「今月の帰社日、出られますか」。上長からのメールには毎回この一文と、出欠を書く欄がありました。

任意参加と明記されているのに、周りを見渡すと欠席する人はほとんどいません。SESエンジニアとして5年ほど、複数の客先常駐を経験してきましたが、この空気が一番濃かったのが三次請けの現場にいた時期でした。

今回は、月1回の帰社日で実際に何が起きていたかと、参加は本当に義務なのかを、厚生労働省の労働時間の考え方に照らしながらお伝えします。

この記事で分かること

  • 三次請けの現場で経験した、月1回・定時後の帰社日で実際に起きていたこと
  • 「任意参加」なのに出欠報告を求められる、その温度感の正体
  • 帰社日の参加が労働時間にあたるかを、自分で確認するための判断材料
  • 残業代・交通費は実際どうなっていたか(正直な数字で書きます)
  • 帰社日を「めんどくさい」で終わらせず、実利として使う方法
  • 欠席したいときの伝え方と、困ったときの相談先
目次
  1. SESの帰社日とは何をする場で、参加は義務なのか
  2. 2社目・三次請けの現場で経験した、月1回の帰社日
  3. 実際にやっていたのは近況共有・会社からの連絡・懇親
  4. 「任意参加」なのに、出欠報告を求められていた
  5. 帰社日の参加は労働時間にあたるのか、確認できる基準
  6. 残業で30分遅刻して、初めて他の現場の状況を知った
  7. 残業代は出ず、交通費の差額は340円ほどでした
  8. 今の現場では、帰社日の形も変わりました
  9. 帰社日は無駄なのか、実利で考える
  10. 帰社日に「行くべきか」で悩んだときの判断軸
  11. 帰社日を欠席したいときの伝え方と、困ったときの相談先
  12. 困ったときの相談先
  13. まとめ

SESの帰社日とは何をする場で、参加は義務なのか

結論明文化された義務ではありませんが、私の現場では事実上ほぼ全員が参加していました。

帰社日というのは、客先に常駐しているエンジニアが、月1回程度の頻度で自社のオフィスに集まる日のことです。私が経験した現場では、近況共有と会社からの連絡、それに軽い懇親をセットにした場として運用されていました。

参加義務があるかどうかについて、先に自分の実感を書いておきます。明文化された義務ではなく、事実上ほぼ全員が参加していたというのが実態でした。

任意参加と説明されながら、出欠を報告させられ、欠席すれば理由を聞かれる。この矛盾した状態そのものが、帰社日という制度の分かりにくさを表しています。

この「任意なのに実質義務っぽい」という感覚を持ったことがある方は、私だけではないはずです。ここから先は、私が三次請けの現場で経験した具体的な中身を通じて、この感覚の正体を掘り下げていきます。

2社目・三次請けの現場で経験した、月1回の帰社日

これは2社目にいたころの話です。所属していた会社は元請けから見て三次請けの立場で、この現場では月40〜60時間の残業を抱えながら工期が現場の外側で確定していく案件を担当していました。

帰社日は月1回、だいたい月末に近い平日に設定されていました。時間帯は客先での勤務を終えたあと、定時後の19時から21時ごろまで。

場所は自社本社の会議室で、常駐先から電車で30分ほどかかります。声がかかるのは同じ部門の常駐メンバーだけでしたが、それでも毎回15人前後が集まる規模でした。

実際にやっていたのは近況共有・会社からの連絡・懇親

内容は大きく3つに分かれていました。ひとつは一人ずつ現場の近況を話す時間で、一人あたり5分程度です。困りごとがあれば話してよいことになっていましたが、実際に踏み込んだ相談をする人は多くありませんでした。

もうひとつは会社側からの共有で、受注状況や新しい案件の紹介、退職者が出た話などが中心でした。残るひとつは軽食を挟んだ懇親の時間で、30分ほど、お菓子や差し入れの菓子パンをつまみながら雑談する流れです。

営業や人事の担当者が個別に声をかけてくることもありました。単価交渉のような硬い話ではなく、次の案件の希望を軽く聞かれる程度です。

評価面談が担当営業と部門長との1対2で30分きっちり行われるフォーマルな場だったのに対し、帰社日はもっと集団的でカジュアルな場という位置づけでした。この違いを理解しておくと、両者を混同せずに済みます。

「任意参加」なのに、出欠報告を求められていた

この帰社日を「義務かどうか」という視点で振り返ると、一番印象に残っているのはメールの文面です。上長から月初に届く案内には「任意参加です」と明記されていました。

ところが同じメールに、出欠を報告してくださいという一文と、欠席する場合は理由を書く欄が用意されていたのです。

ある月、体調が悪くて欠席を申し出たことがあります。返ってきたのは「今回はいいですが」という一言でした。強く叱られたわけではありません。ただ、この一言のニュアンスには、次回は出席するのが前提だという含みがはっきりありました。

制度としては任意、運用としては半ば必須。この帰社日で一番強く感じたのはこの落差でした。

以来しばらくは、多少無理をしてでも予定を空けて出席するようにしていました。誰かに強要されたと言えるほど明確な出来事ではありませんが、事実上そうなっていた、というのが正直なところです。

帰社日の参加は労働時間にあたるのか、確認できる基準

結論あたるかどうかは、この記事では断定できません。出欠報告・不利益・開催時間・内容の4点で、自分の帰社日の義務の強さを確かめられます。

ここで気になるのが、この時間にお金が出るのかという点だと思います。私の会社の説明は「任意参加のため時間外手当の対象外」というものでした。実際、帰社日ぶんの残業代や手当が支給されたことは在籍中一度もありません。

この扱いが妥当なのかどうか、断定的な結論を出せる立場に私はいません。ただ、判断材料になる一般原則は確認できています。厚生労働省のガイドラインでは、労働時間について次のように定義されています。

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる(出典: 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|岡山労働局)

さらに同じガイドラインでは、指揮命令下にあるかどうかは「労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断される」ともされています。

ここでいう「義務づけ」や「余儀なくされていた」という言葉が、まさに私が感じていた「任意のはずなのに事実上必須」という状態そのものに近いと感じます。

もう一つ、考え方の土台として押さえておきたいのが最高裁の判決です。三菱重工業長崎造船所事件(平成12年3月9日)で、最高裁は、労働基準法上の労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間とし、あたるかどうかは客観的に定まるもので、就業規則などの記載では決まらないと示しました(出典: 裁判所ウェブサイト 最高裁判決 平成12年3月9日)。

最判とガイドラインから言えること

  • 「任意」という呼び名は決め手にならない 実態として義務づけられていたか、余儀なくされていたかで見られます
  • 研修色が強いほど論点が出やすい ガイドラインの例示に「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講」が挙がっています
  • この判決は帰社日の事案ではない 争われたのは作業服への着替えなどの準備行為で、帰社日そのものの公的見解や裁判例は、私が調べた範囲では確認できていません

自分の帰社日を確認するときのチェックポイント

  • 出欠の報告を求められているか、欠席時に理由を書かせているか
  • 不参加によって次のアサインや評価に不利益が生じそうな空気があるか
  • 開催時間が定時内か定時後か(定時後なら残業扱いになるはずの時間かどうか)
  • 内容が業務指示・研修に近いのか、近況共有・懇親に近いのか

断定できない点

このガイドラインは帰社日という行事に特化した通達ではなく、労働時間把握の一般原則を示したものです。だから「帰社日は必ず労働時間になる」とも「ならない」とも、この記事では断定しません。

上のチェックポイントに自分の帰社日を当てはめてみると、任意という言葉の実態がどのくらい強いものかが見えてきます。私の場合、出欠報告があり、定時後開催で、内容は近況共有・懇親が中心。義務づけの強さで言えば中間的という位置づけだったと今は捉えています。

仮にこの時間が労働時間にあたるとしても、もう一つ別の壁がありました。当時の自社の勤怠は自社の勤怠システムへの自己申告制で、入力項目そのものに帰社日のような社内行事の時間を書く欄が用意されていませんでした。制度上あたるかどうか以前に、申告する仕組み自体がなかった、というのが実態です。

残業で30分遅刻して、初めて他の現場の状況を知った

帰社日を単なる拘束時間として片付ける前に、実際に起きたもう一つの出来事を書いておきます。ある月、客先での作業がその日に限って長引き、定時に上がれませんでした。急いで移動しましたが、帰社日には30分ほど遅刻して駆け込む形になりました。

特に咎められることはありませんでしたが、隣に座った同期にぼそっと「今月きつかったんだ」と話しかけられたのを覚えています。その短いやり取りの中で、相手の現場では質問票の返答が翌日には来ることや、残業がほとんどないことを知りました。

私の現場同期の現場
質問票の回答3〜4営業日かかる翌日には来る
残業月40〜60時間ほとんどない

自分がいた現場は質問票の回答に3〜4営業日かかるうえに月40〜60時間の残業がある状態でしたから、それがどのくらい忙しい部類なのかを、このとき初めて相対的に把握できたわけです。

帰社日以外の場で、他の常駐先のメンバーと現場の状況を交換する機会はほとんどありませんでした。客先の定例には元請けや客先プロパーなど複数の会社が同席していましたが、そこで話せるのは業務の話だけです。自社の人間だけが集まり、しかも仕事の評価がかかっていない場だからこそ話せる愚痴や情報がある。これが、私が帰社日で一番価値を感じた瞬間でした。

残業代は出ず、交通費の差額は340円ほどでした

数字の面も正直に書いておきます。残業代については先ほど触れたとおり、任意参加を理由に一度も支給されませんでした。

交通費については、客先から自宅への通常の帰宅経路に対して、本社を経由する分だけ定期区間の外側が発生します。ICカードの履歴を確認すると、片道170円ほど、往復で340円程度の差額でした。

残業代の支給0回任意参加を理由に在籍中ずっと
交通費の差額340円片道170円ほど×往復
実際に申請した回数数回在籍中に

残業代は出ず、交通費の差額は申請の手間に見合いませんでした。

会社の経費精算システムでこの差額を申請できる仕組みはあったのですが、利用明細をアップロードする一手間がかかり、340円のために毎回申請するのは正直割に合わないと感じていました。結果として、在籍中に実際に申請したのは数回だけです。

この金額を大きいと見るか小さいと見るかは人によると思います。ただ、手間に見合わない金額のために制度が使われないという構図は、有給や残業申請にも通じるところがあると感じています。会社が制度を用意していることと、それが実際に機能することの間には、いつも小さな摩擦があります。

今の現場では、帰社日の形も変わりました

参考までに、今の現場(4社目)での帰社日にあたる集まりにも触れておきます。開催はオンラインに変わり、頻度も2か月に1回程度に減りました。

2社目(三次請け)今の現場
頻度月1回2か月に1回程度
形式対面(自社本社の会議室)オンライン
時間帯定時後19時〜21時ごろ概ね定時内に収まる
移動客先から電車で30分なし
雑談の密度懇親の時間があり、隣席との会話から情報が拾えた画面越しの進行が中心で、雑談が生まれにくい

移動の負担も交通費の持ち出しもなくなった一方で、隣に座った同期と小声で本音を交換するような場面は生まれにくくなりました。

オンライン化は合理的な変化だと思う一方、帰社日が持っていた「その場に居合わせるから話せること」という側面は、形式が変わると同時に薄れるものなのだと実感しています。

帰社日は無駄なのか、実利で考える

結論無駄と言い切れませんでした。私にとっての実利は3つあり、いちばん大きかったのは他の現場の状況を知れたことです。

ネットで帰社日について検索すると、めんどくさい、無駄という声と、帰属意識のために必要だという声の両方が出てきます。私自身、正直めんどくさいと感じたことは何度もあります。

定時後に1時間半から2時間拘束され、残業代も出ず、交通費もほぼ持ち出し。この条件だけを見れば、無駄だと感じるのも当然です。

ただ、先ほどの遅刻したときのエピソードのように、実利がゼロだったわけでもありません。私が帰社日から得ていたものを整理すると、次の3つに集約されます。

帰社日から得ていた3つの実利

  1. 他の現場の状況を知る機会質問票の返答速度や残業の量など、自分の現場が業界的にどのくらいの水準なのかを相対化できる、数少ない場でした
  2. 営業・人事との接点個別に声をかけられる時間があり、次の案件の希望を伝える機会になりました。単価交渉の場ではありませんが、面談で確認する項目を伝えておく下地にはなります
  3. 自社に所属している実感客先常駐だと、自社の人間と顔を合わせる機会自体が少なくなります。帰社日はその数少ない接点でした

この3つのうち、私にとって一番役に立ったのは1つ目です。自分の現場がどのくらい忙しいのか、恵まれているのかを比較する基準が、帰社日で聞く雑談以外にほとんどありませんでした。

評価面談では自社の営業と部門長しか同席せず、彼らも自分の現場を見ていないので、この手の相対化はできません。

帰社日に「行くべきか」で悩んだときの判断軸

帰社日そのものをなくすかどうかは、個人が決められることではありません。ただ、参加するかどうかで毎回迷うくらいなら、判断の軸を先に決めておくほうが楽になります。私が今の自分に言うとしたら、次のように整理します。

  • 1. 出欠報告・欠席理由の記入があるか あるなら事実上の参加圧力があると考えて、揉めたくなければ出席する
  • 2. 内容が近況共有・懇親中心か 中心なら、残業代を求めて交渉するより、実利(他現場の情報・営業との接点)を取りに行く場と割り切る
  • 3. 交通費の差額はどの程度か その程度なら、申請の手間と天秤にかけて自分で判断する。ただし金額が大きい場合は面倒でも申請する
  • 4. 業務指示や研修に近い内容か 近いなら、先ほどのチェックポイントに照らして、労働時間に当たる可能性がある働き方をしていないか一度確認する

正直に言うと、当時の私は1と2の判断しかしていませんでした。3の申請の手間を惜しんで数百円を毎回諦め、4のような視点を持たないまま、ただ「出るもの」として通っていました。今振り返れば、少なくとも4の視点だけは持っておいてよかったと思います。

帰社日を欠席したいときの伝え方と、困ったときの相談先

結論欠席は、早めに事実だけを短く伝えるのが一番もめにくいです。

体調不良で一度だけ欠席を申し出た私の経験では、「今回はいいですが」の一言が残ったのは、欠席の連絡自体より理由の書き方と連絡の遅さに原因があったと感じています。当日の朝に「体調が悪いので」とだけ送ったため、上長からは次回の見通しが分からない連絡に見えたのだと思います。

今なら、前日までか、遅くとも当日の早い時間に連絡し、理由は事実だけを一文で書きます。そのうえで「次回は出席します」と一言添えるか、欠席した回の資料や共有事項を後で確認したいと伝えます。客先の作業が理由なら、「現場の作業の都合で定時に上がれない見込みです」と事前に知らせておけば、参加できない事情として受け取ってもらいやすいはずです。

ただ、私の場合は欠席が一度きりだったので、これで毎回通るとまでは言えません。欠席を続けて不利益を感じ始めたら、社内で抱え込まず外部に相談する選択肢があります。

困ったときの相談先

帰社日の時間に手当が出ない、欠席すると不利になる空気がある、といった悩みは、まず自分の就業規則や賃金規程で、帰社日や交通費の扱いがどう書かれているかを確認するところからです。通勤手当や業務命令による移動費の法的な扱いは、私は確認できていないので、ここでは断定しません。

規程を見てもはっきりしないときは、公的な窓口に相談できます。

  • 労働基準監督署・総合労働相談コーナー 労働時間や賃金の扱いについて相談できます
  • 労働条件相談ほっとライン 平日の夜間と土日祝に、無料で電話相談を受け付けています

窓口の一覧は出典: 厚生労働省 労働条件相談の窓口案内で確認できます。相談するときは、案内メールの文面、開催時間、出欠報告の有無を手元にそろえておくと話が早く進みます。

まとめ

三次請けの現場で経験した帰社日は、月1回・定時後の19時から21時ごろ、15人前後が集まって近況共有と懇親をする場でした。任意参加と説明されながら出欠報告を求められ、欠席を申し出た際に「今回はいいですが」と言われたことで、事実上ほぼ参加が前提になっていたというのが実感です。

この記事の要点

  • 残業代は一度も出ず、交通費の差額も340円ほどで申請の手間に見合わなかった
  • それでも、他の現場の状況を知る、営業や人事と接点を持つ、自社に所属している実感を得るという3つの実利はあった
  • 労働時間にあたるかは、出欠報告の有無・不利益の有無・開催時間・内容の性質の4点で確かめる
  • 「任意」と呼ばれていても、労働時間かどうかは実態で判断される。迷ったら労基署などの公的窓口に相談できる

帰社日への参加が労働時間にあたるかどうかを、この記事で断定することはできません。ただ、4つのチェックポイントに自分の帰社日を当てはめてみれば、自分の状況がどのくらい「義務に近いか」は見えてきます。

めんどくさいと感じたときほど、その帰社日から何を持ち帰れるかを一度考えてみる価値はあると思います。