10月の終わりごろ、自社から年末調整の書類が届いたとき、私は「これは常駐先の誰かに出すのだろうか」と一瞬手が止まりました。毎日顔を合わせているのは客先の人たちで、自社の総務とは月に一度も話さないからです。

SESエンジニアとして5年あまり、4つの現場で毎年この時期を迎えてきましたが、客先常駐は「誰に何を出すのか」でまず迷います。今回は、年末調整の書類を出す先と流れを、国税庁の説明と私の経験を合わせてお伝えします。

この記事で分かること

  • SESの年末調整の書類は、常駐先ではなく自社(給与を払う会社)に出すこと
  • 年末調整の対象になる条件と、ならないケース(国税庁の説明)
  • 提出する書類5種類の役割と、書き方で迷いやすい点
  • 常駐先が遠い・在宅が多いときの、書類の出し方と電子化の仕組み
  • 期限に遅れたとき、控除証明書が届かないときの考え方
  • 年の途中で会社が変わるときに必要な、前の会社の源泉徴収票
目次
  1. SESの年末調整は自社に出します:常駐先の担当者は関係ありません
  2. 初年度に常駐先の人へ聞こうとして止められた話
  3. 年末調整の対象になる人とならない人:国税庁の説明
  4. 提出する書類は5種類:何のための紙かを先に押さえます
  5. 扶養控除等申告書は、年末だけでなく「年初」にも関わる書類です
  6. 保険料控除は、証明書が揃ってから書きます
  7. 住宅ローン控除は、1年目だけ確定申告が必要です
  8. 常駐先が遠い、在宅が多いときの出し方:紙・メール・システムの3つ
  9. 国税庁の電子化の仕組みは、会社が受け付けているときだけ使えます
  10. 期限に遅れたとき、控除証明書が届かないとき:考え方を整理します
  11. 保険料控除証明書が届かないときは、保険会社に再発行を頼みます
  12. 間に合わなかったら、確定申告で取り戻す方法があります
  13. 年の途中で会社が変わったとき:前の会社の源泉徴収票が必要です
  14. 転職した年は、前の会社の給与も合わせて年末調整します
  15. 個人事業主や業務委託のSESは、年末調整ではなく確定申告になります
  16. まとめ:迷ったら「給与を払う会社はどこか」で考えます

SESの年末調整は自社に出します:常駐先の担当者は関係ありません

結論から書くと、出し先は自社です。常駐先ではありません。

結論年末調整は、給与を支払う会社が行う手続きです。SESで給与を払っているのは所属している自社なので、書類を出すのも、12月の給与で精算されるのも自社です。

国税庁の説明では、年末調整は毎月の給与から源泉徴収した所得税の合計と、1年間に納めるべき税額の差額を精算する手続きです(出典: No.2665 年末調整のしくみ|国税庁)。毎月源泉徴収しているのは自社なので、精算するのも自社になります。

客先は、自社と準委任契約などを結んで業務を頼んでいる相手にすぎません。私の給与から税を引いていないので、客先には年末調整をする立場がありません。

  1. 自社の総務書類・案内が届く
  2. 自分で記入控除証明書を添える
  3. 自社へ提出常駐先ではない
  4. 12月の給与過不足を精算
  5. 源泉徴収票年明けに受け取る
年末調整の流れ。常駐先の担当者は、どの段にも登場しません。

初年度に常駐先の人へ聞こうとして止められた話

入社した2021年の秋、最初の年末調整のことです。2つ目の現場に入って間もない時期で、自社から書類一式がPDFで届きました。

私は何をどこに出すのか分からず、同じチームにいた客先の方に聞こうとしました。その直前に、自社の営業から連絡が入りました。

私

年末調整の書類が届いたのですが、現場の事務の方にお渡しすればよいですか?

自社の営業

いえ、客先には出さないでください。自社の総務宛てです。期限と提出方法は、届いたメールに書いてあります。

私

メールの本文を最後まで読んでいなかった。

届いたメールには、提出先の部署と期限が最初から書いてありました。客先に聞く前に、案内を読めば済む話でした。

ここから分かることは、SESの年末調整で迷う原因の多くは、制度の難しさではなく「窓口が見えない」ことだという点です。毎日いる場所と書類の出し先が別なので、普通の会社員なら同じ部署の先輩に聞けるところを、自分で案内を読んで動くことになります。

年末調整の対象になる人とならない人:国税庁の説明

提出に入る前に、そもそも自分が年末調整の対象かどうかを確認します。国税庁の説明のうち、ここで押さえたい点だけを整理します。

次の表は、年末調整の対象になる条件と、ならないケースです(出典: No.2665 年末調整のしくみ|国税庁)。

区分年末調整
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を、年末調整を行う日までに提出している対象
年の中途で退職した原則として対象外(例外あり)

ここで重要なのは、1行目の「扶養控除等申告書を提出していること」という条件です。これを出していないと、毎月の源泉徴収も「乙欄」という高めの税額で行われます。乙欄の確認は、給与明細の記事でも触れました。

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年の途中で退職した人は、原則として年末調整の対象外です。例外もあるので、具体的にどうなるかは、退職する会社の総務に確認するのが確実です。退職自体の手続きは別の記事に書いています。

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提出する書類は5種類:何のための紙かを先に押さえます

年末調整の書類は、名前が似ていて、どれが何のための紙なのか分かりにくいものです。私が毎年見ている5種類を、役割ごとに並べます。

会社によって、紙が分かれていたり、1枚にまとまっていたりします。名称は国税庁の様式にもとづきます。

年末調整で出す書類の役割

  • 扶養控除等申告書 扶養している家族がいるか、自分が障害者や寡婦・ひとり親などに当たるか。月々の源泉徴収と、年末調整の両方のもとになる
  • 基礎控除申告書 基礎控除に関する申告書。書き方は年によって様式が変わるので、自社から届く記入例に従う
  • 配偶者控除等申告書 配偶者がいて、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるときに出す
  • 保険料控除申告書 生命保険料・地震保険料・社会保険料・iDeCoなどの控除を受けるときに出す。控除証明書を添える
  • 住宅借入金等特別控除申告書 住宅ローン控除を、2年目以降に年末調整で受けるときに出す

全員が5枚すべてを出すわけではありません。保険に入っていなければ保険料控除は不要で、配偶者がいなければ配偶者控除等は不要です。自分に当てはまるものだけを埋めます。

扶養控除等申告書は、年末だけでなく「年初」にも関わる書類です

扶養控除等申告書は、年末調整の条件に入っている書類です。年末調整を行う日までに出していることが対象になる条件で、毎月の源泉徴収の税額も、この申告書をもとに決まります。

年の途中で家族構成が変わったときは、異動の申告になります。結婚、子どもの誕生、扶養に入っていた家族が就職した、といった変化です。年末調整の時期に、1年分の状況を見直す形になります。

何も変わらない年でも、扶養にしている家族の収入が増えていないかは確認しておきます。

保険料控除は、証明書が揃ってから書きます

保険料控除申告書は、生命保険料や地震保険料などを払っている人が使う書類です。書くときは、保険会社から届く控除証明書の金額を見ながら転記します。

控除証明書は、10月下旬から11月上旬にかけて届く、という説明を見かけます。ただし、届く時期は保険会社ごとに違い、紙のはがきで届くところもあれば、ウェブで取得するところもあります。

ポイント: 申告書に書く金額は、自分の記憶や通帳の引き落とし額ではなく、控除証明書に書かれた金額です。証明書が揃う前に書き始めると、あとで直しが増えます。

住宅ローン控除は、1年目だけ確定申告が必要です

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、最初の年は確定申告で受けます。2年目以降は、年末調整で受けられるようになります(出典: No.1211-1 住宅借入金等特別控除|国税庁)。

2年目以降に必要な添付書類は、自社の案内と国税庁のページで確認してください。ここでの「勤務先」も、SESなら自社です。

常駐先が遠い、在宅が多いときの出し方:紙・メール・システムの3つ

書類を出す先が自社だと分かっても、次の悩みは「どうやって出すか」です。常駐先が遠かったり、在宅の日が多かったりすると、自社の総務に紙を持っていけません。

私の経験では、自社の運用は次の3つのどれかでした。会社によって違うので、まずは届いた案内で確認します。

提出方法流れ迷いやすい点
紙の郵送印刷して記入・押印し、控除証明書を添えて自社へ送る自宅にプリンターがないと印刷できない。郵便の日数を見込む
メールで添付PDFに入力、または記入した紙を撮影・スキャンして送る控除証明書の画像が読み取れるか。個人情報の扱い
システム入力自社の勤怠・人事システムで入力、控除証明書は画像で添付入力の途中保存。システムの案内が見つからない

入社した年は、PDFを自分で印刷して記入し、押印して郵送でした。客先までは片道45〜60分かけて通っていましたが、自社の総務は別の場所にあり、封筒を出すのが一番確実でした。

今の現場は、最近はほぼ在宅勤務です。出社しなくても出せるように、書類は郵送かデータで出すものだと考えています。どの方法で受け付けるかは、毎年の案内で確認します。

国税庁の電子化の仕組みは、会社が受け付けているときだけ使えます

国税庁は、年末調整の書類を電子データで出す方法を案内しています。保険会社などから控除証明書を電子データで受け取り、国税庁の無料の作成ソフトに入力して、電子データのまま勤務先に出す方法です(出典: 年末調整手続の電子化に向けた取組|国税庁)。

マイナポータルと連携して、控除証明書のデータを自動で取り込む方法もあります。ただし、これは保険会社などが対応している場合だけです。

どの方法を使えるかは、自社が電子提出を受け付けているかで決まります。私の側で選べるものではないので、「自社の案内に書いてある方法」を使います。

私の場合

国税庁の作成ソフトで入力しても、自社が会社の様式でしか受け付けていなければ、二重入力になりかねません。迷ったら、入力を始める前に自社の総務へ「どちらで出せばよいか」を先に聞くようにしています。

期限に遅れたとき、控除証明書が届かないとき:考え方を整理します

書類を出す時期は、10月から11月ごろに設定されることが多い、というのが私の周囲の印象です。ただしこれは国税庁が定めた期限ではなく、各社が12月の給与計算に間に合わせるために決めた運用の目安です。

私の自社も、11月中旬に提出期限が設定されていました。期限は会社ごとに違うので、届いた案内の日付を見てください。

保険料控除証明書が届かないときは、保険会社に再発行を頼みます

控除証明書が1通だけ、期限の日まで手元に届かない年がありました。保険会社のウェブで確認すると、発行の手続きがされていないようでした。

自社の総務に事情を伝えたところ、12月上旬まで待ってもらえました。ただし、これは会社の運用次第です。待ってもらえるかどうかは、会社が12月の給与計算を締めるまでの日数で決まるので、遅れそうなら早めに連絡するほうが確実です。

保険会社への再発行の依頼は、電話やウェブでできるところが多いものの、届くまでに数日かかる場合があります。「届かない」と気づいた時点で、すぐに依頼します。

間に合わなかったら、確定申告で取り戻す方法があります

年末調整に間に合わなかった控除は、自分で確定申告をして受けることもできます。保険料控除や扶養控除などを自社で反映してもらえなかったとしても、その分が完全になくなるわけではありません。

ただし、確定申告は自分で書類を作って税務署に出す手続きで、年末調整より手間がかかります。年末調整の期限に遅れたらすぐ確定申告に切り替えるのではなく、まず自社の総務に「今から出して間に合うか」を確認するほうが、手間は少なくて済みます。

会社ごとの運用について

この節の「期限の目安」「待ってもらえるか」は、私の自社での経験です。国税庁が決めている期限ではなく、会社の給与計算の都合で変わります。具体的な期限と、遅れたときの扱いは、必ず自社の総務に確認してください。

年の途中で会社が変わったとき:前の会社の源泉徴収票が必要です

SESでは、現場が変わることはあっても、自社が変わるとは限りません。ここは分けて考える必要があります。

現場が変わるだけなら、給与を払う会社は同じなので、提出先も変わりません。私は4つの現場を経験しましたが、所属する会社は同じで、現場が変わっただけでした。契約終了で離任したときも、年末調整の書類は同じ総務に出していました。

転職して自社が変わる場合は話が別です。

転職した年は、前の会社の給与も合わせて年末調整します

国税庁の説明では、年の途中で就職した人の年末調整には、前の会社の給与の情報が必要です(出典: No.2668 年の中途で就職した人の年末調整|国税庁)。

前の会社の給与は、前の会社から受け取る源泉徴収票で確認します。確認できなければ、年末調整ができません。

転職した年に、源泉徴収票が必要な理由

  1. 1年分の給与を合算するため年末調整は、その年の1月から12月の給与の総額で税額を出します。前の会社の分が分からないと、総額が出ません。
  2. 前の会社で引かれた所得税を精算するため前の会社が源泉徴収した所得税も、年間の税額の精算に関わります。
  3. 確認できなければ年末調整ができないため前の会社の分が確認できないと、新しい会社では年末調整が行えません。

退職時に前の会社から源泉徴収票が届かないときは、退職した会社に発行を依頼します。退職の手続きや退職金の有無については、別の記事に書きました。

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個人事業主や業務委託のSESは、年末調整ではなく確定申告になります

ここまでは、自社に雇用されている会社員の話でした。個人事業主や業務委託として常駐しているSESは、一般に年末調整がなく、自分で確定申告をします。

会社員とフリーランスでは、毎年の手続きが大きく変わります。独立した場合の手取りや手続きについては、別の記事に書いています。

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まとめ:迷ったら「給与を払う会社はどこか」で考えます

SESの年末調整は、書類を出す先も、12月に精算されるのも、給与を払っている自社です。常駐先の担当者に出すものではありません。

年末調整の前に確かめること

  • 自社の案内メールを最後まで読み、提出先の部署と期限を確認したか
  • 扶養控除等申告書は、家族構成の変更を反映したか
  • 保険の控除証明書は、すべて届いているか(届かなければ保険会社に再発行を依頼)
  • 常駐先が遠い場合は、郵送・メール・システムのどれで出すかを決めたか
  • 年の途中で自社が変わった場合は、前の会社の源泉徴収票を手元に用意したか

書類を出す先は、毎日いる場所ではなく、給与を払う会社と整理しておけば、現場が変わっても、リモートが増えても迷いません。

同じ状況の方は、まず自社から届いている案内のメールを開き、提出先と期限の2点だけ確認してください。それが分かれば、あとは書類を1枚ずつ埋めていくだけです。