「研修制度あり」と書かれた求人票を見て、その一言をそのまま信じていいものか迷ったことはないでしょうか。私はSESエンジニアとして5年ほど、4社の客先常駐を渡り歩いてきましたが、会社によって研修の中身は驚くほど違いました。
今回は、実際に見てきた教育投資の中身を横に並べて比較し、厚生労働省の統計とも突き合わせながら、研修制度を当てにできるかどうかの見分け方をお伝えします。
この記事で分かること
- 4社を渡り歩いて見てきた、会社ごとの研修・教育投資の実際の違い
- 「研修制度あり」という求人票の記載と、配属後の実態がずれやすい理由
- 厚生労働省の統計から見た、企業規模別のOFF-JT実施率と業界の傾向
- 統計上の「実施あり」と現場の体感がずれる理由(事業所と本人の回答には26ポイントの差があります)
- 会社の研修が当てにできないときに、個人で使える公的な制度
- 面談・求人票の段階で研修制度を見極めるための具体的な確認ポイント
目次
- SESの研修制度は当てにできるか、まず結論から
- 4社で見た教育投資の実際
- 1社目、集合研修があった数少ない例
- 2社目、研修は名ばかりだった
- 3社目、「研修」という言葉自体が出てこなかった
- 4社目、手順書はあったが最後は人でカバーされていた
- 4つの現場を並べてみると
- 「効いた研修」と「効かなかった研修」を分けたもの
- 研修が手厚かった会社ほど、待遇も良かったのか
- 厚生労働省の統計で「教育制度は普通か」を確かめる
- 情報通信業は数字上「手厚い」業界のはずですが
- 「実施した」事業所と「受けた」本人には26ポイントの差がある
- 「育成に問題がある」と答えた事業所が8割超
- 会社の研修が当てにできないと分かったとき、自分にできること
- 面談・求人票で確認しておきたいこと
- まとめ
SESの研修制度は当てにできるか、まず結論から
結論「研修制度あり」の一文だけで会社を判断すると、高い確率で外します。当てにできるかを分けるのは、配属後に質問できる相手がいるかどうかです。
私が実際に経験した中でも、入社時に手厚い集合研修があった会社と、マニュアルを渡されただけで現場に放り込まれた会社の両方がありましたが、求人票の記載自体はどちらも似たようなものでした。
当てにできるかどうかを分けていたのは、集合研修という「入り口」の有無よりも、現場に配属された後に質問できる相手が確保されているかどうかでした。ここが一番効いた分岐点です。
ポイント: 「研修制度あり」という言葉が指す範囲は、会社によって驚くほど違います。集合研修が数週間ある会社もあれば、マニュアルPDFを一冊渡すだけで同じ言葉を使う会社もありました。同じ表現でも中身は前提にしないほうがいいです。
とくに未経験からSES業界に入ろうとしている人にとって、この一文は入社を決める大きな判断材料になりやすいと思います。以下、実際に渡り歩いた4社の教育投資を、時系列で正直に振り返ります。
良かった会社も、そうでなかった会社も、同じ温度感で書きます。
4社で見た教育投資の実際
4社それぞれの研修・教育の中身を、入社した順に並べます。同じ「研修制度あり」でも、中身の差はかなり大きいものでした。
1社目、集合研修があった数少ない例
1社目は今のところ、私のキャリアの中で唯一、まとまった集合研修があった会社でした。入社してすぐの2週間、Javaの基礎文法やSQL、Gitの使い方といった内容を、自社の先輩社員1人が講師になって教えてくれました。
同期は7人で、演習をこなしながら進むスタイルでした。
集合研修が終わった後も、すぐには現場に配属されず、3週間ほどの自習期間がありました。課題として簡単なタスク管理アプリを一人で作り、最後に講師役の先輩からレビューを受けます。
合計するとおよそ5週間、研修という名目の期間があったことになります。当時はこれが当たり前だと思っていました。SES企業に入ればこのくらいの準備期間があるものだ、と。この認識が崩れるのは、2社目に移ってからでした。
2社目、研修は名ばかりだった
2社目は三次請けの立場で、月40〜60時間の残業を吸収する現場に配属された会社です。入社時の説明では研修制度ありとなっていましたが、実際に渡されたのは社内マニュアルのPDFと、eラーニングのリンクだけでした。
2社目で「研修制度あり」と言われた中身。
現場自体が忙しかったこともあり、配属後も先輩が手取り足取り教えてくれる余裕はありませんでした。
分からないことがあれば、自分で調べるか、たまたま手が空いていそうな人を見つけて聞くしかありません。
「研修制度あり」という求人票の記載と、実際に受けた説明の量が、ここまで違うのかと感じたのはこの時が最初でした。
ただし、これは会社が嘘をついていたというより、研修制度という言葉の指す範囲が、会社によってまったく違うということなのだと、今は理解しています。
3社目、「研修」という言葉自体が出てこなかった
3社目は二次請けで、金融系のWebサイトの案件に、2年半ほど携わりました。現場に入った初日に、研修のような体系的な教育はなく、業務の資料を渡されて始まりました。
フレームワークの使い方や、社内の開発ルールについて、体系立てて説明される場は一度もありませんでした。分からないことがあれば「隣の人に聞いてください」という案内のみ。
実際には週1回、30分ほど質問に付き合ってくれる先輩がいたので完全な放置ではなかったのですが、それを研修と呼べるかというと、正直違うと思います。
2年半の在籍中、体系的なOJTと呼べるものには一度も出会いませんでした。この現場では、そもそも「研修」という言葉自体が、日常会話の中に登場しませんでした。
4社目、手順書はあったが最後は人でカバーされていた
4社目は二次請けで、独自の社内フレームワークを使う現場です。フレームワークの使い方をまとめた手順書自体は、ちゃんと存在していました。教育の仕組みがゼロだったわけではありません。
ただし、その手順書の最終更新日を確認すると、およそ3年前のままでした。実際に使われているバージョンとは、設定ファイルの書式などいくつかの点で食い違いがあり、手順書どおりに進めるとエラーになる箇所もありました。参画してしばらくは、手順書よりも周りのメンバーが書いた既存コードを読んで真似するほうが早い、という状態が続きました。
ドキュメントとしての研修材料は存在するのに、メンテナンスされていないので実質使えない。これはこれで、研修が最初からない会社とは違う種類のもどかしさがありました。「ある」という事実と「使える」という事実は、別物だということを学びました。
手順書の頼りなさを補っていたのは、結局のところ人でした。
- 参画後の2週間、直属の先輩社員が明示的に「メンター」としてついてくれた
- 最初の2週間は毎日30分の1on1があった
- その後は頻度が週1回に落ち着いている
これが会社の規定として明文化された制度なのかどうかは、正直確認していません。ただ、制度として整っていなくても、実際に機能していれば十分だという実感があります。看板としての研修より、配属後に頼れる相手がいるかどうかのほうが、私にとってはよほど大事な指標でした。
4つの現場を並べてみると
改めて並べてみると、研修の形はここまで違いました。
| 現場 | 研修の形式 | 配属後に頼れる相手 |
|---|---|---|
| 1社目 | 集合研修2週間+自習3週間 | 講師役の先輩が常時いた |
| 2社目 | マニュアルPDF+eラーニング | いない(手が空いた人次第) |
| 3社目 | 業務の資料を渡されるのみ | 週1回・30分だけ |
| 4社目(今の現場) | 手順書はあるが更新が約3年前で止まっている。メンター制(最初の2週間は毎日30分、以降週1)が実質カバー | 既存コードを読んで自習しつつ、メンターが明示的にいる |
こうして並べると、集合研修という形があったのは4つのうち1つだけで、残り3つの明暗を分けていたのは「配属後にどれだけ頼れる相手がいたか」だったことがはっきり見えてきます。
「効いた研修」と「効かなかった研修」を分けたもの
結論分けていたのは、配属後に質問したとき、その場で答えられる人が現場にいるかどうかです。集合研修の日数でも、マニュアルの厚さでもありませんでした。
このことを痛感したのは3社目でのささいな失敗です。
私の場合
参画から数日目、コミット前にレビュー依頼を出す運用だったのですが、そのルール自体を誰からも教わっておらず、確認せずに共有ブランチへそのままマージしてしまったことがあります。
実害はありませんでしたが、リーダーから「そこは資料じゃなくて口頭で聞いてほしかった」と言われました。
資料に書かれていないルールがある現場では、そもそも「何を聞けばいいか」自体が分からないまま失敗する、というのがこのとき身にしみて分かったことです。
1社目の集合研修は手厚かったものの、あれはあくまで基礎知識のインプットです。実際の現場でつまずいたときに助けてくれる相手がいなければ、結局は同じように放り出されていたと思います。
逆に、4社目のようにメンター制度が明文化されていなくても、質問できる相手さえいれば、体感としての「研修」は十分に機能します。これはSESでスキルが身につかないと感じた理由にも近い話です。判断の経験が積めるかどうかは、担当範囲や商流の位置で決まる部分が大きいのですが、教育投資についても同じように、看板としての制度名より、現場の運用実態のほうがずっと効いてきます。
スキルが身につかないと感じた理由については、別の記事に書きました。
研修制度の有無を求人票の一文だけで判断せず、配属後の運用まで含めて評価する必要がある、というのがここまでの実感です。
なお、基本情報技術者は2社目のころに独学で取得しましたが、会社の補助やスクールは使っていません。取得の経緯と、会社の資格補助については、それぞれ別の記事に書きました。
会社側の教育投資が薄いと感じた時期と、資格を独学で取ろうと決めた時期は、振り返るとほぼ重なっています。会社の外で埋めるしかない、という判断は、研修の薄さへの反応だったのかもしれません。
研修が手厚かった会社ほど、待遇も良かったのか
ここで気になるのは、研修が手厚かった会社ほど、その後の単価や評価も良かったのかということだと思います。正直に書くと、私の実感では相関はありませんでした。
研修が最も手厚かった1社目の単価がとくに高かったわけではなく、逆に研修がほぼゼロだった2社目・3社目の単価が低かったわけでもありません。
単価・待遇の推移は現場ごとに上がったり下がったりで、研修の充実度とは別の要因(商流の位置や案件の予算)で決まっていた印象です。
評価についても、半年に1回の面談で5段階の真ん中のまま動いていない状態は、研修が手厚かった時期もそうでなかった時期も変わりません。研修は「学びやすさ」には直結しますが、その後の待遇を約束するものではない、というのが正直なところです。
厚生労働省の統計で「教育制度は普通か」を確かめる
自分の会社の教育投資が、業界的に普通なのか薄いのか。体感だけでは判断がつきにくいので、公的な統計と照らし合わせてみます。
厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」によれば、正社員に対してOFF-JT(通常の業務を離れて行う研修や集合教育)を実施した事業所の割合は、企業規模で次のように差があります(出典: 令和7年度「能力開発基本調査」の結果概要|厚生労働省)。
| 企業規模 | OFF-JT実施率(正社員) | OFF-JT実施率(正社員以外) |
|---|---|---|
| 30〜49人 | 53.0% | 21.0% |
| 50〜99人 | 65.5% | 26.8% |
| 100〜299人 | 79.6% | 32.5% |
| 300〜999人 | 85.2% | 36.1% |
| 1,000人以上 | 85.4% | 42.7% |
規模が大きくなるほど実施率が上がる傾向は、今回の調査でも変わりません。SESで働く人の雇用形態は基本的に正社員なので、比較すべきは左側の列です。
気になるのは前回(令和6年度)との比較です。
- 30〜49人:57.8%から53.0%に下がった
- 300〜999人:79.0%から85.2%まで上がった
- 最小と最大の差:26.5ポイントから32.4ポイントに広がった
小規模なSES企業ほど研修が薄くなりやすいという体感は、この1年の変化とも重なる方向でした。自社の従業員数の見当がつくなら、この表に当てはめて「業界的に薄いのか普通なのか」の目安にできます。
私自身、自社の正確な従業員数を照会したことはないのですが、採用ページで見た印象では数百人規模だろうと見当をつけています。だとすると、正社員のOFF-JT実施率はおおよそ80〜85%あたりが目安になる計算です。実際に受けた研修の量(1社目は手厚く、2〜4社目は薄い)を思い返すと、この幅の中に収まっていること自体は、それほど不思議ではないと感じます。
逆にいえば、30〜49人規模の小さなSES企業で「研修制度あり」を掲げているのに実態が薄い場合でも、統計上は半数近くの同規模企業が似たような状況にある可能性がある、ということでもあります。
情報通信業は数字上「手厚い」業界のはずですが
同じ調査で業種別のOFF-JT実施率を見ると、情報通信業は正社員87.6%、正社員以外27.1%です。前回の84.8%/25.1%からさらに上がり、15業種中4位という高い部類に入ります。
正直、この順位を見たときは意外でした。自分の体感では、少なくとも2〜4社目にかけて、体系的な研修と呼べるものにほとんど出会っていません。
ただ、この統計が測っているのは「1年間のうちに、何らかのOFF-JTを一度でも実施したか」という事業所側の有無です。それが従業員一人ひとりに行き渡ったかどうかは、また別の話になります。
この「別の話」を裏づける数字が、同じ調査の中にありました。
「実施した」事業所と「受けた」本人には26ポイントの差がある
この調査には、事業所側への調査とは別に、労働者本人に「実際に受けたか」を聞く個人調査もあります。
事業所側で「正社員にOFF-JTを実施した」と答えた割合は70.9%でした。一方、個人側で「令和6年度にOFF-JTを受けた」と答えた正社員は44.5%にとどまります。
正社員のOFF-JT。事業所への調査と、労働者本人への調査の比較。
会社が「実施した」と申告している事業所の中にも、実際には研修を受けていない正社員が相当数含まれている、ということになります。
企業規模別に並べると、この差はさらにはっきりします。
| 企業規模 | 事業所が「実施した」 | 本人が「受講した」 |
|---|---|---|
| 30〜49人 | 53.0% | 31.8% |
| 50〜99人 | 65.5% | 34.7% |
| 100〜299人 | 79.6% | 42.0% |
| 300〜999人 | 85.2% | 49.6% |
| 1,000人以上 | 85.4% | 50.6% |
規模が大きいほど実施率は上がりますが、受講率は最大でも50.6%です。1,000人以上の大企業でも、正社員の約半数はその年OFF-JTを受けていない計算になります。
私が2社目で渡された「マニュアルPDFとeラーニングのリンク」も、事業所側の集計ではおそらく「実施あり」に含まれています。統計上の「実施あり」は、個人が受けた研修の量や質までは保証しないというのは、以前は推測でしたが、この数字を見て確信に変わりました。
受講した人に限れば、令和6年度の年間平均受講時間は正社員で22.2時間でした。日数にすると3日弱です。3〜4社目で出会った研修の薄さは、統計から見ても決して例外的な体験ではなかったのだと、今は捉えています。
ちなみに年代別の受講率では、30代は38.5%でした。自分が「受けていない側」の年代に近いことも、この体感と無関係ではないのかもしれません。
「育成に問題がある」と答えた事業所が8割超
同じ調査では、能力開発や人材育成に関して何らかの問題があると答えた事業所が80.1%にのぼっています。
内訳の上位3つは次のとおりです。
育成の問題として挙がった上位3つ
- 指導する人材が不足している(59.5%)トップです。
- 育成しても辞めてしまう(51.6%)前回よりやや下がっています。
- 育成を行う時間がない(45.5%)こちらも前回よりやや下がっています。
指導人材の不足は横ばいのままです。現場で教える側の余裕のなさは、簡単には改善しない構造なのだと感じます。この「育成しても辞めてしまう」という回答は、本来は離職を指しているはずですが、SESの文脈に置き換えると近い構造の話がもうひとつあると感じています。
常駐先が変わるたびに担当領域も一からリセットされるので、自社が体系的に教育投資をしても、それが特定の現場でしか活きないまま終わってしまう、という構造です。これはあくまで私の類推であって、統計そのものがそう述べているわけではありませんが、契約終了のたびに現場が変わってきた経験を踏まえると、教育投資を回収しにくい理由の一端としては筋が通っているように思います。
指導する人材の不足、育成の時間のなさという2つの理由も、下流の立場で入る二次請け・三次請けの現場ではなおさら深刻になりやすいはずです。3社目・4社目で研修らしい研修に出会わなかったのは、会社の怠慢というより、こうした構造的な要因が積み重なった結果だったのだろうと、今は捉えています。
会社の研修が当てにできないと分かったとき、自分にできること
会社の研修を当てにできないと分かっても、打つ手がまったくないわけではありません。雇用保険の被保険者であれば、会社の研修制度とは無関係に、個人でハローワークへ申請できる制度があります。
厚生労働省の教育訓練給付金という制度です(出典: 教育訓練給付金|厚生労働省)。厚生労働大臣が指定する講座を修了すると、経費の一部が支給されます。
| 種類 | 支給率(上限) | 条件を満たした場合 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 経費の20%(上限10万円)。訓練修了後にまとめて支給 | — |
| 特定一般教育訓練 | 40%(上限20万円) | 資格取得等をして修了後1年以内に雇用保険の被保険者として働いていれば、50%(上限25万円) |
| 専門実践教育訓練 | 50%(年間上限40万円)。受講中6か月ごとに支給 | 資格取得等をして修了後1年以内に被保険者として雇用されれば70%(年間上限56万円)。さらに修了後の賃金が受講開始前より5%以上上がっていれば80%(年間上限64万円) |
いずれも令和6年10月以降開講の講座が対象です。会社の研修が薄いと感じたときに、真っ先に頭に浮かぶのは「自腹で勉強するしかない」という発想でした。ですが、雇用保険に加入していれば会社を通さず使える制度があることは、知っておいて損はありません。
私の場合
正直に書くと、私は基本情報技術者を独学で取得したときも、この制度を意識していませんでした。会社の補助を使わなかったことは前述のとおりですが、公的な給付金という選択肢自体、当時は視野に入っていなかったというのが実情です。
会社の研修の代わりにスクールを検討する場合は、候補の講座が給付金の対象に入っているかを先に確かめておくと、自己負担の見積もりが変わります。プログラミングスクールには、学習と転職支援がセットになったコース(SHIFT TERAS CAMPUS
など)もあれば、教室でもオンラインでも講師に個別で教わる形式で、教育訓練給付制度の対象講座を持つところ(Winスクール
など)もあります。会社の研修と比べる材料として、カリキュラムと費用だけでも見ておく価値はあると思います。
29歳以下で、関東・関西・東海での就職を考えているなら、IT学習の動画サポートと就職支援がセットになったサービス(ウズウズIT
など)もあります。どちらも無料で使えるとされているので、スクールの費用と見比べる材料になります。
面談の場で確認できることもあります。「人材開発支援助成金を使っていますか」と聞いてみるのも一つの手です。これは会社側が従業員の育成にかけた費用の一部を国から受け取れる制度です。
この質問への答え方一つで、会社が育成にどれだけ投資する姿勢があるかが、ある程度透けて見えると思います。
面談・求人票で確認しておきたいこと
ここまでの経験を踏まえると、「研修制度あり」という一文だけで会社を評価するのは危険だという結論になります。実際に確認しておいたほうがいい項目を整理します。
研修制度を見極めるために確認したいこと
- 入社時の研修は何日間で、誰が教えてくれるのか(自社の社員か、外部委託か)
- 研修と呼ばれているものが集合形式なのか、マニュアルとeラーニングを渡すだけなのか
- 配属後に質問できる相手が現場に確保されているか(制度化されていなくても実態があるかを聞く)
- 研修用のドキュメントがあるなら、最終更新日はいつか
- 教育投資の内容を、面接ではなく配属された先輩・現役社員から直接聞けるか
- 余裕があれば「人材開発支援助成金を使っていますか」と聞いてみる(受給経験がある企業は少数派です)
面談や説明会で「研修制度は充実していますか」と聞いても、営業や人事からは前向きな答えしか返ってこないことがほとんどです。
実際、4社目に入る前の面談でも配属後のフォロー体制を聞いてみましたが、返ってきたのは一般的な答えで、メンター制度があるとは一言も説明されませんでした。
配属後のフォロー体制はありますか?
基本は現場のリーダーに聞いてください。
入ってみて初めて、直属の先輩が実質的にメンターとして機能していると分かった形です。
面談で案件そのものを選べるかどうかは、構造的に限られています。これは別の記事に書きました。
研修制度についても、面談の場だけで実態を見抜くのは簡単ではありません。聞き方を「研修制度はありますか」ではなく「入社(配属)後の最初の1か月、具体的に誰が何を教えてくれますか」という粒度に変えると、多少は解像度の高い答えが返ってきやすくなります。可能であれば、実際に配属されている社員の声を、口コミサイトなど別の経路からも拾っておくとなお安心です。
ちなみに、統計と照らし合わせるための従業員数は、求人票の会社概要欄や採用ページに大抵記載があります。面談で直接「御社は何人規模ですか」と聞いても、答えにくそうにする担当者はまずいません。この数字と、前段で挙げたOFF-JT実施率の表を組み合わせるだけでも、入社前に期待値をある程度そろえておくことができます。
私自身、2社目に入る前にこの確認をしていれば、「研修制度あり」という言葉をもう少し疑って聞けたはずです。当時は1社目の経験しかなかったので、その言葉の指す範囲が会社によってこれほど違うとは想像していませんでした。
まとめ
SESの研修制度が当てにできるかどうかは、会社によって本当にばらつきがあります。私が渡り歩いた4社では、集合研修に5週間かけてくれた会社もあれば、マニュアルとリンクだけで現場に放り込まれた会社もありました。厚生労働省の統計を見ても、企業規模による差は年々広がっており、情報通信業全体としては実施率が高い一方、事業所の「実施した」と本人の「受講した」の間には26ポイントもの差がありました。
集合研修の有無より、配属された後に質問できる相手が現場にいるかどうかのほうが、実際の学びやすさをずっと大きく左右します。
「研修制度あり」を見たときに具体的に確認する3点
- 日数(入社時の研修は何日間か)
- 形式(集合形式か、マニュアルとeラーニングを渡すだけか)
- 配属後の質問先(質問できる相手が現場にいるか)
研修が薄い会社に当たったとしても、それは会社の怠慢だけが原因とは限りません。多重下請けの下流に入るほど、自社が育成に割ける時間もリソースも構造的に限られます。
会社の外に目を向ければ、教育訓練給付金のように個人で使える制度もあります。研修の手厚さを会社選びの絶対条件にするより、配属後に自分から質問できる関係を作り、必要なら公的な制度も併用するくらいの構えでいるほうが、現実的な備えになると思います。




