや代金の減額といった違反行為が多重下請構造の上を連鎖すると指摘されています。
買いたたきや代金の減額といった違反行為が、多重下請構造型のサプライチェーン上を連鎖する。
上流で決まった予算の窮屈さが、下流に行くほど強まっていく構造は、行政の調査でも裏付けられているというわけです。マージン率・還元率の内訳は、単価と手取りの差を扱った記事で詳しく書きました。
作る人か、決める人かで層が分かれる
もう一つが役割です。統計で見た職種の差は、業務内容の違いというより、意思決定の位置の違いだと考えています。要件を決める側、設計方針を決める側、見積もりを出す側は、案件の予算そのものに関与します。作る側は、決まった予算の中で作業する立場です。
この線は、下流のSESにいるとかなり越えにくいものでした。設計や要件定義の工程は元請けや上位の会社が持っていることが多く、二次請け・三次請けのメンバーに回ってくるのは製造やテストの工程が中心になります。
役割を変えたくても、その工程が自社に降りてきていなければ、現場での努力だけでは手が届きません。
メンバーのまま単価を上げようとすると、何が壁になるか
ここまでの整理を踏まえると、メンバーの立場のまま単価を上げようとしたときの壁は、3つに分けられます。
メンバーのまま単価を上げにくい3つの壁
- 案件の予算枠が先に決まっている個人の評価が入り込む余地が狭い。
- 商流が深いほど手元に残る金額が減る同じ仕事でも、階層が深いほど目減りする。
- 役割を変えるための工程が降りてこないそもそも自社に工程が降りてきていない。
3つとも、現場でどれだけ丁寧に働いても直接は動かせない要因です。これを「努力すれば単価は上がる」という話にまとめるのは、自分の実感としても統計の読み方としても無理があります。
一方で、この整理には救いもあります。単価が上がらないことを、自分の能力の問題として抱え込む必要がない、ということです。
私は長いことこれを個人の課題だと思っていましたが、経験年数の効き方が統計の上でも緩やかで、しかも役割の差のほうが大きいなら、悩む場所を間違えていたことになります。
私の場合
正直に書くと、私はこの5年、単価交渉を自分から持ちかけたことがありません。案件も自分で選べる立場になかったので、交渉のテーブルがそもそもどこにあるのか分からなかった、というのが実情です。
これを賢い立ち回りだったとは思いませんが、仮に交渉していても、案件の枠が先に決まっている以上、動かせた幅は限られていたはずだとも考えています。
「スキルを上げれば単価は上がる」はどこまで本当か
結論そのままは当てはまりません。今の案件の枠の中で評価されるスキルを磨いても、枠を超える単価にはなりません。単価を動かすのは、案件の予算に関与する側の経験です。
SESの単価について検索すると、単価を上げる方法として資格の取得、スキルアップ、契約更新時の単価交渉を挙げる記事が多く出てきます。その多くはSES企業自身が運営するメディアです。ここまで整理してきた内容と噛み合わない部分があるので、触れておきます。
私の場合
まず自分の経験から言うと、基本情報技術者を取得しても、単価や案件の条件に反映された実感はありませんでした。取得後、現場で資格について何か聞かれたこともありません。
これは資格の価値そのものの話ではなく、資格が単価の決まる場所に届いていなかった、ということだと今は考えています。
統計の側も、この見方と矛盾しません。経験年数の階段は緩やかで、それより職種の層の差のほうが大きいという結果でした。効いていたのは、積み上げた量ではなく、どの層にいるかでした。
だからスキルアップが無意味だと言いたいわけではありません。ただ、スキルには2種類あると分けて考えるようになりました。
| スキルの種類 | 中身 | 単価への効き方 |
|---|---|---|
| 今の案件の枠の中で評価されるスキル | 担当範囲を早くこなす、品質を落とさない | 案件の枠が先に決まっているので、枠を超える単価にはならない |
| 層そのものを移動させるスキル | 要件を決める、設計方針を出す、見積もりを組み立てるなど、案件の予算に関与する側の経験 | 統計で見た職種の差は月15.0万円。単価を動かす力を持つのはこちら |
そして下流のSESでは、後者の工程が自社に降りてきていないことが多い。ここが、一般的なアドバイスがそのままは効かない理由だと考えています。
資格については、無駄だったとは思っていません。体系的に学び直す機会にはなりました。ただ、それを単価が上がる手段として期待していたなら、期待する先を間違えていたことになります。
契約更新の前に、せめて何をしておけばよかったか
先ほど書いたとおり、単価交渉を自分から持ちかけたことは一度もありません。だからここから先は、交渉して結果を出した経験談ではなく、交渉しなかった自分が今振り返って気づいたことです。
この記事を書くために自分の5年間を振り返ってみると、交渉するかどうかとは別に、せめてやっておけばよかったと思うことがいくつか出てきました。
契約更新の1〜2か月前に、確認しておきたいこと
契約更新の周期を扱った記事に書いたとおり、更新の連絡自体は更新月の前月に、営業から一行だけ届きます。
ただ、その連絡の前提になる客先側の判断は、もっと早い段階から積み上がっています。
だから確認するなら、連絡が来る前月ではなく、そのさらに1〜2か月前が現実的なタイミングです。営業に単価そのものを尋ねるのではなく、「次の更新で契約内容や体制に変更がありそうか」を聞く程度なら、答えが返ってきやすいと感じています。
自分の側でも、この1〜2か月の間に、担当している工程が広がっていないか、次のフェーズで任されそうな範囲があるかを棚卸ししておくと、更新後に条件を確認する材料になります。私はこれを更新のたびにやっていたわけではなく、今振り返って「やっておけばよかった」と思う習慣です。
単価そのものを教えてもらえないとき、どう聞くか
私は4社とも、各現場のリーダーや営業から単価そのものを聞けていました。ただ、営業の役割を整理した記事にも書いたとおり、立場によっては契約当事者ではないという理由で答えが返ってこないこともあります。その場合も、精算幅の下限のような実務上の情報なら答えてもらえることがあります。
単価の金額を聞きにくい、あるいは答えてもらえないときは、「単価はいくらですか」ではなく「前回の更新から、契約条件に変わった点はありますか」のように、変化の有無を尋ねる形が現実的だと考えています。
答えが返ってこなかったとしても、それ自体が情報です。契約当事者ではない自分に開示できる範囲がどこまでかを、その反応から確認できます。
交渉の材料として、記録しておけばよかったこと
4社目に入って半年ほど経ったころ、1on1で「この半年で印象に残っている対応はありますか」と聞かれたことがあります。とっさに答えられず、記憶をたどりながら二つほど挙げましたが、もっとすぐ出せる形で残しておけばよかったと後で思いました。
単価交渉の材料として語られるのは、担当工程の広がり、対応した仕様変更や障害の件数、スキルシートに書き足せる経験といったものです。どれも、日々の業務の中では意識しないと記録に残りません。
記録しておけばよかったこと
- 担当する工程が広がった月と、その具体的な内容
- 自分の判断で対応した仕様変更・障害・レビュー指摘の件数
- 面談やスキルシートに書き足せる経験が増えたタイミング
私はこれらをほとんど記録していませんでした。だから今、5年分を正確に振り返ろうとしても、断片的な記憶しか残っていません。交渉するかどうかは後で決めればよく、まず記録だけは残しておく。これが、できなかった側から今言える、いちばん実務的な教訓です。
単価の話を、どこで判断材料にするか
では何を見ればいいのか。この記事を書くために統計を確認して、自分の中で判断の軸が2つに整理できました。
1つ目は、月額だけでなく年収ベースで見ることです。先ほどの表でも、経験0年と1〜4年は月給ではほぼ横ばいですが、年間賞与を足すと差がはっきりつきます。
月の数字だけを比べると、実態を見誤ります。これは以前、自分の単価と月収の差を計算し直したときにも同じ結論に行き着きました。
2つ目は、年数ではなく自分がどの層にいるかを見ることです。作る側にいるのか、決める側にいるのか。今の現場でその境界に近づける工程を触れているのか。年数は自動的に増えていきますが、層は自動では変わりません。
次の現場を見るときの確認点
- 自社が何次請けの位置にいるか(商流の深さが手元の金額に直結する)
- 設計・要件定義の工程が自社に降りてきているか
- 月額だけでなく、賞与を含めた年収ベースで前の現場と比較できているか
これらは単価をすぐに上げる方法ではありません。ただ、次に現場が変わるときに何を見ておくべきかを決める材料にはなります。
自社の単価と並べる材料としては、フリーランス向けの案件紹介サービス(クラウドワークス テック
など)で、自分の経験に近い案件がいくらで出ているかを見る方法もあります。ただし、案件の単価は社会保険や税金を自分で負担する前の金額なので、自社の単価とそのまま比べず、あくまで目安として見ます。
まとめ
4社の現場を渡り歩いて、単価は上がったり下がったりを繰り返しました。この記事を書くために令和7年の賃金構造基本統計調査を確認したところ、経験年数と賃金が単純な比例関係にないことが数字にも表れていました。
- 経験年数の効き方 ソフトウェア作成者の所定内給与額は、経験1〜4年で月30.2万円と、経験0年の30.3万円とほぼ横ばいでした
- 役割の差 経験0年から15年以上までの伸び幅が月11.0万円なのに対し、ソフトウェア作成者とシステムコンサルタント・設計者の差は月15.0万円ありました。15年分の年数よりも、作る側から決める側への移動のほうが、賃金に対して大きな重みを持っています
- 単価を決めているもの 案件の予算枠と商流の深さ、そして役割の層です。どれも現場のメンバーが日々の働き方で直接動かせるものではありません
だからこそ、単価が上がらないことを自分の能力の問題として抱え込む必要はない、というのがこの記事でお伝えしたかったことです。一方で、交渉しなかった自分にも、記録だけはしておけたはずだという反省があります。契約更新の1〜2か月前に何を確認したか、担当工程がどう広がったかを残しておくことは、交渉するかどうかを決める前の、誰にでもできる備えです。
もし今、経験年数だけが増えて単価が横ばいのままだと感じているなら、確認する先を年数から層に切り替えてみてください。自社が商流のどこにいるか、設計や要件定義の工程が自社に降りてきているか、そして前の現場との比較を年収ベースでできているか。この3つは、営業の持っている案件にも会社の制度にも左右されずに、自分の側で確認できます。




