面談の直前に営業から共有された自分のスキルシートを見て、担当工程の欄が自分の書いたものより一段広くなっていることに気づきました。

SESエンジニアとして5年以上、4社の客先常駐を経験する中で、スキルシートはこれまで5回ほど提出しています。書いているのは自分ですが、客先の手元に届く版が同じものだとは限りません。

今回は、経歴に手が入る仕組みと、その盛りが実際にはどこまで効いてどこから効かなくなるのかを、実体験からお伝えします。

この記事で分かること

  • 自分が書いた版と、客先に提出されていた版で何が違っていたか
  • 営業が経歴に手を入れる背景にある、要員を通す側の事情
  • 盛りが効くのは面談のどこまでで、どこから効かなくなるのか
  • 入場した後にギャップが表面化すると、実際に何が起きるか
  • 会社から経歴の捏造を指示されたとき、従う義務はあるのか(判決の報道をもとに)
  • 自分のスキルシートを確認するための具体的な手順
目次
  1. SESのスキルシートは盛られるのか、5回提出して分かったこと
  2. 自分が書いた版と、客先に出た版は別物でした
  3. 担当工程の欄が「基本設計〜」に広がっていた
  4. 営業の説明には一応の理屈がありました
  5. 自分で書く時点から、線引きは曖昧です
  6. なぜ経歴に手が入るのか、要員を通す側の事情
  7. 単価の見え方にも効いています
  8. 面談で崩れる境目はどこにあるか
  9. 踏み込まれた質問には正直に答えるしかありません
  10. 正直に答えても、案件は決まりました
  11. 取り繕うという選択肢も、その場にはありました
  12. 補足:面談そのものが論点になる場合もあります
  13. 入場した後に効いてくるのは、期待値のズレです
  14. 「盛り」には段階があります
  15. 経歴詐称として問題になるのはどこからか
  16. 会社から経歴詐称を指示されたら、従う義務はあるのか
  17. 判決が違法と判断した指示の中身
  18. 指示されても従う義務はありません
  19. 自分のスキルシートを確認するための4つの手順
  20. まとめ

SESのスキルシートは盛られるのか、5回提出して分かったこと

結論露骨な嘘ではなく、書いてある事実の範囲がじわりと広がる形で手が入ります。

私の経験の範囲では、露骨な嘘が書かれていたことはありません。やっていない言語をやったことにされていたとか、在籍したことのない現場が並んでいたということはありませんでした。

その代わりに起きていたのは、書いてある事実の範囲がじわりと広がる、という種類の変化です。担当した工程の幅、経験年数の刻み方、案件の規模感。

どれも一つひとつは「そう書けなくもない」という水準で、真っ赤な嘘だと指摘するには足場が弱い。この曖昧さこそが、スキルシートという書類の性質だと思っています。

検索するとこのテーマの記事は山ほど出てきますが、大半は「経歴詐称を強要する会社からは逃げましょう」という話に着地します。それはそのとおりです。ただ、そこまで露骨ではない、日常的に起きている広げ方については、あまり書かれていません。

自分が書いた版と、客先に出た版は別物でした

スキルシートは、現場が変わるたびに自社の共通フォーマットに書き直して営業に送ります。保有資格、使える言語とその年数、経験した工程、参画した案件の概要。書式は会社によりますが、項目立てはどこも似たようなものです。

送った後、それがどう扱われるかを見る機会は普段ありません。営業が客先に提示し、書類が通れば面談の連絡が来る、という流れなので、提出済みの版を自分で確認する場面が業務の中に組み込まれていないからです。書類が客先に届くまでの経路と、盛りが効く範囲は次のとおりです。

  1. 自分自社のフォーマットで書く
  2. 営業事実の範囲を広げることがある
  3. 客先の書類選考条件に届かないと面談に呼ばれない
  4. 面談判断の中身を聞かれると崩れる
  5. 入場後成果物で確かめられる
スキルシートが客先に届くまでと、盛りが効く範囲

担当工程の欄が「基本設計〜」に広がっていた

3社目の面談の直前、たまたま営業から、客先に提出済みの版を共有してもらったことがあります。面談の受け答えを揃えておくため、という趣旨だったと思います。開いてみて、自分が書いた内容と違っていることに気づきました。

項目自分が書いて営業に送った版客先に提出されていた版
担当工程詳細設計・製造・単体テスト基本設計〜単体テスト
経験年数実際に触っていた年数一部の言語が長めの表記
案件の記載自分の担当範囲を中心に記述プロジェクト全体の規模が前面に

一番はっきり変わっていたのは、担当工程の欄です。私が書いたのは詳細設計から下の工程だけでしたが、提出されていた版は基本設計から始まっていました。一段上の工程に手が届いている人として、客先には見えている状態です。

営業の説明には一応の理屈がありました

その場で営業に確認しました。返ってきたのは、次のような趣旨の説明です。

私

担当工程の欄が、自分が書いたものより広がっているようですが。

自社の営業

この規模の案件に入っていれば、基本設計にも関与しているとみなせますので。

悪びれる様子はなく、後ろめたいことをしているという空気もありませんでした。業務上の通常運転として処理されている、という感じです。

理屈が通っていないわけでもありません。ウォーターフォールの案件では、基本設計の成果物レビューに下流の担当者が同席することがあります。設計の意図を確認する場に居合わせていたのは事実なので、関与という言葉の幅を広く取れば、嘘とは言い切れない。

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私はそこで強く反論しませんでした。今振り返っても、押し返すための言葉を持っていなかったというのが正直なところです。書類上の表現をめぐって営業と交渉するという発想自体が、当時の自分にはありませんでした。

自分で書く時点から、線引きは曖昧です

営業だけを問題にするのは、たぶん公平ではありません。自社のフォーマットに自分で書き込む時点で、すでに同じ迷いが発生しているからです。

項目書き手が迷うところ
担当工程担当した機能の単体テストのために、隣の機能の仕様書を読み込んで挙動を確認した期間があったとして、これを「担当した」と書くのか。明確な基準はなく、書かなければ経歴が薄く見え、書けば少し広がる
経験年数ある言語を業務で使った期間には、毎日書いていた月と、月に数回触った程度の月が混ざっている。合算して何年と書くのはどの現場でも普通だが、実働の密度は表現されない

私はこの手の判断を、そのときの気分に近い感覚で処理していました。

つまり、書き手の側にも解釈の幅が最初から組み込まれている書類です。営業がやっているのは、その幅をもう一段だけ広げる操作にすぎません。質的にまったく別のことをやっているというより、同じ方向の延長線上にある、というのが今の私の見方です。

なぜ経歴に手が入るのか、要員を通す側の事情

営業個人の資質の問題として片づけると、この現象は理解できません。手が入る理由は、要員を客先に通すまでの経路の形にあります。

SESの案件では、客先が求める要件が先にあり、そこに合う人を探す形で話が進みます。

二次請け・三次請けの立場だと、その要件は元請けを経由して降りてくるので、実際の現場が本当に必要としている水準より、書面上の条件が硬く書かれていることがあります。基本設計の経験何年以上、といった条件がそれです。

営業から見ると、書類の段階で条件に届いていない人は、面談の場にすら呼ばれません。実力があるかどうかを見てもらう前に、書式で落ちる。だから、事実の解釈が許す範囲まで表現を広げて、まず面談のテーブルに載せようとします。

ポイント: スキルシートの盛りは、客先をだますためというより、書類選考という関門を通すために起きています。だから広げられるのは「経験年数」「担当工程」「案件規模」といった、書式のフィルタに引っかかる項目に集中します。

逆に、面談で必ず具体的に聞かれる部分は、盛っても意味がないので手が入りにくい。この非対称を知っておくと、自分のシートのどこが書き換わりやすいかの見当がつきます。

このあたりの力関係は、面談で案件を選べるかどうかという話と地続きです。エンジニア本人は、自分がどう提示されているかを知らないまま、選ばれる側として面談の場に置かれます。

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単価の見え方にも効いています

もう一つ、書類の見え方が影響する先があります。単価です。

客先が要員に払う単価は、その人がどの水準の仕事をできると見なされたかで決まります。基本設計から見られる人と、詳細設計以降の人では、提示される金額のレンジが変わる。書類の記載が一段上に寄れば、単価の交渉が始まる位置も一段上になります。

この構造だと、経歴を広げることで得をするのは、まず自社です。単価が上がっても、それが本人の給与にそのまま反映されるとは限りません。単価と給与が別々の理屈で動いている以上、書類上の背伸びの果実は、必ずしも背伸びした本人の手元に届きません。

だからといって、営業が私腹を肥やすためにやっている、という話にはしたくありません。要員を通せなければ案件が成立せず、案件が成立しなければ自分の席もない。誰も嘘をつく気はないのに書類だけが少しずつ膨らむという力学が、この構造には最初から埋め込まれています。

面談で崩れる境目はどこにあるか

結論盛りが効くのは面談に呼ばれるところまでです。判断の中身を問われた時点で、書類の記載は支えにならなくなります。

では、広げられた経歴はどこまで通用するのか。私の経験では、境目は驚くほどはっきりしていました。

踏み込まれた質問には正直に答えるしかありません

4社目の面談で、客先のリーダーから直球で聞かれたことがあります。

客先のリーダー

基本設計はどの範囲を担当されましたか?

私

担当は詳細設計以降で、基本設計は成果物のレビューに同席した程度です。

シートには基本設計から書かれています。ただ、実際にやっていないことを、やったこととして説明することはできません。設計方針をどう決めたか、どんな検討をして何を捨てたかを聞かれれば、その場で答えに詰まります。

書類と食い違うことを自分の口から言ったわけですから、気まずくならないほうがおかしい場面です。ただ、実際にはそこで空気が固まることはありませんでした。相手はそうですかと受けて、次の質問に移りました。

正直に答えても、案件は決まりました

そして、その案件はそのまま決まりました。面談の後に営業から何か言われることもありません。

これが、この一件でいちばん意外だった部分です。盛りが効いていたのは、面談に呼ばれるところまででした。面談の中身では、まったく効いていない。むしろ、書類の記載を守ろうとして曖昧に答えていたら、そちらのほうが印象を悪くしていたはずです。

客先のリーダーの側から見ても、この構図は分かっているのだと思います。二次請け・三次請けの要員のスキルシートが、多少なりとも広めに書かれていることは織り込み済みで、だから面談で自分の目で確かめている。

書類の記載を尋問しているのではなく、実際にどこまでできる人なのかを測っている。

面談での質問盛りは
経験年数、参画した案件の規模、使ったことのある技術の名前を並べる質問崩れない
「その工程で何を判断したか」「なぜその方式にしたか」という、判断の中身を問う質問崩れる

崩れた後にどうなるかは、正直に答えたか、取り繕ったかで変わります。

取り繕うという選択肢も、その場にはありました

念のため書いておくと、あの場面で正直に答えたのは、誠実さを貫いたというより、取り繕う技術がなかったからです。基本設計を担当したふりをして話を続けるには、その工程で実際に何を検討したかを語れる必要があります。持っていない材料で話を組み立てれば、二つ目か三つ目の質問で行き詰まります。

もし曖昧な言い方でその場を流していたら、どうなっていたか。おそらく面談自体は通ったと思います。客先もその一回で見抜けるとは限りません。ただ、通った先で待っているのは、基本設計ができる人として扱われる現場です。

そこから先は、逃げ場が減っていきます。担当を外してもらうにも、入場して数か月経ってからでは、初週に言うのとは重みが違います。面談で背伸びを引っ込めるコストが一番安く、その後は日ごとに高くなる、というのがこの構図の性質だと思っています。

補足:面談そのものが論点になる場合もあります

SESは準委任契約が建前なので、客先が面談で要員を見ること自体は普通に行われています。ただ、実態が派遣に近いと、話が変わってきます。

SESに直接当てはまる規定ではありません。常駐先の指揮命令で動いているなど、実態が派遣に近い場合に問題になり得る論点がある、という程度の話です。私の現場がどちらかを断定する材料は持っていません。

入場した後に効いてくるのは、期待値のズレです

面談を乗り切れば終わり、という話でもありませんでした。広げられた経歴の影響がいちばん実害として出るのは、現場に入った後です。

3社目に入った初日

詳細設計は慣れているんですよね、と言われました。シートの記載を前提にした声かけです。

そこで実態と違う前提のまま受け取ってしまえば、できない仕事を抱えたまま数週間が過ぎることになります。1週間ほどのうちに、経験のない範囲は経験がありません、と自分から伝えました。伝えるまでの数日は落ち着かない気分でしたが、後になるほど言い出しにくくなることは分かっていました。

その現場には約2年半いました。前半は手順書に沿ったデータ移行の作業、後半は保守改善で、担当は依頼ごとに割り振られる形でした。現場で担当が決まっていく様子は、別の記事にも書いています。

ここは正直に書いておきたいところです。広げられた経歴は、入場後に期待値のズレとして返ってくるという面があります。

シートの記載で作られた期待値は、早い段階で自分から修正しておくほど、ズレが小さいうちに揃え直せます。実力を過大に見せた代償は、後になるほど払いにくくなります。

3社目で見た、別の会社のメンバーの例

経験年数は長いと周囲から聞いていた人でした。ところが、コードレビューで基本的な指摘が続き、1か月ほどで簡単な修正作業中心の担当に切り替わっていました。本人に事情を聞いたわけではないので、シートがどう書かれていたのかも分かりません。

この例から私が受け取ったのは、年数は面談を通る材料になっても、手を動かす現場では日々の成果物で確かめられる、ということです。書類と実力の差は、コードや設計書という形で毎日表に出ます。

もし初日にそのまま設計書を受け取って、数週間ごまかしながら進めていたら、どうなっていたかは分かりません。ただ、下流工程の遅れは、結合テストのフェーズまで表に出ないことがあります。そこで発覚していたら、担当を調整する程度では済まなかったはずです。

「盛り」には段階があります

ここまで「広げる」と一括りにしてきましたが、実際には程度の違いがあります。私が見聞きした範囲で、4段階に分けて整理します。

段階自分が見た例面談・入場後にどこで崩れるか
担当工程の広がり詳細設計以降が「基本設計〜」になっていた(3社目)面談で「何を判断したか」を聞かれた時点で崩れる。正直に答えれば案件は決まった
経験年数の上乗せ一部の言語が長めの表記になっていた面談では通る。入場後に成果物のレベルで確かめられる(別会社のメンバーの例)
未経験技術の記載自分のシートでは見ていない面談で具体的な使い方を聞かれると答えられない。入場後は初週で露見しやすい
経験そのものの捏造自分の周囲では見ていない面談でも入場後でも崩れやすいうえ、次の章のとおり指示した側の責任も問われ得る

上の2段階は、私が実際に目にした「事実の範囲が広がる」タイプです。下の2段階は、書いてあることが事実ではなくなる領域で、性質が違います。自分で見ていない分、崩れ方は私の見立てです。

経歴詐称として問題になるのはどこからか

結論問題になりやすいのは、必須要件そのものについての虚偽です。ただし、自分のシートがどう評価されるかまでは私には判定できません。

ここまで書いてきた「広げる」は、法的にどう位置づけられるのか。気になったので調べました。

一般的な枠組みとして、最高裁第一小法廷の平成3年9月19日判決(炭研精工事件)があります。雇用契約は信頼関係に基礎を置く継続的な関係であり、企業秩序の維持に関係する事項については、労働者に真実を申告する義務がある。そのうえで、最終学歴の詐称を含む理由での懲戒解雇を有効とした、という内容です(出典: 愛知労働局)。

懲戒解雇が認められるには、就業規則に懲戒事由として定めがあることが前提になります。そのうえで「その詐称が事前に発覚していれば採用しなかった」と言える重大なものに限られる、という枠組みで判断されます。職歴では、結論が分かれた裁判例もあります。

必須スキルについて虚偽の職歴を記載していた事案で解雇を有効とした裁判例がある一方、短期アルバイトの経歴を記載しなかった事案では無効とされた裁判例もある。

職歴の詐称と解雇に関する解説(要旨)|出典: 経歴詐称を理由に辞めさせることはできる?|弁護士法人ALG

この枠組みの前提

これが雇用関係、つまり自分と自社の間の話だという点に注意が必要です。SESのスキルシートは、自社と客先の間の企業間取引で使われる書類なので、この枠組みがそのまま当てはまるわけではありません。私は法律の専門家ではないので、自分の現場のシートがどう評価されるかを判定することはできません。

それでも、この枠組みから読み取れることが一つあります。必須要件そのものについての虚偽は、他の項目とは扱いが違うということです。案件の必須スキルとして挙がっている技術を、触ったこともないのに書く。この種の記載は、工程の幅を一段広げるのとは質的に別の話になります。

自分のシートで確認すべきなのは、そこだと考えています。表現の幅の問題なのか、それとも要件そのものについての虚偽なのか。前者は業界の慣習の範囲として飲み込む余地がありますが、後者は飲み込まないほうが安全です。入場後に表面化したとき、自分が説明を求められる立場になり得るからです。

会社から経歴詐称を指示されたら、従う義務はあるのか

ここまでは、営業が事実の範囲を広げる話でした。これとは別に、会社が経歴そのものを作るよう本人に指示してくるケースがあります。私自身は経験がありませんが、近年、これを争った裁判の判決が報じられています。

以下は新聞・ニュースサイトの報道を通して確認した内容で、判決文そのものは読んでいません。

時期裁判所報じられた内容
2024年(令和6年)7月19日東京地裁会社の指示を違法な業務命令と判断し、代表者らに賠償を命じた
2025年(令和7年)2月6日東京高裁賠償額が約769万円(遅延損害金を含めると約872万円)に増額
2026年3月の報道最高裁被告側の上告を退け、高裁判決が確定

判決が違法と判断した指示の中身

報じられた事案の要点は次のとおりです。

  • SES会社が「未経験OK・月給30万円保証」などと募集していた
  • 未経験で採用した3人に、約5年の実務経験があるかのようなスキルシートを作らせた
  • そのシートを取引先に提出させた

東京地裁は、この指示を詐欺行為、またはその準備行為への加担を命じる違法な業務命令と判断しました(出典: 労働新聞)。二審の東京高裁で賠償額が増え、その後に高裁判決が確定したことは、弁護士ドットコムニュースが報じています(出典: 弁護士ドットコムニュース)。

ここで注意したいのは、この事案が私の経験とは別物だという点です。営業が担当工程を「関与したとみなせる」範囲で書き換えるのと、未経験者に5年分の経験を作らせるのとでは、事実の土台がまるで違います。前者はグレーな解釈の幅の話、後者は無いものを有ると書かせる話です。

指示されても従う義務はありません

違法な業務命令であれば、従う義務はありません。そのうえで、実際に動けるかどうかは別問題だと思っています。私も営業に押し返せなかった側なので、立場の弱い新人が断るのは簡単ではないはずです。

現実的にできることは、次の3つです。

  • 断る:経験のない年数や技術は書けないと伝える。事実の範囲なら書き直すと添えると角が立ちにくい
  • 記録を残す:指示のメールやチャット、修正前後のスキルシートを手元に保存しておく
  • 相談する:都道府県労働局や労働基準監督署に設けられている総合労働相談コーナーなど、公的な窓口がある

この判決で印象に残るのは、責任を問われたのが指示した会社側だったことです。指示された本人が悪いという話ではありません。それでも、記録がなければ「指示された」こと自体を示しにくくなるので、記録だけは先に押さえておく価値があります。

自分のスキルシートを確認するための4つの手順

現場のメンバーの立場でできることは限られますが、何もできないわけではありません。私がこの一件の後にやるようになったことを挙げます。

  1. 客先に出す版を共有してもらう面談の受け答えを揃えたいので確認させてほしい、と頼めば、断られる理由がありません。実際、私はこれで断られたことがありません。
  2. 差分だけを見る全文を読み比べる必要はありません。担当工程、経験年数、案件の記載の3か所だけ見れば、書き換わっている箇所はほぼ拾えます。
  3. 説明できるかどうかで線を引く広がった記載について、面談で聞かれたら自分の言葉で説明できるか。できないなら、その一点だけ営業に戻してもらいます。
  4. 面談では書類ではなく実態を答えると決めておく書類を守ろうとすると、その場で答えが濁ります。事前に方針を決めておけば、踏み込まれても迷いません。

3番目が実際の分かれ目になります。全部を元に戻せと要求するのは、営業の側にも事情がある以上、あまり現実的ではありません。

一方で、面談で説明できない記載を一つだけ指して直してもらうのは、営業にとっても案件を落とさないための話になるので、話が通りやすくなります。

これは、資格欄を更新して提出しただけで何も起きなかったときに学んだことの応用でもあります。書類を出して終わりにせず、その後どう扱われるかまでを自分の視野に入れておかないと、何が起きているのかすら分からないままになります。

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まとめ

SESのスキルシートは盛られるのか。私の経験では、露骨な嘘というより、事実の範囲がじわりと広がる形で手が入っていました。担当工程が一段上から始まっていたり、経験年数の刻みが長めになっていたり、という水準です。

その盛りが効いていたのは面談に呼ばれるところまででした。書類はあくまで面談のテーブルに載るための切符で、そこから先を決めているのは書類ではない、というのが5回提出してきた実感です。

むしろ厄介なのは、入場した後に残る期待値のズレのほうです。私の場合は、入場して早い段階で自分から経験のない範囲を伝えました。書類で作られた期待値は、後になるほど修正しにくくなるからです。

なお、事実の範囲を広げる話と、経験そのものを作れと指示される話は別物です。後者は判決でも違法な業務命令とされているので、断る・記録を残す・公的な窓口に相談する、という順で動いてください。

同じ立場の方に勧めること

  • 客先に出る版を一度共有してもらう
  • 担当工程・経験年数・案件の記載の3か所を見る
  • 面談で説明できない記載が一つでもあれば、そこだけ営業に戻す

自分が知らないところで作られた期待値を背負って現場に立つより、そのほうがはるかに気が楽です。