「今度の本番切り替え、連休中も出てもらえますか」。本番を控えた現場で客先の担当者にそう聞かれたら、その場でどう答えるでしょうか。

SESエンジニアとして5年ほど、4社の現場に入ってきましたが、休日出勤でいちばん印象に残っているのは、3社目のデータ移行の本番切り替えです。

今回は、そのときの実体験をもとに、SESの休日出勤は断れるのか、割増賃金と代休・振替休日で扱いがどう変わるのかを、確認すべき手順と一緒にお伝えします。

この記事で分かること

  • 休日出勤を命じる権限は客先ではなく雇用主の自社にあり、断る相手も自社の営業・上長であること
  • 断れるかを分ける材料(就業規則の規定、36協定の届出、本人の事情)と、断るリスク
  • 断る前に確認したい3点(休日出勤の規定、36協定、法定休日の曜日)
  • 土曜(所定休日)と日曜(法定休日)で割増が変わること
  • 振替休日と代休の違い。私の休日出勤は振替休日で処理され、手当は付きませんでした
  • 客先の稼働カレンダーと自社の休日がズレること、精算幅との関係
目次
  1. SESの休日出勤は断れる?命令を出せるのは客先ではなく自社です
  2. 客先の担当者ができるのは「依頼」までです
  3. 断れるかどうかを分ける3つの材料
  4. 3社目のデータ移行の本番切り替えで、連休の出勤が必要になった経緯
  5. 切り替えの本番は、連休をまたいで24時間以上かかりました
  6. 断る前に確認したい3点|休日出勤の規定・36協定・法定休日の曜日
  7. 土曜は所定休日、日曜は法定休日|割増賃金が変わります
  8. 振替休日と代休の違い|私の休日出勤は振替休日で処理されました
  9. 手当ではなく、振替休日で処理されました
  10. 振替休日と代休は、休日労働になるかどうかが違います
  11. 客先の稼働カレンダーと自社の休日はズレます|精算幅との関係
  12. 客先の「稼働日」が、自社では「休日」になります
  13. 休日出勤が精算に乗るのかは、現場からは見えません
  14. 休日出勤を頼まれたとき、自社の営業にどう伝えるか
  15. まとめ

SESの休日出勤は断れる?命令を出せるのは客先ではなく自社です

最初に結論と、その根拠を整理します。そのうえで、断れる場合と断りにくい場合を分けて見ていきます。

結論条件つきで断れます。命令の根拠(就業規則と36協定)がなければ命じられず、根拠があっても本人のやむを得ない事情は考慮される余地があります。ただし、無断で、または繰り返し断ると、懲戒のリスクがあります。

客先の担当者ができるのは「依頼」までです

休日出勤を命じる権限を持っているのは、雇用契約を結んでいる自社です。客先の担当者が「休日も出られますか」と言うのは、自社に対する作業の依頼であって、私個人への業務命令ではありません。

SESの多くは準委任契約で、客先が個々のエンジニアに直接指揮命令をしない建前になっています。契約の型の違いは、別の記事にまとめました。

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客先のプロパー担当者

  • できる:作業日程の希望を伝える
  • できる:切替の工数を自社に依頼する
  • できない:休日出勤の命令
  • できない:割増賃金の支払い
  • できない:36協定の締結

雇用主である自社

  • 休日出勤の命令(就業規則に基づく)
  • 36協定の締結と労基署への届出
  • 割増賃金の支払い
  • 断りの受け付け(営業・上長)
「出てください」と言う人と、「出なさい」と命じられる人は別です。

もっとも、現場では依頼と命令の境目が曖昧になりがちです。客先からの打診がそのまま命令のように聞こえる場面は、少なくありません。36協定と残業上限の考え方は、別の記事にまとめています。

関連記事SESの36協定と残業上限|客先の残業指示は断れるかSESの残業に36協定の上限はあるのか。月40〜60時間残業が続いた三次請け現場の実体験から、上限の数え方と休日労働の扱い、客先…

それでも「断る相手は客先ではなく、自社の営業や上長」という整理を持っておくと、返事の仕方が変わります。客先に「できません」と言うのではなく、自社に「この依頼を受けてよいか」を確認する形にできるからです。

断れるかどうかを分ける3つの材料

断れるかどうかは、「出たくない」という気持ちだけでは決まりません。私が整理した限りでは、次の3つの材料で決まります。

断れるかを分ける3つの材料

  1. 命令の根拠就業規則や雇用契約に、業務上必要なときは休日出勤を命じる旨の定めがあるか。
  2. 36協定法定休日に働かせるには、36協定の締結と労働基準監督署長への届出が必要です。
  3. 本人の事情体調不良、家族の介護、育児など、出勤できないやむを得ない事情があるか。

2つ目の36協定については、厚生労働省の資料にも、法定休日の労働には協定の締結と届出が必要だと書かれています(出典: 時間外・休日労働と割増賃金|確かめよう労働条件)。協定が届け出られていなければ、そもそも法定休日に働かせることができません。

根拠が欠けていれば、断る以前に命じられないというのが、まず押さえておく順番です。

根拠が揃っていても、本人のやむを得ない事情は考慮されます。病気や家族の介護は正当な理由として扱われる余地があると説明されることが多い一方、「予定があるので」だけで毎回断り続けるのは難しい場合があります。

懲戒については、一度断っただけで直ちに解雇や懲戒になるとは限らないと、一般向けの解説では説明されています。ただし、無断で出勤しない、繰り返し拒否するといった場合は、就業規則上の懲戒の対象になり得ます。

私は法律の専門家ではないので、個別の判断は労働基準監督署や総合労働相談コーナーで確認してください。この記事に書いたのは、私の実体験と、公開されている一般的な整理に沿った話です。

3社目のデータ移行の本番切り替えで、連休の出勤が必要になった経緯

ここからは実際にあった休日出勤を書きます。3社目の現場の状況と、切り替えで求められた働き方の順です。

切り替えの本番は、連休をまたいで24時間以上かかりました

3社目は二次請けの現場で、金融系のWebサイト(見積もり・申し込み・マイページなど)のシステムです。前半の約1年は、旧システムの顧客・契約データを新システムへ移すデータ移行を担当しました。

対象は数百テーブル・数百万件以上のデータで、自社の人間は移行チームに私1人でした。私の役割は、手順書に沿って移行作業を実行することです。

リハーサルは3〜4回あり、件数や値の不一致、作業の時間超過、手順書の誤り・漏れなど、いろいろな問題が出ました。本番の切り替えは24時間以上かかる計画で、連休をはじめ複数日にまたがります。夜間や休日の対応も入りました。

こうした現場では、休日の出勤は特別なお願いというより、工程に組み込まれた作業です。日程としてはごく自然な話でした。

  1. リハーサル3〜4回、問題の洗い出し
  2. 本番切り替え24時間以上、連休・複数日
  3. 休日出勤の処理手当ではなく振替休日
データ移行の本番までの流れです。休日の出勤は、振替休日で処理されました。

断る前に確認したい3点|休日出勤の規定・36協定・法定休日の曜日

休日出勤を頼まれたら、すぐに返事をせず、自社の規程を開いて確かめるのが基本です。ここでは、確認する3点を順に書きます。

  1. 就業規則の休日出勤の条文を読む業務上必要な場合に休日出勤を命じる旨の定めがあるか、命じ方(書面やワークフローなど)の手続きが決まっているかを見ます。手続きが決まっているなら、客先の依頼だけでは出勤は成立しません。
  2. 36協定の届出と、休日労働の枠を見る届出済みか、休日労働の日数の上限がどう書かれているかを確認します。法定休日に出るなら、この枠の中に収まっている必要があります。
  3. 法定休日がどの曜日かを確かめる就業規則の休日の条に、土曜・日曜・国民の祝日・年末年始などと並んで、法定休日がいつか書かれています。法定休日でない休日は所定休日で、割増の扱いが変わります。

この3点が揃っていれば、断る材料は、本人のやむを得ない事情だけになります。

36協定は、見せてもらえるかを人事に尋ねる前に、社内の規程集に置かれていないかを先に探してみてください。就業規則と同じ場所に置かれていることがあります。

見落とされやすいのは、1つ目の「命じ方の手続き」です。自社の命令の手続きを踏んでいなければ、客先がどれだけ急いでいても、休日出勤は成立しません。

私は、3社目の切り替えの休日の作業を受けました。

土曜は所定休日、日曜は法定休日|割増賃金が変わります

同じ休日出勤でも、土曜と日曜では割増の仕組みが変わります。ここでは、その違いを表にして見ていきます。

法定休日は、法律上必ず与えなければならない休日です。どの曜日かは会社の就業規則で確認します。それ以外の休日は所定休日(法定外休日)になります。

所定休日(例:土曜)法定休日(例:日曜)
割増の考え方週40時間を超えた分が時間外労働。25%以上休日労働。35%以上
36協定時間外の枠に数える休日労働の枠に数える(届出が必要)
22時〜5時さらに25%加算さらに25%加算(合計で1.60)
日付のまたぎ暦日(0〜24時)で区切って考える同左

数字は厚生労働省の資料にあるとおりです(出典: 時間外・休日労働と割増賃金|確かめよう労働条件)。なお、所定休日そのものの割増率は、このページに明確な定義が見当たらなかったので、ここでは「週40時間を超えた分は時間外の25%以上」という説明にとどめます。

週の労働が40時間に達していなければ、所定休日に出ても時間外にならない場合があります。祝日を挟む週などです。

ただし、割増が付くのは、休日労働として処理されたときの話です。私の3社目の休日出勤は、手当が付く形ではなく、振替休日で処理されました。次の節で、その違いを書きます。

振替休日と代休の違い|私の休日出勤は振替休日で処理されました

振替休日と代休は、どちらも「別の日に休む」ことですが、休日労働になるかどうかが違います。ここでは、その違いと、私のケースで何が起きたかを書きます。

手当ではなく、振替休日で処理されました

3社目の切り替えでの休日出勤は、手当が付く形ではなく、別の日に休みを取る形で処理されました。振替休日です。

手当が付かないと聞くと、損をした気分になる人もいると思います。そこで、振替休日と代休で何が変わるのかを、先に整理しておきます。

振替休日と代休は、休日労働になるかどうかが違います

振替休日代休
休日を入れ替える時期出勤前に、あらかじめ出勤した後で
休日労働になるかならないなる
休日手当(35%以上)不要必要。代休を取っても消えない
注意点振替先が別の週になり、週40時間を超えた分は、時間外割増が必要代休日を有給にするかは、会社の規程次第

振替は出勤前に日付を決める、というのが条件です。出勤したあとに「やはり代休にしてほしい」と言っても、振替として処理した扱いは変えられません。

どちらで処理するかは、会社が出勤前に決めます。法定休日の出勤は、振替が原則で、振替にできない場合に代休で処理する会社が多いようです。

この表の前提

代休日を有給にするか無給にするかは、会社の規程によって異なります。振替先の週に40時間を超えたかどうかでも、時間外割増の要否が変わります。個別のケースは、自社の規程か労働基準監督署に確認してください。

ただ、これは「振替は損」という話ではありません。振替は休日労働にならないので36協定の休日労働の枠も使わず、別の日にまとまった休みを取れます。会社が手当を出さずに済むのは、規程と法令に沿った扱いです。

休日出勤を受ける前に、振替か代休かを聞いておくのが、私なりの教訓です。処理の方法は、出勤前に決まる扱いだからです。

振替休日を取るときも、SESでは客先への連絡と自社への申請が両方必要になる現場があります。二重構造は、有給のとりにくさを扱った記事にも書いています。

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客先の稼働カレンダーと自社の休日はズレます|精算幅との関係

客先と自社では、休日の数え方が違うことがあります。ここでは、そのズレと、準委任の精算幅との関係について、書きます。

客先の「稼働日」が、自社では「休日」になります

客先のカレンダーでは稼働日でも、自社のカレンダーでは休日、ということがあります。祝日でも客先のシステムが動く日がある、といった場合です。

客先では「普通の出社日」でも、自社では休日出勤の命令や申請が要る日になります。客先のカレンダーで稼働日でも、私の休日は自社のカレンダーで決まります。

作業報告書は客先の様式で、勤怠は自社の様式という現場もあります。休日の扱いも二重になるので、休日に出るときは、自社への申請を忘れないようにしています。勤怠のズレは、別の記事に書きました。

関連記事SESの勤怠は自社と客先でズレる?二重管理の原因と確かめ方【差5.75時間の内訳】SESの勤怠が自社と客先でズレる原因を、二次請けの3社目で営業から「合計が合わない」と言われた実体験から整理します。二重管理の仕…

休日出勤が精算に乗るのかは、現場からは見えません

準委任の精算幅は、客先と自社の間の契約で決まります。現場のエンジニアには、上限や超過単価までは見えないことが多いのが実情です。

休日出勤の時間が精算幅の計算に入るのか、休日の割増に当たる額が客先への請求に載るのか。これは契約次第で、現場の私には見えません。

私の給与は、自社の賃金規程の式で決まります。休日手当が出るかどうかは、客先が請求に載せているかどうかとは関係なく、自社の規程と法令で決まります。請求の扱いを客先に直接聞くのは私の立場ではなく、営業の領分です。

休日出勤を頼まれたとき、自社の営業にどう伝えるか

実際に断るかどうかは別として、頼まれたときの返し方の基本を書きます。ここでは、返事の順序と、断るときの伝え方を整理します。

まずは即答せず、「休日の扱いを自社に確認してから返事をします」と持ち帰ります。そのうえで、自社の営業か上長に、依頼の内容と日程を伝えます。

断るときのポイントは、できる範囲を先に伝えて、できない日だけを理由つきで断ることです。全面的に断るのでなければ、角は立ちにくくなります。

更新を控えた時期は、「断ったら更新に響くのでは」という不安が大きくなります。私自身、更新の前後で断りやすさは変わると感じます。見えない範囲での評価は、自分では確かめようがありません。

まとめ

SESの休日出勤は断れるのか。答えは、条件つきです。休日出勤を命じるのは客先ではなく自社で、自社の就業規則と36協定が根拠になります。

休日出勤を頼まれたら、受ける前に確かめること

  • 頼んでいるのは客先で、命じるのは自社であると整理したか
  • 就業規則に休日出勤を命じる旨の規定があるか
  • 36協定が届け出られていて、休日労働の枠が残っているか
  • 法定休日が何曜日で、出る日が所定休日か法定休日か
  • 振替休日か代休か。手当はどうなるか
  • 客先のカレンダーと自社の休日がズレていないか

私の場合、3社目のデータ移行の本番切り替えで、連休の休日出勤を受けました。処理は振替休日で、手当は付きませんでした。

振替が損、代休が得という話ではありません。受ける前に、振替か代休かを自社に聞いておけば、扱いを納得して選べるというのが、私の教訓です。

法的な判断が必要になった場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談する手があります。まずは自社の就業規則を開いて、休日出勤の条文を読むところから始めてみてください。