「未経験でもSESなら大丈夫」と入社説明会で言われて2021年4月に入社したものの、実際に現場に出るまでの間に何が起きるのか、当時の自分はまったく想像できていませんでした。
SESエンジニアとして5年ほど、客先常駐で複数の現場を渡り歩いてきましたが、振り返ってみると一番情報が少なかったのに、一番不安だったのがこの1年目の入り口です。
今回は、入社から研修、配属決定、最初の客先常駐までの流れを、同期7人という具体的な人数とともに振り返ります。
この記事で分かること
- 未経験入社からおよそ5週間の研修で、実際に何をやっていたか
- 配属の希望はどこまで通り、何が通らなかったのか、実際のやり取り
- 配属確定までの待機期間に何が起きていたか、給与の扱い
- 初めての客先常駐で戸惑ったこと、質問できずに詰まった失敗
- 1年目が終わる頃、同期7人がそれぞれどんな状況だったか
目次
SES未経験の1年目、研修から現場に出るまでの流れ
「SES 未経験 きつい」「SES 研修なし 放置」といった検索結果を見ると、未経験入社はいきなり現場に放り込まれてつぶれるものだ、という書かれ方をよく見かけます。実際には会社によって研修の手厚さはまったく違い、私が入った会社はどちらかというと手厚い部類でした。
この記事で書くのは、2021年4月に入社してから1年目が終わるまでの、いわば「配属される側」から見た内部の時間軸です。研修の中身そのものの他社比較や、5年経った同期のその後については別の記事に譲り、ここでは1年目という期間だけに絞ります。
同期は7人、講師は自社の30代の先輩社員1人でした。この7人という人数と、当時の空気感を頭に置いてもらえると、このあとの話が読みやすくなると思います。
私の1年目の入り口にあたる期間。どれも私の会社の場合の数字です。
同期7人との5週間、研修の中身
入社後の5週間は、前半2週間の集合研修と、後半3週間の自習期間に分かれていました。同期7人とそれぞれの期間で何をしていたかを書きます。
前半2週間、集合研修でのつまずき
入社してすぐの2週間は、会議室に7人が集まっての集合研修でした。内容はJavaの基礎文法、SQLの書き方、Gitの使い方、簡単な設計の考え方といった、いわゆる基礎科目です。朝9時半から夕方までみっちり演習が組まれていて、午前は座学、午後は手を動かす、という組み立てでした。
正直に言うと、最初の数日はほとんど付いていけませんでした。とくに苦しかったのが複数テーブルの結合で、3日目にはクラスの半分以上が正しいJOIN文を書けず、講師の先輩に「今日はここで一回止めます」と言われて演習そのものが中断したのを覚えています。
同期の中にも大学で情報系を学んでいた人が2人ほどいて、その2人だけは早々に課題を終わらせていました。それ以外の5人(自分を含む)は、ほぼ同じペースでつまずいていた印象です。
後半3週間、自習期間とタスク管理アプリの課題
集合研修が終わると、3週間ほどの自習期間に入りました。課題は、簡単なタスク管理アプリを一人で作ることです。タスクの登録・完了・一覧表示ができれば形になる、という程度の要件でしたが、一人で最初から設計して組み立てる経験自体が初めてで、想像していた以上に時間がかかりました。
自習期間の最後に、講師の先輩から一人ずつ30分ほどレビューを受けました。自分の実装を見せたとき、「ここ、テーブル名を決め打ちで書いてますよね。将来テーブルが分かれたらどうします?」と聞かれ、答えに詰まったのを覚えています。動くものを作ることに必死で、変更に強い作りにするという発想がまるで抜け落ちていました。研修全体を通して一番効いた指摘は、実はこの一言だったと今でも思います。
自習期間中は、もうひとつ地味につまずいた場面がありました。Gitのコミットの切り方です。機能をひとつ作り終えるまでコミットせずにいたら、気づけば1回のコミットに変更行数が200行を超えて積み上がっていました。
Gitのコミットで指摘されたこと
講師の先輩から「これだと、どこで壊れたのか後から追えなくなりますよ」と指摘され、そこから意識的に、キリの良いところで細かくコミットする癖をつけるようにしました。
壊れた箇所を後から追えるように区切っておくという発想自体が、当時の自分には抜けていたのだと思います。
合計するとおよそ5週間、研修という名目の期間がありました。当時はこれが当たり前だと思っていましたが、この手厚さが崩れるのは2社目に移ってから、という話は別の記事で詳しく書いています。
配属はどう決まったか、希望はどこまで通ったのか
結論Javaを活かしたいという希望は通り、最新の技術に触れたいという希望は通りませんでした。全部通るわけでも全部却下されるわけでもなく、部分的に通るというのが実感です。
自習期間の最終日、レビューとは別に、配属担当の社員(研修の講師とは別の人)と15分ほどの面談がありました。ここで聞かれたのは、得意そうな分野と、働く上での希望です。
この面談は、あくまで自社の中で完結する内部の場で、客先が同席する後々の「面談」とは性質がまったく違います。「選考の実態はあるのに選考と呼ばれない」という構造は、この時点ではまだ関係のない話でした。その構造は別の記事に書きました。
自分が伝えた希望はざっくりしたものでした。今思えば、後者はかなり漠然とした願望で、具体的に何を指しているのか自分でも説明できていませんでした。
Javaは研修でやった中では一番手応えがあったので、それを活かせる案件がいいです。できれば最新の技術に触れられる環境で働いてみたいです。
タスク管理アプリの実装、テーブル設計の考え方はよくできていたので、Javaでの業務システム開発からのスタートにしましょう。
結果として、前者の希望は通りました。実際にJavaを使う現場に配属されています。
一方で後者、いわゆる「最新の技術」という希望は通らず、配属先はウォーターフォールで進む、いわゆる古典的なSIer案件でした。
ポイント: 未経験1年目の希望は、全部通るわけでも全部却下されるわけでもなく、部分的に通るというのが実感です。
研修中の課題や態度から見えた「得意そうなこと」は反映されやすく、逆に「こういう環境で働きたい」という抽象的な希望は、判断材料が少ないぶん通りにくい印象でした。
後から振り返ると、「最新の技術」という言葉を選んだのは、当時読んでいた技術系のまとめサイトやSNSで見かけた単語を、そのまま借りてきただけだったように思います。自分が本当は何をやりたいのか、研修の5週間だけでは判断材料が足りていませんでした。希望の具体性は、そのまま判断材料の量になるのは、聞く側の配属担当にとっても同じだったのではないかと、今なら想像がつきます。
この面談では、「体力的に問題はないか」「通勤時間はどのくらいまで許容できるか」といった実務的な条件も確認され、体感としては条件面のすり合わせのほうに時間がかかっていました。同期の中には「実家から通える範囲がいい」とだけ伝えていた人もいて、これはそのまま通ったと聞いています。抽象的な希望より、条件として言い切れることのほうが扱いやすいのだろう、というのはこのとき感じたことです。
このとき決まった「Javaを使う業務システム開発」という方向性は、その後4社を渡り歩く今まで、ずっと変わっていません。1年目のこの15分の面談が、自分でも意識しないうちにキャリアの土台を決めていたことになります。
配属確定までの待機、SES未経験がここで焦らなくていい理由
結論待機は案件側の都合で決まるもので、私の場合は給与も満額出ていたからです。
配属の方向性が決まったからといって、すぐに現場に出られたわけではありません。実際に客先常駐が始まるまで、研修終了後さらに9日ほど待ちました。理由は、配属予定だった案件の開発着手日が客先側の都合でずれ込んだためだと、後から営業に聞きました。
この9日間、特別に何かをさせられたわけではなく、研修で使った教材を復習したり、SQLの練習問題を解いたりして過ごしました。出社は求められず、この期間は在宅での自習という扱いです。給与は通常どおり満額支給されていて、待機扱いになったからといって減額されるようなことはありませんでした。
待機中にやり直したこと
レビューで指摘されたタスク管理アプリのテーブル設計を見直しました。テーブル名を決め打ちにしていた箇所を、設定ファイル側に切り出す形に自分なりに書き直し、動くところまでやり直しています。
誰かに見せる予定があったわけではなく自主的にやっただけですが、指摘を受けっぱなしで終わらせないという意味では、この9日間が一番効いた復習だったかもしれません。
同期の中でも、この待機の長さにはばらつきがありました。7人のうち2人は自習期間が終わってすぐ配属先が確定し、ほぼ待機なしで現場に出ています。逆に、同期の1人は配属先の案件がさらに延期になり、3週間近く待つことになったと聞きました。待機の長さは本人の実力の差というより、配属先の案件都合で決まるものだと、この時期に実感しています。
これまでの流れを表にまとめると、次のようになります。
| 時期 | 出来事 | 自分の状況 |
|---|---|---|
| 2021年4月上旬〜中旬 | 集合研修(2週間) | 同期7人で会議室に集まって演習 |
| 4月中旬〜5月上旬 | 自習期間(3週間) | タスク管理アプリの課題とレビュー |
| 5月上旬 | 配属決定の社内面談 | Javaでの業務システム開発が決定 |
| 5月上旬〜中旬 | 配属確定までの待機 | 9日間、在宅で復習(同期の中では中間くらいの長さ) |
| 5月中旬 | 初めての客先常駐開始 | 下流の立場での参画 |
SES未経験で入社したばかりの時期にこうした待機期間が発生すると、「自分は必要とされていないのでは」と不安になりがちですが、少なくとも自分の経験では、待機は案件側の事情によるもので、給与も通常どおり出ていました。
焦って何かを埋め合わせようとするより、待機中は研修の復習に使うくらいの気持ちでいるほうが、精神的には楽だったと思います。
初めての客先常駐で戸惑ったこと
9日間の待機を経て、ようやく最初の客先常駐が始まりました。商流の細かい位置までは正直あまり覚えていないのですが、下流の立場での参画だったのは間違いありません。
初日はノートPCとVPN接続の設定を渡され、あとは既存の設計書を読んでおいてください、という簡単な説明だけで一日が終わりました。
最初の1か月はテスト業務中心
最初の1か月は、開発というよりテスト業務が中心でした。研修で作ったタスク管理アプリのような「ゼロから作る」経験とはまったく違う仕事で、正直、物足りなさと不安が入り混じった感覚がありました。
最初の1か月のテスト業務。細かい不具合が中心でした。
それでも、自分が見つけた不具合が翌朝の朝会で「昨日の指摘、直しておきました」とリーダーから共有されるのを聞いたときは、地味な作業でも現場の役に立っているという実感を持てた瞬間でした。
つまずいた瞬間、質問できなかった3時間
一番の失敗は、あるバグ報告の再現ができず、3時間近く一人で抱え込んでしまったことです。研修中は分からないことがあれば講師にすぐ聞ける環境でしたが、現場では誰に聞けばいいのかも分からず、周りは皆忙しそうに見えて、なかなか声をかけられませんでした。
結局、見かねた先輩社員から「どう、進んでる?」と声をかけてもらい、状況を説明したところ、5分ほどで原因が分かりました。設定ファイルの参照パスが、自分の手元の環境とテスト環境で違っていただけの単純な話です。
分からなくなったら、30分で見切りをつけて聞いてほしい。
研修中は自分から聞かなくても向こうから声がかかる環境に慣れていたので、現場では自分から声を上げないと誰も気づいてくれない、という当たり前のことに、身をもって気づかされました。
この一件のあと、分からないことをメモに書きためておき、休憩のタイミングでまとめて聞く、という自分なりのやり方を作りました。1件ずつ聞きに行くのは気が引けても、3件まとめてなら聞きやすい、という感覚があったからです。
現場で詰まったときの私のルール
- 分からなくなったら、30分を目安に見切りをつけて自分から声を上げる
- 聞きたいことはメモにためて、休憩のタイミングでまとめて聞く
この失敗だけを切り取ると散々な現場に見えるかもしれませんが、実際にはそうでもありませんでした。
声をかけてくれた先輩は、その後も週に一度くらいのペースで「困ってることない?」と聞いてくれるようになり、たまった質問メモをその場でまとめて消化する、という流れが自然にできていきました。制度として決まっていたわけではなく、あくまでこの人が気にかけてくれただけなのですが、結果的にはこれが自分にとっての1年目のセーフティネットになっていたのだと思います。
この現場は残業もほとんどなく、定時で帰れる日がほとんどの、比較的落ち着いた環境でした。この1社目については配属後の記憶があまり鮮明ではないのですが、淡々とテストをこなす日々が続いていたことを思うと、それも納得できる話です。
刺激が少なかった分、記憶にも残りにくかったのだと思います。
1年目が終わる頃、同期7人はどうなっていたか
2022年3月、1年目が終わる頃には、7人全員がまだ同じ会社に在籍していました。この時点では誰も辞めていません。ただ、まったく変化がなかったわけでもありません。
2022年3月時点の、同期7人の様子。
年末に、オンラインで同期の集まりが一度ありました。7人のうち5人が参加し、それぞれの配属先の様子を話す時間があったのです。自分と同じように落ち着いた現場にいる人もいれば、すでに残業が多い現場に配属されて疲れた様子を見せている人もいました。
その中の一人は、「定時っていう概念、もう忘れかけてる」と苦笑いしながら話していました。それでも本人の口から「辞めたい」という言葉は出ず、あくまで愚痴として聞こえる範囲にとどまっていたのを覚えています。
辞めたいという話が出たわけではありませんが、配属先の当たり外れは、入社半年で見え始めていたのは確かでした。
7人がその後どう動いたかについては、同期のその後をまとめた記事で詳しく書いています。1年目の時点では誰も動いていない、という点だけここで確認しておきます。動き出すのはもう少し先、2年目以降の話です。
情報通信業の離職率、統計で確認できること
自分の実感だけでなく、公的な統計にも当たってみました。厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」の中で、情報通信業の新規大卒就職者について、就職後3年以内の離職率は令和4年3月卒で32.9%、令和3年3月卒で29.3%となっています。
全産業計は令和4年3月卒で33.8%なので、情報通信業がとくに突出して高いわけではありません(出典: 厚生労働省「新規大卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」別紙3)。
高卒についても同じ資料の別紙2で確認すると、情報通信業の3年以内離職率は令和4年3月卒で36.1%、令和3年3月卒で38.7%です。全産業計は令和4年3月卒で37.9%となっており、こちらも全産業と比べて極端な差はありません(出典: 厚生労働省「新規高卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」別紙2)。
| 就職後3年以内の離職率 | 情報通信業(令和4年3月卒) | 情報通信業(令和3年3月卒) | 全産業計(令和4年3月卒) |
|---|---|---|---|
| 新規大卒就職者 | 32.9% | 29.3% | 33.8% |
| 新規高卒就職者 | 36.1% | 38.7% | 37.9% |
この統計でわかること・わからないこと
この統計には「1年目だけ」「情報通信業だけ」を掛け合わせた数字が存在しません。判明しているのは、全産業計での1年目の離職率が大卒12.1%、高卒17.9%(いずれも令和4年3月卒)という数字だけで、情報通信業に絞った1年目単独の離職率は、少なくとも私が確認できた資料には載っていませんでした。
「SES 1年目 離職率」といった具体的な数字を見かけても、この解像度の統計は存在しないはずなので、鵜呑みにしないほうがよいと思います。
この統計は、私が研修制度についての記事で使った「能力開発基本調査」とは別の調査です。あちらは企業側の教育投資の実態を測るもの、こちらは実際に離職した人の割合を測るものです。
自分の観測範囲に戻ると、同期7人のうち1年目に辞めた人はゼロで、統計上の「1年目の離職率」を実感として裏付ける材料にはなりませんでした。むしろ動き出したのは2年目以降です。なぜ辞めなかったのか、私なりの見立ては2つあります。ただし統計が示していることではなく、あくまで自分の解釈です。
1年目に誰も辞めなかった、2つの見立て
- 研修と待機のクッションがあった現場に出て間もない時期の負荷が、その分多少和らいでいたのかもしれません
- 検討する余裕がなかった1年目は覚えることが多すぎて、辞めるかどうかを考える余力自体がなかった可能性があります。年末の集まりで疲れた様子だった同期も、「辞める」とまでは口にしていませんでした
この2つは、外から見ているだけでは見分けがつきません。
まとめ
未経験でSESに入ってからの1年目は、研修、配属決定、待機、そして初めての客先常駐という順番で進んでいきました。
5週間の研修があったこと自体は、業界の中でも恵まれた部類だったと今は思いますが、その手厚さの中でも配属の希望は半分しか通らず、初めての現場では「もっと早く聞けばよかった」と後悔する場面もありました。
これから未経験でSESに入る人に伝えられることがあるとすれば、次の3つです。
- 研修の手厚さは会社ごとの運の要素が大きいので、当てにしすぎない 同じ「研修制度あり」でも、内容は会社によってまったく違いました
- 配属の希望は具体的なものほど通りやすく、漠然としたものほど通りにくい 「Javaがやりたい」は通っても「最新の技術に触れたい」は通りませんでした
- 現場で分からないことがあれば、30分を目安に自分から声を上げる 3時間抱え込んで学んだ教訓です。メモにためて休憩時にまとめて聞くのも一つの方法です
私自身、これができるようになったのは1年目の終わりに近づいてからでした。統計を見る限り情報通信業の離職率が他業種より極端に高いわけではないのに「未経験 SES きつい」という検索が絶えないのは、1年目に何が起きるのかが外からは見えにくいからだと思います。同期7人のその後が気になる方は、5年後を追った記事もあわせて読んでみてください。
これから未経験でIT業界に入ろうとしていて、SES以外の入り口とも比べたいなら、未経験向けのIT転職エージェント(@PRO人
など)で、研修の有無や配属の決まり方を応募前に聞いておく方法もあります。私の入社時はそこまで確認しなかったので、今なら最初に聞いておきたかった点です。
29歳以下で、関東・関西・東海での勤務を考えているなら、未経験からのIT就職に絞った支援サービス(ウズウズIT
など)で、初回カウンセリングを受けて話を聞いてみる方法もあります。入社前に研修や配属の実態を第三者に確かめられる場は、SESの選び方を決めるうえで役に立ちます。




