月末になると、私は同じ月の稼働について、性質の違う書類を2種類書いています。ひとつは客先に出す作業報告書、もうひとつは自社に出す月報です。
SESエンジニアとして5年ほど、二次請け・三次請けの客先常駐を経験してきましたが、この2つを「誰が読むために」「何のために」書いているのかを意識したのは、恥ずかしながらここ数年のことでした。意識するきっかけになったのは、後で紹介する評価面談での出来事です。
今回は、客先向けの作業報告書と自社向けの月報、それぞれ何を書き、誰が読み、どう使われているのかを、実体験をもとに整理します。
この記事で分かること
- 月報と作業報告書、書く相手・中身・使われ方の違い
- 4社目で実際に書いている作業報告書と月報のフォーマット
- 月報が評価面談の材料になっていると分かった場面
- 2社目で内容を使い回して痛い目を見た失敗談
- 2つの書類がズレたとき、それに気づくのは誰なのか
目次
- SES月報と作業報告書の違い|結論は「読む人」が別ということ
- 客先向け作業報告書に書くこと|稼働時間の精算根拠
- 4社目の作業報告書は3欄だけです
- なぜ稼働時間を報告する書類が必要なのか
- 作業報告書は、その先で請求の根拠になっているはずです
- 印鑑欄の有無は現場によってまちまちでした
- 自社向け月報に書くこと|評価とアサイン検討の材料
- 4社目の月報には5つの欄があります
- 所感欄には、3つのことを意識して書いています
- 月報が評価面談の材料になっていると分かった場面
- 書類を使い回して痛い目を見た話(2社目)
- 2つの書類がズレたとき、気づくのは誰か
- 書き方の工夫|2つの書類を切り分けるチェックリスト
- どちらに書くか迷ったら「客先に見せられるか」で判断します
- まとめ
SES月報と作業報告書の違い|結論は「読む人」が別ということ
結論作業報告書は客先向けの精算根拠で、月報は自社向けの評価・状況共有の材料です。同じ月の同じ仕事を書くのに、読む人も目的もまったく違います。
この違いを意識していないと、内容を使い回してどちらも役に立たない書類になります(実際に私はそれで失敗しました)。
大づかみに整理すると、次のようになります。
| 作業報告書(客先向け) | 月報(自社向け) | |
|---|---|---|
| 提出先 | 客先(プロパー担当者経由) | 自社(担当営業) |
| 書く内容 | 日付・稼働時間・作業内容 | 今月の作業内容・所感・来月の見込み |
| 主な使われ方 | 稼働時間の精算根拠 | 評価面談の材料、案件状況の把握 |
| 性質 | 客観的な事実の記録 | 本人の実感・所感の報告 |
ここから、それぞれの中身を具体的に見ていきます。
客先向け作業報告書に書くこと|稼働時間の精算根拠
まずは客先に出す作業報告書です。4社目の実物の欄構成から、そもそもなぜこの書類が必要なのかまでを順に見ていきます。
4社目の作業報告書は3欄だけです
4社目の作業報告書は「日付」「開始・終業時刻」「作業内容」の3欄しかありません。
作業内容の欄は「詳細設計」「単体テスト」「不具合対応」といった短い言葉で埋まっていきます。健康診断で午前中を休んだ日に「午前私用のため時間単位有給使用」とだけ書いた、あの欄と同じものです。
成果物の名称や検収の可否を書く欄は、もとから用意されていません。書いているのは、あくまで「その日、何時間、何をしたか」という事実だけです。
たとえば、ある週の作業内容欄はこんな調子でした。
| 曜日 | 作業内容欄の記入 |
|---|---|
| 月曜 | 詳細設計 |
| 火曜 | 詳細設計 |
| 水曜 | レビュー指摘対応 |
| 木曜 | 単体テスト |
| 金曜 | 単体テスト、不具合対応 |
5日分を並べても、その週に現場で何があったかはほとんど伝わりません。
なぜ稼働時間を報告する書類が必要なのか
SES契約は、成果物の完成そのものを義務とする請負とは違い、準委任契約であることが多いと理解しています。準委任は労働力の提供が本質なので、稼働時間そのものに対価が発生していることを示す書類が必要になります。
SES営業向けの用語解説サイトでも、この位置づけが説明されていました。
SES契約は成果物の完成が義務ではなく、労働力の提供が本質。だからこそ、稼働時間そのものに価値が発生していることを示す書類として、作業報告書(勤務表)を客先に提出する。
これを読んで、腑に落ちたことがあります。4社目の作業報告書に成果物の検収欄がないのは、書式の手抜きではありません。準委任として運用されていることの裏返しだったわけです。
準委任か請負かを分ける実務上の目安として、納品物が「制作したもの」なら請負、「作業の報告」なら準委任と判断される、という整理もあります(出典: SES契約(準委任)が「請負契約」と判断されてしまう4つのポイント|SES事業適正化協会)。4社目で毎月出しているのは、まさに「作業の報告」です。成果物そのものを納品する書類ではありません。
この作業報告書に書かれた作業内容が、指揮命令の実態を示す証拠になり得るかという論点は、偽装請負を扱った記事で別に整理しています。今回はそこまで踏み込みません。
一方で、業務委託エンジニアの作業報告書の実例を紹介しているnoteの記事では、記載項目として「作業日・開始時間・終了時間・作業時間・作業内容・金額」の6項目が挙げられていました(出典: 業務委託エンジニアの作業報告書を紹介します|Klow)。
4社目の3欄と比べると、「作業時間」の自動計算欄と「金額」欄が余分にあります。
| 記載項目 | 4社目 | noteの実例(6項目) |
|---|---|---|
| 日付(作業日) | あり | あり |
| 開始・終業時刻 | あり | あり |
| 作業時間(自動計算) | なし | あり |
| 作業内容 | あり | あり |
| 金額 | なし | あり |
自分の作業報告書には「作業時間」と「金額」の2つがないので、稼働時間から金額を計算する作業は、自分の手元では発生していません。
金額そのものが分からない書類を毎月出しているというのは、考えてみると不思議な状態です。ただ、単価を教えてもらえる立場ではないことを踏まえれば、金額欄がないのはむしろ自然な設計だとも思います。
作業報告書は、その先で請求の根拠になっているはずです
私が出した作業報告書は、プロパー担当者がチャットで「確認しました」と返すところで、自分の目の届く範囲は終わります。
そこから先で何が起きているのかは、正確には見えません。ただ、精算幅を営業に一度だけ聞いたとき、「140時間からです」という数字だけ返ってきた経験があります。この精算幅と照らし合わせるには月の稼働時間の積み上げが要り、その元データがまさに作業報告書の日別の時間だと考えています。
つまり、プロパー担当者の確認で終わったように見えて、その先には自社の営業がとりまとめて元請けへの請求額を確定させる、というもう一段階があるはずです。この工程を自分の目で見たことはありませんが、精算幅という仕組みが存在する以上、そう考えるのが自然です。
一度、営業にこの後工程を聞いてみようかと思ったことがあります。ただ、単価も精算幅の上限もはっきり教えてもらえなかった経験を踏まえると、聞いても核心には触れてもらえない気がして、結局聞かずじまいです。
印鑑欄の有無は現場によってまちまちでした
細かい話ですが、押印の有無も現場で違いました。2社目にいたころは、Excelの作業報告書に電子印影を貼り付ける欄があり、月末に自分の印影データを貼ってから提出していました。
4社目はクラウドの共通フォーマットで、そもそも印鑑欄自体がありません。プロパー担当者がチャットで確認して完了する運用です。
この節の前提
押印が必要かどうかについて、確認できる公的な基準は見つけられませんでした。ここは自分が経験した2社の違いとして紹介するにとどめます。
作業報告書という同じ名前の書類でも、フォーマットは会社どころか客先ごとに変わります。この記事で紹介している3欄・5欄という数字も、あくまで私が経験した2社の実例だと理解してください。
自社向け月報に書くこと|評価とアサイン検討の材料
ここからは自社向けの月報です。4社目の欄構成、所感欄で意識していること、評価面談で使われていると気づいた場面の順に書きます。
4社目の月報には5つの欄があります
月報は、客先ではなく自社に出す書類です。4社目では、自社のGoogleフォームで、毎月最終営業日の18時までに提出する運用になっています。
欄は5つです。氏名、現場のコード(社名は書かず、あらかじめ割り振られた管理番号のようなもの)、今月の作業内容、所感・困りごと、来月の見込みです。
4社目の月報。提出期限は毎月最終営業日の18時です。
作業報告書と違って、開始・終業時刻を書く欄はありません。稼働時間はすでに作業報告書のほうにまとまっているので、月報側で重ねて書く必要はない、という整理なのだと思います。
自由記述欄は、多く書いても読まれない気がして、いつも要点を絞るようにしています。
テンプレートの形式そのものは会社によって全く違うはずですが、「稼働時間を書かない」「所感・所見の欄がある」という2点は、月報と呼ばれる書類にある程度共通する特徴だと考えています。
所感欄には、3つのことを意識して書いています
320字前後という限られた分量の中で、私が意識しているのは3つです。今月何にどれくらいの時間を使ったか、何に困っているか、来月はどうなりそうか、この3つです。
ある月の所感欄に書いたこと
「先月から続いていた他チームとの仕様調整が今月ようやく落ち着きました。来月は結合テストのフェーズに入る見込みです。」
作業報告書の作業内容欄に書く「詳細設計」「単体テスト」という言葉だけでは、この背景はまったく伝わりません。所感欄は、その行間を自分で埋めるための場所だと捉えています。
月報が評価面談の材料になっていると分かった場面
月報を何に使っているのか、自社側からはっきり説明されたことはありません。ただ、一度だけ、その使われ方を推測できた場面がありました。4社目に参画して半年ほど経った、最初の評価面談でのことです。面談の同席者は担当営業と部門長の2人でした。
その面談の中で、営業から「月報に書いていた、他チームとの仕様調整で時間がかかったという話、その後は落ち着きましたか」と聞かれました。自分では、その月報を書いたこと自体をほとんど忘れていました。半年前に書いた自由記述の内容を、営業がちゃんと参照して質問してきたことに、正直驚きました。
これで確信を持てたわけではありませんが、月報は少なくとも面談の準備材料として読まれている、という手応えを得た瞬間でした。
評価面談で語れる材料を3行メモに残しておくという工夫を以前の記事で書きましたが、実はそのメモの元ネタの多くは、書き溜めてきた月報を読み返すところから来ています。
ポイント: 月報の使われ方を会社側から明示されることはまずありません。それでも、面談で過去の月報の内容に触れられたかどうかは、読まれているかを推測する数少ない手がかりになります。
書類を使い回して痛い目を見た話(2社目)
ここからは、うまくいかなかった話です。2社目にいたころ、月40〜60時間の残業をしていた時期がありました。当時の月報は、今よりもっと簡素な様式で、「今月の作業内容」と「所感」の2欄しかありませんでした。
忙しさにかまけて、私は「今月の作業内容」欄に、作業報告書の作業内容欄に書いた文言をほぼそのままコピーして貼り付けていました。「詳細設計、単体テストを実施」という一言です。
月報を使い回していた2社目のころの状況。
ある月の更新時期に、上司から電話がありました。趣旨としては、次のようなことを言われています。
月報だけだと今の状況がよく分からなくて、更新の判断がしづらいんですよね。
……。
とっさに返す言葉が見つかりませんでした。実際には毎日のように残業していたのに、月報にはその実感が一文字も書かれていなかったからです。
書類を2種類出す意味は、同じ内容を2回書くことではありませんでした。
作業報告書は「何時間、何をしたか」という事実の記録で、月報は「どう感じていて、何に困っているか」を伝える書類です。この違いを意識せずに使い回していた5か月間、自社側には私の状況を判断する材料が実質的に何も届いていなかったことになります。
忙しい月ほど、月報の所感欄を丁寧に書く価値があるというのが、この失敗から学んだことです。皮肉なことに、一番書く余裕がない月ほど、一番書く必要がある月でもありました。
2つの書類がズレたとき、気づくのは誰か
結論ズレに最初に気づけるのは、自社の誰かではなく、書いている本人だけだと考えています。
2社目の失敗を振り返って考えたのは、この2つの書類の内容がズレたとき、誰が気づく仕組みになっているのか、ということです。
労働時間の自己申告について、厚生労働省のガイドラインにはこうした記述があります。
入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータがある場合、自己申告の労働時間との間に著しい乖離が生じることがある。その場合は実態調査を実施し、労働時間を補正する。
これは自社の勤怠システムと客先の記録を突き合わせる話として書かれたものですが、月報と作業報告書の関係にも同じ構図が当てはまると考えています。
作業報告書には稼働時間という客観的な数字が残ります。月報には、その稼働がどんな状態で行われていたかという、数字には出てこない実感を書く欄があります。
この2つを見比べれば、たとえば残業が多い月なのに月報の所感が「特になし」で埋まっている、という不自然さに気づけるはずです。
確認できていないこと
自社が実際にこの2つを突き合わせているかどうかを、私は確認したことがありません。少なくとも2社目では、突き合わせが行われていた形跡はありませんでした。
だとすると、ズレに最初に気づけるのは、自社の誰かではなく、結局のところ書いている本人だけということになります。
自社に「2つを突き合わせる仕組みを作ってほしい」と提案したことはありません。仕組み化を求めるより、自分の記録を残すほうが早いと考えたからです。
ポイント: 2つの書類の食い違いに気づく専用の仕組みは、私が経験した現場にはありませんでした。だからこそ、実感と事実が合っているかを確認する役目は、本人が引き受けるしかないと考えています。
作業報告書の控えを提出後も自分のクラウドストレージに残すようにしたのと同じ理由で、今は月報の控えも手元に残すようにしています。読み返したときに、自分の書き方の癖を客観視できるからです。
書き方の工夫|2つの書類を切り分けるチェックリスト
2つの書類を書き分けるうえで、私が実際に使っている判断基準と確認項目をまとめます。
どちらに書くか迷ったら「客先に見せられるか」で判断します
作業報告書と月報、どちらに書けばいいか迷う内容も出てきます。私が使っている基準はひとつだけです。それは「客先に見せられる内容かどうか」です。
見せられる内容なら作業報告書に書きます。愚痴や不安、来月の見通しのように、見せる必要のない内容は月報に書きます。単純な基準ですが、これを決めてからは迷うことがほぼなくなりました。
| 内容 | 客先に見せられるか | 書く先 |
|---|---|---|
| 何時間、何をしたか | 見せられる | 作業報告書 |
| 愚痴・不安・来月の見通し | 見せる必要がない | 月報 |
2社目の失敗を踏まえて、今実際に気をつけていることをまとめます。
2つの書類を書く前に確かめること
- 作業報告書には事実だけを書く 「詳細設計」「不具合対応」など、何をしたかを短く客観的に。所感や愚痴は書かない
- 月報には数字に出ない状態を書く 忙しさの度合い、困っていること、来月の見通しなど、作業報告書には書けない情報を優先する
- コピペで済ませない 同じ月の話でも、2つの書類は読む人も目的も違う。文言を使い回すと、どちらの書類も本来の役目を果たせなくなる
- 忙しい月ほど月報を丁寧に書く 余裕がない月の実感こそ、自社に伝える価値がある
- 両方の控えを自分でも残す 会社側の運用がどうなっているか本人には見えないので、自分の記録を最後の手がかりにする
このチェックリストのうち、一番効いていると感じるのは最初の2つです。作業報告書と月報を開いたとき、どちらに何を書くべきかで数秒迷った経験がある方は、そもそも役割の切り分けができていないサインだと思います。
まとめ
SESの月報と作業報告書は、似たタイミングで出す書類ですが、読む人も使われ方もまったく別物です。作業報告書は客先向けの精算根拠で、稼働時間という事実を記録します。月報は自社向けの状況共有・評価の材料で、数字に出てこない実感を伝える役目を持っています。
4社目では、月報が評価面談の材料として実際に参照されている場面に出会い、この書類が思った以上に読まれていることを実感しました。一方2社目では、この違いを意識せずに内容を使い回した結果、忙しさの実態が自社にまったく伝わらないまま5か月近くが過ぎていました。
2つの書類がズレたときにそれに気づく仕組みは、少なくとも私が経験した現場にはありませんでした。気づけるとしたら、書いている本人だけです。
もし今、月報と作業報告書を同じような感覚で埋めているなら、一度、それぞれが誰に向けて何を伝えるための書類なのかを見直してみてください。特に忙しい月こそ、月報の所感欄に実感を残しておくことをお勧めします。




