「初日はスーツで行くべきか、私服でいいのか」。参画が決まった夜に、スマホで何度も検索した経験がある人は多いと思います。

私はSESエンジニアとして5年ほど、客先常駐で4つの現場を経験してきましたが、服装の基準は4現場とも違っていて、しかも誰かが明文化してくれたことは一度もありませんでした。

今回は、現場ごとに服装の基準を決めていたのが誰だったのか、どうやって分かったのかを実体験で並べたうえで、確認の仕方と場面ごとの使い分け、服装代の考え方までお伝えします。

この記事で分かること

  • 服装の基準は会社や業界ではなく、現場ごとに(しかも別々の人によって)決まっていること
  • 私が経験した4現場それぞれの基準と、基準が分かった経緯
  • 営業・現場リーダー・先輩の誰にどの順で確認すればよいか、そのときの文面例
  • 面談・入場初日・帰社日・夏場の服装の使い分け
  • 服装代は誰が持つのか(私服は自己負担が基本という現実と、制度の見方)
目次
  1. SES客先常駐の服装は、会社でも業界でもなく現場ごとに決まる
  2. 私が見た4現場の服装基準と、基準を決めていた人
  3. 1社目:研修では「スーツ」、配属先はポロシャツ
  4. 2社目:営業のメール一行で知らされた
  5. 3社目:案内なし。周囲に合わせるしかなかった
  6. 4社目:初めて、入場前に客先へ確認が入った
  7. 服装は誰にどう確認するか
  8. 確認先の優先順位
  9. 聞き方の文面例
  10. 面談・入場初日・帰社日・夏場の服装の使い分け
  11. 面談の服装は、案内がなければスーツにしておく
  12. 入場初日は「ジャケットを脱げる格好」で行く
  13. 帰社日は、客先の服装のまま行く
  14. 夏場の服装は、現場の実態に合わせる
  15. オフィスカジュアルの基準は、ジーンズの可否と「ジャケット1枚」
  16. 服装代は誰が持つのか
  17. 制服や指定がある場合は、就業規則を見る
  18. 特定支出控除は、使えるとは限らない
  19. まとめ

SES客先常駐の服装は、会社でも業界でもなく現場ごとに決まる

結論服装の基準は、自社でも「SESだから」という業界の相場でもなく、常駐先のフロアで決まります。同じ会社に所属していても、現場が変われば基準も変わるからです。

「SES 服装」で検索すると、「SESはスーツが多い」「私服OKの現場も増えている」という両方の記事が出てきます。どちらも嘘ではありませんが、どちらも自分の次の現場には当てはまらない、というのが私の実感です。

理由は単純で、SESでは自分の服装を見る人が、自社の人間ではなく客先や元請けの人たちだからです。基準を握っているのは、そのフロアにいるリーダーや、来客対応をする客先の担当者になります。

私の場合、4つの現場で基準を決めていた人は、すべて別の立場の人でした。最初に一覧にしておきます。

現場事前の服装案内実際の基準基準を決めていた人分かった方法
1社目(約4か月・Javaの業務システム)自社の研修で「客先ではスーツ」ポロシャツ・チノパンが中心客先のチームリーダー初日にリーダーから言われた
2社目(三次請け・約1年半)営業のメールで「私服可、ジーンズは避けて」シャツ・チノパン。報告会の日だけジャケット元請けのリーダー営業の事前案内と先輩の実際の格好
3社目(二次請け・約2年半)なしオフィスカジュアル誰も決めていない(周囲の実態)初日に周囲を見て
4社目(二次請け・現在在籍中・約9か月)営業経由で客先に確認私服で清潔感があれば可客先のプロパー社員営業を通じて事前に確認

一覧にして気づいたのは、「案内がある現場」でも案内の中身はバラバラで、「案内がない現場」では周囲を見るしか手がなかった、という点です。以降、現場ごとに順に書いていきます。

私が見た4現場の服装基準と、基準を決めていた人

ここでは4現場を時系列で振り返ります。それぞれ、服装の指示がどこから来たのか、実際のフロアはどうだったのか、そして私がどう動いたのかを書きます。

1社目:研修では「スーツ」、配属先はポロシャツ

1社目は2021年4月に入社して、約4か月在籍した会社です。2週間の集合研修は自社の指定でスーツ着用、最終日に人事から「客先に行ったらスーツが基本です」という説明がありました。

その言葉を信じて、配属初日はネクタイ付きのスーツで客先に行きました。着いてみると、チームリーダーが私を見て「スーツで来たんだ。うちはポロシャツでいいよ」と笑っていました。

実際のフロアは、男性はポロシャツかボタンダウンシャツにチノパンがほとんどでした。ジャケットが必要になるのは、客先の担当者を招いた報告会がある日だけで、リーダーのロッカーに1枚置いてあるのを見かけたくらいです。

新卒の私にとって、自社の研修で教わった「基本」と現場の実態がここまで違うのは、軽い衝撃でした。自社の言う服装は、あくまで一般論でしかないと知った最初の経験です。

2社目:営業のメール一行で知らされた

2社目は三次請けで、約1年半在籍しました。入場の数日前に、自社の営業から届いた案件の連絡メールの末尾に、「服装は私服可とのことです。ジーンズだけは避けてください」と一行だけ書かれていました。

この一行の出どころは、元請けのリーダーだったと後から聞きました。営業が事前に「服装の指定はありますか」と聞いてくれていたのです。

この現場では、半袖のシャツにチノパンで通っていました。月に1回、元請けが客先に進捗を報告する日だけは、リーダーを含めてほぼ全員がジャケットを羽織っていて、私もその日だけは用意していました。

月40〜60時間の残業がある現場だったので、正直、服装に気を遣う余裕はあまりありませんでした。それでも清潔なシャツを毎日着ることだけは、リーダーに指摘されない最低ラインとして守っていました。

3社目:案内なし。周囲に合わせるしかなかった

3社目は二次請けで約2年半在籍し、金融系のWebサイトの案件でした。面談でも事前の連絡でも服装の案内はなく、私は初日にスーツで行って、周りがオフィスカジュアルだったことに気づき、2日目からジャケットとチノパンに切り替えました。

その経緯は、入場手続きの記事に書いています。

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ここで書いておきたいのは、この現場には「基準を決めた人」がそもそもいなかったことです。誰も何も指示していないのに、フロアの全員がオフィスカジュアルに揃っているのは、新しく来た人が前の人を見て合わせる、という連鎖だけでできた基準だったからです。

3社目はVPNで自宅から接続でき、リモートは週1〜2日ありました。出社は週3〜4日になるので、その日数分のシャツを回す必要があり、服の負担はリモートが多い現場より重くなります。

4社目:初めて、入場前に客先へ確認が入った

4社目は現在の現場で、二次請けで、在籍は約9か月です。もともと週1出社の予定でしたが、最近はほぼフル在宅です。入場が決まったとき、3社目の初日の失敗が頭に残っていたので、営業にチャットで一言送りました。

私

入場初日と、普段の服装の指定はありますか。もしあれば、客先に確認いただけると助かります。

自社の営業

確認してみますね。

自社の営業(翌日)

客先の方によると、私服で大丈夫、清潔感があれば十分とのことです。

返事が来るまでは1日でした。実際、出社していた頃のフロアは私服が中心で、ジャケットを着ているのは、客先の部長クラスが出席する月次の報告会の日くらいです。

リモートの日は、オンライン会議で映る上半身だけが問題になります。画面に映る範囲だけきちんとしていればよいという割り切りがあるのは、この現場の楽なところです。

服装は誰にどう確認するか

結論自社の営業に頼んで客先の担当者に確認してもらい、営業に聞けなければ、入場初日に現場リーダーか隣の席の先輩に聞くのが現実的です。服装の基準はフロアにいる人が持っているからです。

4現場を並べてみると、服装を確認できた現場は2社目と4社目だけで、どちらも営業が間に入ってくれた現場でした。確認の順番と、聞き方を整理します。

確認先の優先順位

確認先は、聞く難度が低く、かつ答えの信頼度が高い順に並べるのが効率的です。私は次の順で動くことにしています。

  1. 入場前:自社の営業に、客先への確認を頼む営業は客先や元請けとやり取りしているため、服装の指定の有無を尋ねるだけなら、角が立たない質問です。
  2. 入場前:案内がなければ、保守的に準備するスーツは着ていかなくても、ジャケットを1枚だけ荷物に入れておきます。初日に周りを見て、着るかどうかを決められます。
  3. 初日:現場リーダーに「普段はどんな格好の方が多いですか」と聞く自己紹介の流れで聞けば、気を遣いすぎている人には見えません。
  4. 初日〜1週間:隣の席・同じチームの先輩の格好を見る言葉で聞くよりも、実際の格好が一番確実な答えです。ジャケットの有無、靴、襟付きかどうかを観察します。

営業への確認がうまくいかないこともあります。営業の役割そのものについては、別の記事に書いています。

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聞き方の文面例

営業にも現場リーダーにも、聞く内容は同じで構いません。ポイントは、「何を着ればいいですか」という漠然とした質問ではなく、「選択肢を示して選んでもらう」形にすることです。

営業に送る文面の例

  • 「入場初日の服装は、スーツ・オフィスカジュアル・私服のどれが無難でしょうか。客先の指定があれば、ご確認をお願いします」
  • 「ジャケットとネクタイが必要な場面(来客対応・報告会など)はありますか」
  • 「夏場の服装(半袖・ノージャケット)の扱いも分かれば、教えてください」

初日に現場リーダーへ聞くときは、もっと短くて十分です。「今日はスーツで来ましたが、普段はどんな格好が多いですか」と聞けば、リーダーも答えやすくなります。

私は、聞くことを恥ずかしいと思う必要はないと考えています。服装の確認は、質問の中でも最も軽い部類で、聞いて評価が下がることはまずないからです。質問そのものに抵抗がある人は、こちらの記事も参考にしてください。

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面談・入場初日・帰社日・夏場の服装の使い分け

場面ごとに「どこまできちんとするか」の基準を決めておくと、毎回悩まずに済みます。ここでは、4現場の経験から、私が使っている基準を場面別に書きます。

場面私の基準理由
面談(対面)スーツ。ネクタイは営業に確認面談官より下に振れるのは避けたい。案内がなければスーツが無難
面談(Web)上はジャケット+シャツ映る範囲だけでも整えておく。背景と照明も同じ重さで見られる
入場初日案内がなければジャケット+チノパンスーツほど浮かず、私服ほど軽く見えない
帰社日その日の客先の服装のまま定時後に直行するため、着替える時間がない
夏場半袖シャツ。ジャケットは持参のみ現場の実態に合わせる

面談の服装は、案内がなければスーツにしておく

面談は、現場の実態を見る前に会う場面なので、服装を現場に合わせることができません。2社目の面談は客先オフィスでの対面でしたが、服装の案内はなかったので、私はスーツで行きました。面談官はジャケットなしのシャツ姿でした。

それでも、スーツで行って困ったことは一度もありません。面談の場では、服装が悪い印象に傾くことはあっても、プラスに働くことはほぼないからです。迷ったときは、固めに寄せるほうが安全だと私は判断しています。

3社目と4社目の面談はオンラインでした。4社目ではジャケットにシャツを着て、下は部屋着のままでしたが、画面に映らない範囲に気を遣う必要はないと割り切っています。

入場初日は「ジャケットを脱げる格好」で行く

初日の服装で一番避けたいのは、周囲から大きく浮くことと、逆に軽く見られることの両方です。私が今のところ一番外れが少ないと感じているのは、ジャケット+襟付きシャツ+チノパンです。

浮いたと感じたらジャケットを脱げますし、フロアが固い雰囲気ならそのまま羽織っていられます。1社目、3社目のようにスーツで行ってしまい、フロアで目立った経験をした私からすると、荷物でジャケットを調整できる余地を持っていくことが一番大事でした。

帰社日は、客先の服装のまま行く

2社目の帰社日は、月1回、定時後の19時から21時でした。客先から直行する人がほとんどで、服装は客先の格好のままです。

自社に着くと、スーツの人、私服の人、ポロシャツの人が混在していました。自社のオフィスでは、誰も服装を気にしていなかったという印象です。

4社目では、帰社日にあたる集まりがオンラインになりました。この場合の服装は、面談のときと同じく、映る範囲だけで十分と考えています。帰社日そのものの意味合いについては、こちらの記事に書きました。

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夏場の服装は、現場の実態に合わせる

夏場は、クールビズの影響で服装が緩む現場が多くなります。環境省は、冷房時の室温の目安を28℃として呼びかけています。ただし、私が確認した範囲では、そのページに具体的な服装の規定は見当たらず、どこまで軽装にしてよいかは、各現場の判断になります。

出典: 環境省 クールビズ(COOL BIZ)

クールビズの実施期間は年度ごとに変わるため、ここでは具体的な日付は書きません。私の現場では、夏が近づくと周りが先に半袖になり、そのあとに私も合わせる、という順番でした。

私の場合

3社目は冷房の設定が強めで、半袖シャツの上に羽織れるジャケットを椅子の背にかけておくのが毎日の習慣でした。4社目では、夏場でも客先の部長クラスが出る会議の日だけは、半袖ではなく長袖のシャツを選ぶようにしています。

暑さへの対処より、冷房対策のほうが現場では必要でした。半袖で通せる現場でも、ジャケット1枚を椅子にかけておくと、急な来客や会議のときに慌てずに済みます。

オフィスカジュアルの基準は、ジーンズの可否と「ジャケット1枚」

「オフィスカジュアル」と一口に言っても、人によって想像する範囲はかなり違います。私は4現場を通じて、基準を次の3点に絞るようにしています。

  • ジーンズ 2社目のように、「避けて」と明示される現場がある。案内がなければ、最初から履かないほうが安全
  • ジャケット 1枚は必ず持っておく。来客や報告会の日に、周囲が着ていて自分だけ着ていない状況を避けられる
  • 靴とシャツの清潔感 シャツの襟のくたびれ、靴の汚れは、距離が近いフロアでは意外と見られる

「清潔感があれば十分」という言葉を実際に聞いたのは、4社目の客先の回答だけです。ただ、他の3現場のフロアを見ても、細かい指定より清潔かどうかのほうが、現場の本音に近いと感じています。

逆に、これまで見てきた中で、服装を理由に指摘を受けた同僚を見たことはほとんどありません。1人だけ、サンダルで来て、リーダーから「靴は履いてきて」と言われた人がいましたが、それくらいです。

私が判断基準にしているのは、服装で得られる加点はほとんどなく、失点だけがあるということです。だからこそ、特別なおしゃれより、無難で清潔なものを何着か回すのが一番楽でした。

服装代は誰が持つのか

結論私服やスーツは自己負担が基本でした。私の4現場では、会社からも客先からも服装の補助が出たことは一度もありません。

私が実際に揃えた金額を書いておきます。1社目に入る前に、スーツ2着とシャツ、靴で約5万8千円。3社目に入ったときに、ジャケット、チノパン2本、シャツ4枚で約3万4千円かかりました。

どちらも自分の財布から出していて、自社や客先に請求したことも、補助の案内を受けたこともありません。これは私の経験した範囲の話で、すべての会社に当てはまるとは言えません。

制服や指定がある場合は、就業規則を見る

会社が労働者に作業用品などの費用を負担させる場合には、就業規則にその定めが必要になることがあります。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成を求めていて、第5号に「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」と書かれています。

出典: 労働基準法|e-Gov法令検索

つまり、制服や会社指定の服装がある場合には、その費用負担がどうなっているのかを、自社の就業規則で確認できる可能性があります。私は今回、自社の就業規則を見返しましたが、服装や被服の負担についての条項は、私が読んだ範囲では見つかりませんでした。

ただし、これは私の自社の話であって、一般的な状況ではありません。制服や指定の服装を求められている人は、就業規則を一度確認してみる価値があります。

特定支出控除は、使えるとは限らない

「服装代は経費にならないのか」と考える人もいると思います。国税庁の特定支出控除には、衣服費が含まれています。

ただし、対象になるのは「制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服」とされており、給与の支払者が発行する証明書なども必要になります。支払者から補填された部分は、対象外です。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.1415 特定支出控除

断定できないこと

着用が必要とされる衣服が対象なので、一般の私服やスーツが当てはまるとは限りません。実際に控除を受けられるかどうかは、勤め先や税務署への確認が必要です。私自身は、服装代を特定支出控除として申告したことはありません。

私の結論は、現実的には服装代は自己負担として割り切る前提で動く、というものです。そのうえで、どうしても高い買い物を避けたい場合は、最初に揃える枚数を減らし、現場の基準が分かってから買い足すのが賢いと思います。

まとめ

SES・客先常駐の服装は、会社でも業界でもなく、現場ごとに決まります。私の4現場では、客先のリーダー、元請けのリーダー、周囲の実態、客先のプロパー社員と、基準を握っている人がすべて違いました。

参画が決まったら確かめること

  • 自社の営業に、客先へ服装の指定があるかを確認してもらったか
  • 案内がない場合に備えて、ジャケット1枚を荷物に入れたか
  • 初日に現場リーダーか先輩に、普段の服装を聞いたか
  • 来客や報告会の日に、ジャケットが必要かを把握したか
  • 服装代が自己負担になる前提で、買い足しの予算を決めたか

3社目の私のように、案内がないまま初日にスーツで行ってしまっても、致命的なことにはなりません。その経緯は、別の記事に書いたとおりです。

服装は、聞けば1日で答えが返ってくる数少ない悩みのひとつです。次の現場が決まったら、営業にチャットを一通送るところから始めてみてください。