転職サイトの職務経歴書テンプレートを開き、3社目の案件を書こうとしたところで、「会社名」の欄で手が止まりました。客先の名前を書いていいのか、その場で判断がつかなかったからです。
SESエンジニアとして5年ほど、客先常駐で4社を経験し、営業に提出するスキルシートはこれまで4回書き直してきました。ただ、転職活動で使う職務経歴書を通しで書こうとしたのは、今回が初めてです。
これは客先に提出するスキルシートの話ではなく、転職活動で使う職務経歴書の話です。今回は、会社名を書かずにどこまで書けるのか、4社分の経歴を1本にどうまとめるのかを、実際に手を動かした実体験からお伝えします。
この記事で分かること
- 「会社名が書けない」の会社名が、自社なのか客先なのかという整理
- スキルシートと転職用の職務経歴書で、何を使い回し何を書き直すか
- 3社目を例にした、会社名を出さずにどこまで書けるかの線引き
- 定量的な実績を書こうとしてつまずいた具体的な場面
- 4社分の経歴を1本の職務経歴書にまとめるときの書き分け方
目次
SES職務経歴書で「会社名が書けない」というときの会社名とは
結論書けないのは常駐先の客先名とプロジェクト名だけです。自社の名前はそのまま書けます。
4社目に配属されてから9か月ほど経った頃です。担当している保守改修の案件は、客先独自の社内フレームワークを使っていて、そこでしか通用しない書き方のクセがかなり強い環境でした。
独自の命名規則やDIの組み方を覚えるほど、汎用的な技術というより、その現場でしか通じない知識が積み上がっている感覚がありました。次にどこへ行っても通用するスキルなのか怪しくなってきて、一度自分の経歴を棚卸ししておきたいと思ったのが、職務経歴書を書き始めたきっかけです。
転職サイトに登録して、テンプレートの「会社名」の欄で手が止まった直後、自分の中で混同していたことに気づきました。「会社名が書けない」と思っていたとき、指していたのが自分の雇用主なのか、常駐先の客先なのか、その区別を自分でも整理できていなかったのです。
職務経歴書の「会社名」欄に書くのは、雇用契約を結んでいる自社の名前です。ここは何も隠す必要がありません。SESという働き方そのものは一般的に知られているので、そのまま書いて問題ないと判断しました。
入場時の誓約書が根拠になっています
客先の名前を書かない方がいいと考える理由は、現場に入るたびに結んできた誓約書・秘密保持契約にあります。
入場手続きで交わす書類の重さは現場によって差がありましたが、客先名や業務上知り得た情報を第三者に開示しないという条項自体は、どの現場でも共通していました。
職務経歴書は転職先の担当者という「第三者」に渡す書類です。誓約書の建てつけからすると、客先名をそのまま書くのは避けた方が安全だという判断に落ち着きました。
経済産業省の3要件で線を確認しました
どこまでが本当に保護される情報なのか、感覚だけで判断するのは不安だったので、経済産業省のページで確認しました。営業秘密は「有用性」「秘密管理性」「非公知性」の3つの要件を満たす情報だと定義されています(出典: 営業秘密~営業秘密を守り活用する~|経済産業省)。
同省はこの考え方を具体化した「営業秘密管理指針」も公表していて、2025年3月に改訂されているとのことです。
条文の細かい適用範囲までは専門家ではないので判断できません。ただ、この3要件から読み取れることが一つあります。固有名詞そのものが、秘密として管理されているかどうかが分かれ目になるということです。
| 書類に書く情報 | 3要件に当てはめた私の見立て |
|---|---|
| 客先名・プロジェクト名 | 社内で管理された固有名詞なので、3要件に当てはまる可能性が高い |
| 業種・規模・担当した技術スタック | 業界内で普通にやり取りされている情報で、秘密管理性・非公知性のハードルを満たしにくいはず |
この線引きを、記事の後半で実際の書き換え例に落とし込みます。
スキルシートと職務経歴書は別の書類です
会社名の扱いを整理した後、もう一つ気づいたことがあります。私はスキルシートを4回書き直してきましたが、それをそのまま転職活動用の職務経歴書に流用しようとして、うまくいきませんでした。
書式が違うから、という単純な話ではありません。読み手と目的がまったく違うからです。
| 項目 | スキルシート | 職務経歴書 |
|---|---|---|
| 提出する相手 | 自社の営業を経由して客先 | 転職先の人事・現場責任者 |
| 目的 | 案件の面談に呼ばれること | 書類選考を通過すること |
| フォーマット | 自社指定のフォーマット | 自由(厚労省のひな形などもある) |
| 中心となる内容 | 経験した技術・工程の一覧 | 経験を通じて何を成し遂げたか |
スキルシートは、自社が客先に提出するための書類です。読み手は客先の技術リーダーやプロジェクトマネージャーで、案件の要件に合うかどうかを短時間で判断されるための資料です。
職務経歴書は、自分が転職活動のために提出する書類です。読み手は転職先の人事担当者や現場責任者で、この人が今後どんな仕事ができるのかを見るための資料です。
使い回せるのは「事実」の部分だけでした
期間、担当した技術スタック、担当工程。この3つは、スキルシートから転記してほぼそのまま使えました。
一方で、書き直しが必要だったのは、アピールの軸そのものです。スキルシートには「データ移行の実行、保守改善での設計・実装・テストを担当」とだけ書いていましたが、これは何を経験してきたかの一覧にすぎません。職務経歴書では、なぜその範囲を任されたのか、どう進めたのか、そこから何を得たのかまで書く必要があると気づきました。
スキルシートが「経験の幅」を見せる書類だとすれば、職務経歴書は「その経験で何を成し遂げたか」を見せる書類です。この違いに気づくまで、テンプレートの空欄を何度も埋めては消していました。
厚生労働省は、ハローワークの職務経歴書ひな形を公開しています。形式は簡易形式・詳細形式・表形式・志望動機入り形式の4種類です(出典: ハローワーク 職務経歴書ひな形|厚生労働省 東京労働局)。
私の場合
結局、私が選んだのは詳細形式でした。簡易形式では担当工程や実績を書ける行数が少なく、会社名を書かない分の情報量を数字で補うスペースが足りなかったからです。
どれを選ぶかより先に、スキルシートとの目的の違いを自分の中で言葉にしておかないと、どの形式を使っても中身は同じ空欄で止まる、というのが実際にやってみた感覚です。
会社名を書かずにどこまで書けるか、3社目を例に
線引きの感覚を、実際の職務経歴書に落とし込んでみます。使ったのは3社目、二次請けで参画していた、金融系のWebサイト(見積もり・申し込み・マイページなど)の案件です。約2年半在籍し、前半の約1年はデータ移行、後半の約1年半は保守改善を担当していました。
| 3社目の経歴 | 内容 |
|---|---|
| 書かなかったもの | 客先の会社名、システムの固有名称、プロジェクトの正式名称 |
| 書いたもの | 業種(金融系のWebサイト)、商流(二次請け)、担当範囲(数百テーブル・数百万件以上のデータ移行、保守改善での改修・障害対応)、担当工程(移行作業の実行、設計〜テスト)、在籍期間(約2年半) |
厚生労働省が提供する「マイジョブ・カード」の様式2(職務経歴シート)を見ると、この線引きの考え方が公的な書式にも表れていることが分かります。会社名・雇用形態を記入する欄とは別に「職務の内容」欄があり、次のような案内が書かれています。
従事した職務の内容とともに、可能な限り、果たした役割、貢献したこと等を記入してください
固有名詞そのものより、役割と貢献の記述を重視する設計になっている。厚労省公式の書式でも、会社名は主役の項目ではないということです。これを見て、客先名を書けなくても職務経歴書の骨格は十分に成立すると、自分の中で腹落ちしました。
一稿目は「守秘義務」を書きすぎて空白だらけでした
最初に書いた一稿目は、正直に言うと読み物として成立していませんでした。会社名を書けないなら、と思うあまり、担当した工程の説明にまで「守秘義務のため詳細は非公開」と書き添えていたからです。
読み返すと、具体的な情報がほとんど残っていませんでした。職務内容の欄には「詳細設計・単体テストを担当。守秘義務のため詳細は非公開」という一文だけが、3社分並んでいました。担当した範囲も、担当工程の中身も、成果も、すべてぼかした結果、何をしてきた人なのか伝わらない書類になっていました。
これは、会社名を隠すことと、内容を隠すことを混同していたのが原因です。守秘義務の対象になるのは客先の固有名詞であって、自分が何を担当し何を作ったかという事実そのものではありません。書き直すときにこの2つを分けて考えるようにしてから、ようやく読める内容になりました。
実際の書き換え例
スキルシートに書いていた原文と、職務経歴書用に書き直した文を並べてみます。
| 文面 | |
|---|---|
| スキルシートの原文 | 金融系Webサイトのデータ移行・保守改善に参画。移行作業の実行、改修の設計・実装・テストを担当。 |
| 職務経歴書用に書き直した文 | 金融系Webサイト(見積もり・申し込み・マイページ等)の案件(二次請け、約2年半)に参画。前半約1年は、旧システムの顧客・契約データを新システムへ移行する作業(数百テーブル・数百万件以上)を担当し、リハーサル3〜4回と24時間以上の本番切り替えで、手順書に沿った移行作業を実行した。後半約1年半は保守改善として、フロント・サーバー側の改修と障害調査・不具合修正の設計・実装・テストを担当し、コードレビューは毎回受けた(フレームワークはObjectWorks)。 |
変えたのは、固有名詞を消したことだけではありません。移行の規模、リハーサルの回数という数字を足しています。客先名を消した分だけ情報量が減るので、その代わりに数字で具体性を補う、というのがこの書き換えで一番意識した部分です。
定量的な実績の書き方でつまずいた話
数字を足そうとしたところで、別の壁にぶつかりました。私は1〜3社目はメンバーとして手を動かす立場で、管理職になったのは4社目からです。「チームの生産性を〇%改善した」「工数を〇日短縮した」といった、比較を前提にした成果の数字は、そもそも手元にありませんでした。
最初は、それらしい表現でごまかそうとしました。「担当範囲での対応漏れゼロを達成」と書きかけたのですが、書いた瞬間に自分で違和感を覚えました。対応漏れがゼロだったことを裏付ける記録を、自分は持っていません。
書いた通りに面接で聞かれたら、根拠を示せずに詰まるのが目に見えていました。これは、スキルシートの記載が面談で踏み込まれた質問に崩れる場面と同じ構図です。説明できない数字を書類に残すことの危うさは、以前にも痛感していたはずでした。
その一文は消しました。代わりに使ったのが、実行した作業量の数字です。
書き直した職務経歴書に使った、3社目の作業量の数字。
ポイント: 「成果」を示す比較の数字がなくても、「実行した量」の数字は誰でも書けます。移行したテーブル数や件数、リハーサルの回数、在籍した期間。これらは誇張ではなく、自分の作業記録から拾えるものです。
成果を無理に誇張するより、実行した量を正直に積み上げた方が、後から説明を求められたときに崩れません。
これは地味な結論ですが、比較できる成果の数字が手元にないときの、意外と現実的な落としどころだと思っています。
4社分の経歴をどう1本にまとめるか
結論直近であるほど、今後も使いたい技術に近いほど厚く書きます。私はこの配分で4社分を1本にまとめました。
もう一つ悩んだのが、4社分の経歴を1本の職務経歴書にどう収めるかです。会社名の欄は1つで済みます。私が雇用契約を結んでいるSES企業は1社だけなので、そこは一度書けば終わりです。
問題は、その下に4つの現場をどう並べるかでした。同じ粒度で全部書くと、1つの現場につき数行しか割けず、内容が薄まります。
| 現場 | 厚み | 書いた内容 |
|---|---|---|
| 1社目(研修後の配属4か月) | 1〜2行に圧縮 | Javaの業務システム開発に参加、とだけ記載 |
| 2社目(三次請け・約1年半) | 3〜4行 | 設計〜単体テストを担当し、在籍中に基本情報技術者を取得したことを書いた |
| 3社目(二次請け・約2年半) | 最も厚く | 担当範囲・工程・移行の規模まで具体的に記載 |
| 4社目(二次請け・現職) | 厚め | 「現在進行形」であることが分かる書き方にし、管理職として3〜5名を見ていることも記載した |
2社目は、「三次請けで業務システム開発に参画。設計・実装・単体テストを担当。在籍中に基本情報技術者を取得」という3行に収めました。資格取得の一文だけは、他の現場の行にはない要素として残しています。
短い在籍期間ほど、書く内容に悩みました
在籍期間が短い現場ほど、実は書くことに悩みました。現場が変わってきたのは、そのほとんどが契約終了・案件終了による異動で、自分の意思で区切りをつけたわけではありません。
1社目のように4か月で終わった現場は、経験として語れる材料が少ないのが正直なところです。無理に厚く書くより、ここは簡潔に済ませて、経歴が細切れに見える印象を薄める方を選びました。
現在進行形の4社目をどう書くか
4社目は今も在籍中なので、期間の終わりが決まっていません。他の3社と同じ書き方をすると「〜まで担当」という締めの表現が使えず、書き方に迷いました。
最終的には、在籍期間を「2025年〇月〜現在」と表記し、担当内容は「〜を担当している」と現在形で書くことにしました。実績も、確定した成果ではなく、現在取り組んでいる作業の範囲として書いています。
書いていて感じたのは、在籍中の現場は成果を確定させにくいということです。契約が続いている以上、今のところの到達点しか書けず、3社目のように「担当を完了した」と言い切れる強さがありません。
この違いは、直近の現場を厚く書きつつ書きぶりのトーンを変える、という工夫で埋め合わせました。
業務知識ではなく、覚え方の型を書きました
3社目で覚えた金融系の業務知識そのものは、現場を離れた時点でほとんど使い道がなくなりました。これは職務経歴書に書いてもあまり意味がありません。
代わりに書いたのは、初見の業務ドメインをどう覚えたか、という進め方の部分です。移行対象のデータについて、資料を読み込み、不明点は関係者に確認を取りながら一つずつ整理していく、という進め方をしていました。
職務経歴書に書いた一文
この動き方を、職務経歴書には「未経験のドメインでも、資料の読み込みと関係者への確認を通じて内容を整理できる」という一文に圧縮しています。
ドメイン固有の知識は持ち出せなくても、覚え方の型は次の現場でも通用する、という考え方です。
なお、今回職務経歴書を書きながら、転職以外の選択肢も一応頭をよぎりました。以前、フリーランス独立した場合の手取りを試算したことがあり、その時の数字を思い出しながら、正社員転職とどちらが今の自分に合うかを比べてみました。
結論はまだ出ていません。今回は職務経歴書を書くところまでしか進んでいないというのが正直な状況です。
面接で会社名を聞かれたら、という準備
ここまで書いて、まだ実際にどこにも応募していません。面接を受けた経験もありません。この記事は、内定を取った成功体験ではなく、書類を準備している段階の実体験として書いています。
それでも、面接で「担当した客先はどちらですか」と聞かれる場面は、いずれ来ると想定しています。そのときにどう答えるかは、職務経歴書を書きながら一緒に考えました。
| 聞かれそうな質問 | 準備した答え方 |
|---|---|
| 担当した客先の業種は | 業種・規模までは具体的に答える |
| なぜ社名を明かせないのか | 誓約書・秘密保持契約があるためと説明する |
| 案件の規模感は | 人数・期間・自分の担当範囲は数字で答える |
| 一番大変だった場面は | 固有名詞を使わなくても、状況と自分の対応は具体的に話せる |
想定しているのは、「守秘義務の関係で具体的な社名は差し控えますが」と前置きした上で、業種・規模・担当範囲は具体的に話す、という受け答えです。たとえば案件の規模感を聞かれたら、「二次請けの立場で、数百テーブル・数百万件以上のデータ移行を、自社は私一人の移行チームで担当していました」と答える、というところまで自分の中で台本を作りました。
実際にその通り聞かれる保証はありませんが、答え方を一度言葉にしておくだけで、当日慌てずに済むはずだと考えています。
副業の可否を確認したときに客先のNDAの条項を読み直した経験があり、あのとき確認した「何が禁止されていて何がそうでないか」の線引きの感覚が、今回もそのまま応用できると感じています。
会社名を隠すことと、話す内容を薄くすることは、本来は別の話です。社名を伏せた上でも、担当範囲・工程・数字は具体的に話せるはずだと、書類を作りながら自分に言い聞かせています。これが実際の面接で通用するかどうかは、応募してみないと分かりません。
応募の前に、書いた経歴書が実際の求人に対してどう読まれるかを確かめたいなら、転職エージェントに見てもらう方法もあります。客先常駐から離れる行き先として社内SEを考えているなら、社内SEに絞ったエージェント(社内SE転職ナビ
など)もあります。
まとめ
SESの職務経歴書で会社名が書けないという悩みの正体は、多くの場合「自社」と「客先」の混同です。自社の名前は書けます。書けない、あるいは書かない方がいいのは、客先の名前とプロジェクト名の方です。
- 線引きの目安 判断に迷ったときは、経済産業省が示す営業秘密の3要件(有用性・秘密管理性・非公知性)を思い出すと整理しやすくなります。固有名詞は秘密として扱われやすく、業種・規模・技術スタックは扱われにくい、という感覚です
- スキルシートとの違い 期間・技術スタック・担当工程といった事実は転記できますが、成果の見せ方は書き直す必要があります。比較の数字を持っていなくても、実行した作業量の数字なら誰でも書けます
- 4社分のまとめ方 全部を同じ粒度で書くと薄まります。直近であるほど、今後使いたい技術に近いほど厚く書く、という配分で私は1本にまとめました。在籍中の現場は、成果を確定させず現在形で書く、という書き分けも必要でした
そして、これはまだ転職を成功させた話ではありません。職務経歴書を書き上げたところまでで、応募も面接もこれからです。
同じように会社名の欄で手が止まっている方に伝えたいのは、その手の止まりは書き方が分からないからではなく、自社と客先の区別がついていないだけかもしれない、ということです。
そこさえ整理できれば、書けることは思っているより多く残っています。




