在宅の日は通勤がなくなって楽な反面、エアコンと電気代、自宅の回線を自分の持ち出しで使っていることに気づく人は多いはずです。私はSESで4社を経験し、在宅は週1〜2日から、今はほぼフル在宅まで増えました。
今回は、SESの在宅勤務手当が出るのか、光熱費と通信費は誰が負担するのかを、公的な資料を確認しつつ、自社の規程のどこを見ればいいかまで実体験を交えてお伝えします。
この記事で分かること
- 在宅勤務手当は法律で支給が決まっているわけではなく、自社の規程で決まること
- 定額の手当と実費精算で、税金の扱いが変わること
- 就業規則・賃金規程・テレワーク規程のどこで、どの言葉を探すか
- SESでは、客先ではなく契約元の自社に確認する理由
- 手当が出ない場合に、自分でできる確認と判断の軸
目次
- SESの在宅勤務手当は出るのか|光熱費の負担は会社の決め方しだいです
- 費用の種類ごとに、よくある負担の考え方は違います
- 在宅勤務手当が出る人はどれくらいいるのか
- 私の4社での在宅と、給与明細に手当があったか
- 定額の手当と実費精算では、税金の扱いが変わります
- 手元に残る額で考えると、定額手当の見え方が変わります
- 就業規則・賃金規程・テレワーク規程のどこを見るか
- 規程に何も書かれていなければ、費用は原則として自己負担のままです
- SESで確認する相手は、客先ではなく契約元の自社です
- 現場ごとに在宅日数が変わるので、定額手当が合わないことがあります
- 手当が出ないときに、自分でできること
- 在宅の頻度が高い現場なら、手当の有無を案件選びの条件に入れてもよいと考えています
- まとめ
SESの在宅勤務手当は出るのか|光熱費の負担は会社の決め方しだいです
結論在宅勤務手当を出す法律上の義務はなく、出るかどうかは自社の規程で決まります。規程を見れば有無も金額も分かります。
在宅勤務で増える費用を誰が持つのかは、法律が一律に決めているわけではありません。厚生労働省のテレワーク総合ポータルのQ&Aでは、会社が労働者に費用を負担させる定めをする場合は、その内容を就業規則に定める必要がある、と労働基準法89条1項5号を根拠に説明されています。
同じQ&Aには、労働者に過度な負担が生じることは望ましくない、とも書かれています。労使で話し合い、導入前に明確なルールにしておくことが勧められています。
出典: テレワークの実施に要した通信費用・水道光熱費の負担|厚生労働省 テレワーク総合ポータル
最初に確かめること
- 費用負担のルールが、規程に書かれているか
- 書かれているなら、手当か実費精算か、どの費用が対象か
手当を出す義務も、全額自己負担にしていいという決まりもありません。ルールがあるのかないのかが、すべての出発点です。
費用の種類ごとに、よくある負担の考え方は違います
同じQ&Aには、費用の種類ごとの例も載っています。金額や割合の数字は載っておらず、考え方の整理にとどまります。
| 費用の種類 | Q&Aに書かれている考え方 |
|---|---|
| 情報通信機器(PCなど) | 会社貸与で、全額会社負担とする例が多い |
| 通信回線 | 個人利用との切り分けが難しく、一定額を会社が負担する例がある |
| 文具・宅配など | 会社購入や着払い、立替精算などをルール化しておくことが重要 |
| 水道光熱費 | 切り分けが難しく、テレワーク勤務手当に含めて支払う企業もある |
光熱費は、自宅の電気代のうち仕事で使った分だけを取り出せないため、実費で割り出すのが現実的ではありません。そこで定額の手当にまとめる会社がある、という流れです。
在宅勤務手当が出る人はどれくらいいるのか
手当が出ている人は少数派、というのが私の肌感覚です。数字で確認できたものは1つだけでした。
ITmediaの記事(2021年2月)で紹介されていた、在宅勤務をしている就業者759人への調査では、手当が出ると答えた人が約17.1%、出ないと答えた人が約64.0%でした。
この数字の読み方
2021年の記事で、調査主体は記事内で確認できていません。いまの支給率や金額の相場を示す、最新の公的な統計は確認できていないので、「出ない人のほうが多かった時期があった」という目安にとどめてください。
手当の相場額は、ここでは書きません。公的な資料で確かめられた金額がないためです。
私の4社での在宅と、給与明細に手当があったか
ここからは私の話です。在宅の日数は現場ごとに違いました。決まり方はリモートワークの記事に書きました。
2社目は週1〜2日で、自宅からはVPNで接続していました。3社目も週1〜2日のVPN接続です。4社目は、もともと週1出社の予定でしたが、フリーアドレスで座席がない可能性があるため出社を控え、いまはほぼフル在宅です。
3社目の給与明細で確認できたこと
3社目の離任前の明細は、基本給269,000円、職能手当等が約15,000円、残業手当が約50,000円(約20時間分の実費)、家族手当が20,000円、住宅手当が40,000円で、支給総額は約394,000円でした。固定の手当の行は職能・家族・住宅の3種類で、在宅勤務手当にあたる行はありませんでした。
週1〜2日は在宅していたのに、明細に在宅向けの手当の行はなかった、というのが事実です。明細に行がないということは、定額の手当としては支給されていなかったことになります。
ここで押さえておきたいのは、明細に項目がないと気づいても、それだけでは「規程上は手当がない」のか「あるのに自分が対象外なのか」までは分からない、ということです。明細は結果を示すだけで、理由は規程にしか書かれていません。
定額の手当と実費精算では、税金の扱いが変わります
手当が出る場合でも、払い方が2通りあります。毎月決まった額を払う定額の手当と、かかった費用を精算して払う実費精算です。税の扱いが違います。
国税庁の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」では、実際にかかった費用の相当額を精算する方法であれば給与として課税されない、とされています。一方、使わなくても返さなくていい定額の手当は、給与として課税されます。
出典: 在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)|国税庁(PDF)
実費精算の費用相当額の具体的な計算方法は、この記事では取り上げません。気になる方は、上のFAQで確認してください。
手元に残る額で考えると、定額手当の見え方が変わります
定額の手当は、課税対象の給与に上乗せされるので、所得税の源泉徴収の対象になります。手元に残るのは額面そのままではありません。
給与の明細の見方は、別の記事にまとめました。
実費精算は、領収書や利用料の按分など、申請の手間がかかります。定額は楽な代わりに、課税されます。どちらが得かは会社の制度しだいで、選べるものではありません。
就業規則・賃金規程・テレワーク規程のどこを見るか
結論探す文書は3つ、探す言葉は4つです。まずテレワーク規程があるかを確認し、なければ就業規則と賃金規程を順に見ます。
厚労省のQ&Aによると、費用負担を定める場合は就業規則(テレワーク勤務規程などを含む)の作成・変更が必要です。つまり、負担のルールが存在するなら、必ずどこかの規程に書かれているはずです。
規程で確かめる3つの文書
- テレワーク規程(在宅勤務規程)があるか。独立した規程があれば、費用負担の項目がここにまとまっていることが多い
- 賃金規程に、在宅勤務手当やテレワーク手当の名前の手当が載っているか。金額や支給条件はここに書かれる
- 就業規則の本体に、費用負担についての定めがあるか。「労働者に負担させる」の定めがあれば、そこに書いてある
検索して探す4つの言葉
- 「テレワーク」「在宅勤務」(制度そのものの有無)
- 「費用負担」(誰が持つかの定め)
- 「手当」(定額の支給があるか)
- 「通信費」「水道光熱費」「貸与」(個別の費用と機器の扱い)
PDFで規程が配布されているなら、検索機能で4つの言葉を順に当てれば数分で終わります。紙で渡されている場合は、人事や総務に閲覧を頼むことになります。
自分の会社のルールを見せてほしいと頼むのは、特別なことではありません。
規程に何も書かれていなければ、費用は原則として自己負担のままです
テレワーク規程も手当も費用負担の定めもなければ、会社として負担のルールを決めていない状態です。その場合、手当は出ず、費用は自己負担になる可能性が高いと考えておくのが現実的です。
ただし、「出ない」と決めつける前に、人事や総務に「在宅勤務の費用負担について、定めはありますか」と聞いてみる価値はあります。規程の読み違いや、規程とは別の運用があることもあるためです。
SESで確認する相手は、客先ではなく契約元の自社です
SESで特有なのは、働く場所と雇用主が別だという点です。在宅するかどうかは客先や元請けの規程が決めますが、手当を払うのは給与を支払っている自社です。
在宅の日の光熱費や通信費に、手当や精算の仕組みはありますか?
うちは費用の話は出せないですね。所属の会社さんの規程ですので。
上の会話は実際のやり取りではなく、聞き方と返ってきそうな答えの例として組み立てたものです。客先に費用負担を聞いても、自社の規程の話だと返される可能性が高いと考えておくほうが無難です。客先は常駐する場所を提供する立場で、私たちの給与や手当を決める立場ではないからです。
だから、確認の相手は自社の人事・総務、あるいは営業です。営業に聞くときは、規程の話ではなく「自分の明細にはどの項目があるか」を一緒に確認してもらうと、話が早く進みます。
現場ごとに在宅日数が変わるので、定額手当が合わないことがあります
もう1つ、SESに特有の事情があります。現場が変わるたびに在宅の日数が変わる点です。
私の場合、週1〜2日だった時期から、ほぼフル在宅に変わりました。もし定額の手当があったとしても、在宅の日数が増えれば、実際にかかる光熱費と手当の額とのずれは大きくなります。
定額か実費精算かに加えて、在宅日数が変わったときに手当が自動で見直されるのかどうか。ここは規程を読んでも分からないことが多いので、人事に直接聞くのが確実です。
手当が出ないときに、自分でできること
手当が出ないと分かっても、すぐに打てる手がないのが実情です。ただ、判断の材料にできる確認はいくつかあります。
- 規程の根拠を確認する 手当が出ない理由が「そもそも定めがない」のか「定めはあるが自分が対象外」なのかを区別します
- 対象の条件を確認する 在宅の日数や職種、雇用形態などで支給対象が絞られていないかを見ます
- 支給のきっかけを聞く 新しい制度が検討中の会社は、時期を教えてもらえることもあります
- 費用を把握しておく 電気代の増え方は月ごとに違います。自宅の明細を見て、在宅の月とそうでない月の差を確かめておくと、相談するときの根拠になります
相談するときに、増えた費用の根拠を示せないと「いくらの話なのか」から説明することになり、話が進みにくくなります。数字を先に押さえておくほうが、話は通りやすくなります。
在宅の頻度が高い現場なら、手当の有無を案件選びの条件に入れてもよいと考えています
在宅の日数が多い現場ほど、手当の有無が手取りの実感に響きます。ほぼフル在宅の4社目のような現場では、その傾向が強まります。
ただ、現場は自分で選べないことが多いので、案件選びの条件に入れること自体が難しい場合もあります。それでも、転職や所属変更を考える段階では、求人票や面談で「在宅勤務手当の有無」「テレワーク規程の有無」を聞く価値があります。
通勤手当の課税関係については、別の記事に書きました。
まとめ
SESの在宅勤務手当は、法律で出ると決まっているものではなく、自社の規程で決まります。確認の相手は客先ではなく、給与を払っている自社です。
- 手当の有無は規程で決まる 費用負担を定めるなら就業規則への記載が必要で、書かれていなければ原則は自己負担になりやすい
- 探す場所と言葉 テレワーク規程・賃金規程・就業規則を見て、「テレワーク」「在宅勤務」「費用負担」「手当」で検索する
- 税の扱いに注意 実費精算は課税されず、使わなくても返さなくていい定額手当は給与として課税される
- SESでは自社に聞く 客先は費用を決める立場にない。在宅日数が現場ごとに変わるので、手当が実態に合うかも確認する
私の3社目の明細には、在宅勤務手当の行はありませんでした。それでも週1〜2日は在宅していました。明細だけを見ても理由は分からず、答えは規程にしかありません。
まずは自分の会社のテレワーク規程と賃金規程を、4つの言葉で検索してみてください。ここが一番、確認にかかる時間が短く、得られる情報が大きい作業です。




