「今日も気づいたら23時。参考書を開く体力なんて残っていない」。SESの客先常駐でこう感じたことがある人は、少なくないはずです。

私はSESエンジニアとして5年ほど、これまで4社ほどの客先常駐を経験してきましたが、2社目では月40〜60時間の残業をこなしながら、基本情報技術者を約2か月で独学取得しました。

今回は、そのときどこから勉強時間を捻出したのか、特に「私物PCを客先に持ち込めない」という制約が学習にどう効いたかを、実際の数字とあわせてお伝えします。

この記事で分かること

  • 月40〜60時間の残業がある現場で、実際に確保できた学習時間の内訳
  • 私物PC持ち込み禁止という客先常駐特有の制約が、学習方法をどう制限したか
  • 「空いていそうで空いていない時間」の具体例(仕様の回答待ちの時間)
  • 平日にできたことと、週末にはほとんどできなかったこと
  • 現場が変わるたびに学習環境がリセットされるという構造への向き合い方
目次
  1. SESの客先常駐で勉強時間がないと感じた本当の理由
  2. 客先常駐ならではの制約|私物PCが持ち込めないと何が変わるか
  3. 仕様の回答待ちの時間は、勉強に使えなかった
  4. 通勤と昼休みで確保した、平日1〜2時間の学習時間
  5. 通勤時間はスマホと紙に絞った
  6. 昼休みも学習時間に数えた
  7. 週末に取れた時間と、勉強期間の見積もり
  8. 通勤中心の学習は、手を動かす演習が少なくなる
  9. 優先順位をつけて、期間を区切った
  10. 現場が変わればまた振り出しに戻るという構造
  11. 現場に入る前に確認しておきたいこと
  12. まとめ

SESの客先常駐で勉強時間がないと感じた本当の理由

結論勉強法を工夫する以前に、机に向かえる時間そのものが足りていなかったからです。

2社目は自社が三次請けにあたる案件で、月40〜60時間の残業がありました。繁忙期は60〜80時間になる月もあり、残業代は実際の時間に応じて全額実費で支給されていました。この現場の単価や給与の構造については別記事で詳しく書きましたが、今回はその残業時間そのものが、勉強時間にどう跳ね返ってきたかという話です。

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まず前提として、この忙しさが特別だったのかどうかを確認しておきます。

JILPT(労働政策研究・研修機構)が公表している主要労働統計指標によると、2026年6月の調査産業計の月間所定外労働時間は9.7時間でした(出典: 所定外労働時間:主要労働統計指標|JILPT)。製造業でも13.7時間です。

この数字と比べると、当時の40〜60時間という残業は、全産業平均のおよそ4倍から6倍にあたる水準だったことになります。

この比較の限界

もちろんこの統計はIT業界に限定したものではなく、全産業をならした平均値です。また、私が勉強していた時期と、統計の時期も一致していません。そのままSESの現場の忙しさを代表する数字として使うのは正確ではありません。

ただ、少なくとも「月40〜60時間の残業」が一般的な水準からはかなり離れていたことだけは、この数字からも裏付けられると考えています。

残業時間が全産業平均の4〜6倍という状況では、勉強法をどうこう言う前に、そもそも机に向かえる時間が根本的に足りていません。スキマ時間の使い方を工夫する以前に、まず「1日に自由に使える時間がどれだけ残っているか」を正しく見積もることが出発点になります。

客先常駐ならではの制約|私物PCが持ち込めないと何が変わるか

一般的な「勉強時間の作り方」の記事では、通勤時間や休憩時間にオンライン講座を見る、という提案がよく出てきます。ただ、客先常駐という働き方には、そうした一般論がそのまま当てはまらない制約がいくつかあります。

私の場合

私が経験した2社目は、私物PCの持ち込みが認められていませんでした。私物PCは客先に持ち込めない一方で、スマートフォンは持ち込み可能でした。

客先支給の業務PCはありましたが、当然ながら仕事専用です。支給PCで学習サイトを開くという発想自体、最初から持っていませんでした。

なお、週に1〜2日はVPNで自宅から接続するリモートの日があり、その日は自宅の私物PCが手元にありました。ただ、就業時間中の勤務であることに変わりはなく、その時間は学習に使えません。

この結果、客先にいる間に使える学習手段は自然と「スマホの一問一答アプリ」と「紙の参考書」の2つに絞られることになります。

学習手段客先で使えたか理由
スマホの一問一答アプリ使えたスマートフォンは持ち込み可能だった
紙の参考書使えた客先で使える2つのうちの1つ
オンライン動画講座、ブラウザで解く形式の過去問演習使えなかった客先では手が出せず、私物PCが使える自宅の時間に回すしかなかった

今振り返ると、スマホだけで講義動画と問題演習が完結するオンライン講座(オンスク.JPなど)を選んでいれば、通勤時間を一問一答だけでなく動画でのインプットにも回せたかもしれません。私物PCが持ち込めない現場でも、客先にいる間に使える形式なので、候補として挙げておきます。

ポイント: この「持ち込めない」という制約が、客先にいる間と自宅で使える学習方法をはっきり分けていた、というのがこの記事の核心です。

同じ40〜60時間の残業でも、私物PCを持ち込める現場であれば、休憩時間にちょっとした演習問題を解く選択肢が残ります。それが最初から選べない環境だったことで、客先にいる間の学習は「知識のインプット」に偏りました。

仕様の回答待ちの時間は、勉強に使えなかった

2社目では、仕様に疑問があれば、質問票を起こして回答をもらう運用でした。ただ、回答までの日数は一定ではなく、チャットや口頭で直接聞けることもありました。質問の仕組みは現場によって違います。

連絡や確認が遅い場面では、回答が返ってくるまで、席で手が空いているように見える時間ができました。「せっかく空いた時間だから、少しでも参考書を進められないか」と考えたこともあります。

ただ、就業時間中の待ち時間は、あくまで勤務時間です。私物の参考書を広げて勉強に充てる前提の時間ではないので、学習時間には数えませんでした。

手が空いているように見える時間と、実際にその時間を自分のために使えるかどうかは、別の話です。「待ち時間=勉強できる時間」とは考えないほうがよい、というのが私の結論です。

通勤と昼休みで確保した、平日1〜2時間の学習時間

制約の中でも、実際にどれだけの時間を確保できたのか、数字を具体的に書きます。当時の客先までの通勤は、片道45〜60分でした。往復では90分から2時間になります。

平日に確保できた学習時間は、1日あたり1〜2時間でした。内訳は、通勤の時間と昼休みが中心です。

時間帯使えた手段備考
通勤(片道45〜60分)スマホの一問一答アプリ、紙の参考書客先にいる間と同じく、私物PCは使えない
昼休みスマホ、紙の参考書平日の1〜2時間の一部
帰宅後・週末自宅の私物PCなど残業の多い現場では、まとまった時間は取れなかった(週末は土日の合計で2時間以下)

通勤時間はスマホと紙に絞った

私物PCが使えないので、通勤中に使える手段はスマホと紙の教材です。往復で90分から2時間という通勤時間は、平日の学習時間の中心でした。

昼休みも学習時間に数えた

昼休みも、平日の1〜2時間の一部です。ここでも使えるのは、スマホと紙の参考書でした。

平日にならすと、1日1〜2時間、週にすると5〜10時間です。残業が月によって変わる現場だったので、確保できる時間も一定ではない、という前提で見積もっておく必要があります。

週末に取れた時間と、勉強期間の見積もり

平日の細切れの時間だけでは、演習量として足りない分野もあります。紙に手を動かしながら考える作業は、電車の中や休憩スペースの短い時間では現実的にこなせません。

本来はそうした「腰を据えて解く」勉強を土日にまとめたいところでしたが、週末に確保できた時間は、土日の合計で2時間以下でした。まとまった時間は、ほとんど取れませんでした。

平日の5〜10時間と週末の2時間を合わせると、こうなります。

平日(通勤・昼休みなど)5〜10時間/週1日1〜2時間
週末(土日の合計)〜2時間/週
合計5〜12時間/週勉強期間は約2か月

勉強期間は約2か月でした。週に5〜12時間を8〜9週続けると、合計でおよそ40〜100時間です。残業の多い現場でも、期間を短く区切れば、最低限の学習量は確保できました。

通勤中心の学習は、手を動かす演習が少なくなる

正直に書くと、このやりくりはあまりきれいなものではありませんでした。通勤と昼休みが中心の学習は、「読む・覚える」ことに偏り、「手を動かして解く」演習は少なくなります。

ポイント: 私物PCを持ち込めない環境では、客先にいる間の学習が「読む・覚える」に偏りがちです。

この偏りを事前に認識しておかないと、試験が近づいてから、演習量が足りていないことに気づく、という展開になりやすいです。

優先順位をつけて、期間を区切った

週に5〜12時間では、全範囲を万遍なくやる余裕はありません。そこで、勉強期間を約2か月に区切り、その中でやることを分けました。

客先にいる間は、スマホと紙の教材でできるインプット。私物PCが使える自宅では、演習。使える手段がもともと違うので、役割分担はこの形に落ち着きます。

客先にいる間:インプット中心

  • 通勤の片道45〜60分:スマホの一問一答アプリ・紙の参考書
  • 昼休み:紙の参考書
  • 私物PCは持ち込めない

自宅:アウトプット中心

  • 週末(土日の合計で2時間以下)
  • 自宅の私物PCが使える時間に演習を回す
  • リモートの日(週1〜2日)も就業時間中は使えない
使える時間の性質に合わせて、勉強内容を振り分けた

使える時間の性質に合わせて勉強内容を振り分ける、という考え方に落ち着いたのは、この現場を経験したからこそだったと思います。

現場が変わればまた振り出しに戻るという構造

この経験を振り返って感じるのは、勉強時間の作り方は個人の工夫だけで完結する話ではない、ということです。通勤時間、休憩時間の長さ、私物端末の持ち込み可否、リモート勤務ができるかどうか。これらはすべて客先側の環境や自社の就業ルールで決まっていて、現場が変わるたびにリセットされます。

実際、その後に経験した現場では状況が変わりました。3社目も2社目と同じく、週に1〜2日のリモートができました。質問や課題を整理するExcelがあり、チャットや口頭でも聞くことができました。4社目は、もともと週1出社の予定で、最近はほぼフル在宅です。通勤がない分だけ、使える時間は増えています。

制約がなくなっても

リモートの日が増えても、勉強に使える時間が自動的に増えるわけではありません。リモートの日も就業時間中は勤務時間で、使えるのは通勤がなくなった分と就業後の時間です。

環境の制約が変わることと、実際に確保できる時間が増えることは別の話なので、現場が変わるたびに見積もり直す必要があります。

現場に入る前に確認しておきたいこと

これから客先常駐で資格取得やスキルアップを考えている人に向けて、参画前や参画直後に確認しておくとよい点を挙げます。

参画前・参画直後に確認しておきたいこと

  • 私物PC・私物端末の持ち込みは可能か 不可の場合、客先にいる間に使える学習手段はスマホと紙の教材にほぼ限定されると考えておいたほうがよいです
  • 支給PCの私的利用に関する社内規定はどうなっているか 監視の有無にかかわらず、規定上グレーな使い方は避けたほうが無難です
  • 通勤時間・休憩時間の実質的な長さ 制度上の時間と、実際に自分のために使える時間は別物だと考えて見積もっておきます
  • 残業量が月ごとにどれだけ変動するか 工期の吸収などで残業が跳ね上がる現場では、学習計画も「変動を前提にした計画」にしておく必要があります

資格そのものの価値や、現場での評価にどう反映されたかについては、基本情報の取得後を書いた記事で正直に書いています。また、現場の中で経験としてスキルが積めるかどうかという話と、会社側の教育制度がどこまで頼りになるかという話も、それぞれ別の記事で扱っています。

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今回はあくまで「現場の外で、自分の可処分時間をどう作るか」という一点に絞って書きました。

まとめ

月40〜60時間の残業と、私物PC持ち込み不可という現場で、私が実際に確保できた学習時間は、平日1日1〜2時間、週末は合計2時間以下、週にすると5〜12時間でした。勉強期間は約2か月です。

この記事の要点

  • 時間の使い方 通勤の片道45〜60分と昼休みを中心に、スマホと紙の参考書でインプットを進め、演習は私物PCが使える自宅の限られた時間に回しました
  • 私物PC持ち込み不可の影響 単に「学習ツールが減る」という話ではなく、客先にいる間の学習内容そのものをインプット中心に偏らせる要因になりました
  • 割り切り 週末はほとんど取れないと割り切り、期間を約2か月に区切って、週5〜12時間(合計でおよそ40〜100時間)で取得しました

もし今、同じように残業の多い現場で勉強時間が取れずに悩んでいるなら、まず自分の現場の制約(私物端末の可否、通勤・休憩の実質的な長さ、残業の変動幅)を具体的に洗い出してみてください。制約の形が分かれば、客先にいる間と自宅の時間に、それぞれ何を割り振るべきかも、自然と見えてくるはずです。