情報通信業で働く人のうち、実際にテレワークをしている人は7割を超えています。私はその情報通信業のエンジニアですが、SESで4社の客先常駐を経験して、リモートの日数は現場ごとに0日から在宅中心まで、かなりばらつきました。
今回は、SESのリモートワークの日数が現場ごとに違う理由がどこにあるのかと、参画前にそれを見分けるために何を聞けばいいのかをお伝えします。
この記事で分かること
- 4社の現場でリモートの日数がどう違ったか
- リモートの可否を最終的に決めているのは誰なのか
- 開発環境への接続方法が、リモートの上限を決めること
- 同じ会社の同じ現場でも、時期によって日数が変わった話
- 面談で「リモートは可能ですか」と聞いても分からない理由と、代わりに聞くべき4つの質問
目次
SESのリモートの日数が現場ごとに違うのは、決める人が自社にいないからです
結論私の実感では、日数を決めているのは自社ではなく、常駐先の客先や、その上の元請けの規程です。だから、同じ会社に所属していても、現場が変わるたびに日数が変わります。
自社にリモート勤務の制度があっても、常駐している現場でその規程が使われるとは限りません。働く場所は、その現場を運営している客先で決まり、二次請け以下では元請けの規程がさらに上から降りてくることがあります。
だから、リモートで働きたいという希望を自社の営業に伝えても、話が進まないことがあります。営業の側でも決められない場合があるからです。ここを理解しないまま自社に掛け合い続けると、動かないものを押し続けることになりかねません。
業界の7割が在宅している中で、私の現場は0日から在宅までばらつきました
数字を確認しておきます。国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査によると、業種別の雇用型テレワーカーの割合は「情報通信業」が最も高く、次点を大きく引き離しています。
業種別の雇用型テレワーカーの割合。出典: 令和7年度 テレワーク人口実態調査|国土交通省(PDF)
全業種平均が25.2%なので、情報通信業がいかに例外的な業種かが分かります。一方、私がこれまで常駐してきた現場はこうでした。
| 現場 | 立場 | リモートの扱い |
|---|---|---|
| 1社目 | — | 0日。研修直後で、リモートの対象外だった |
| 2社目 | 三次請け | 週1〜2日。VPNで自宅から接続。私物PCは客先に持ち込み不可、スマホは可 |
| 3社目 | 二次請け | 週1〜2日。VPNで自宅から接続。インターネットは一部制限、データの社外持ち出しは禁止 |
| 4社目(今の現場) | 二次請け | 最近はほぼフル在宅。もともとは週1出社の予定だった |
74.1%という数字と、この表を並べると、同じ情報通信業の中でも現場によって大きく違うことが分かります。1社目の0日から、4社目の在宅中心まで、日数は現場と時期で動きました。この差がどこから来るのかを、以下で分解していきます。
リモートの可否を決めているのは誰か
私が現場を移るたびに感じてきた範囲では、決定権は階層状に重なっていて、下に行くほど選択肢が減ります。
リモートの可否が降りてくる順
- 元請け規程を定め、客先を経由して降ろす
- 客先降りてきた規程を運用する立場のこともある
- 自社=私自社の制度は、常駐先には及ばないことがある
自社の制度は、現場には効きません
まず自社です。自社にリモートの制度があっても、常駐先で在宅できるかどうかは別の話になることがあります。自社の制度は自社の従業員としての働き方を定めたもので、常駐先でどう働くかは、客先や元請けの運用で決まるからです。
二次請け以下だと、規程がもう一段上から降りてきます
次に客先です。ただ、客先が自由に決めているとも限りません。二次請けの立場だと、元請けの規程が客先を経由して降りてくることがあります。
これは工期が現場の外側で決まる話と同じ構図です。
決定は上流で終わっていて、下流に届くのは結果だけ。誰にどう掛け合えばいいのかという経路そのものが、現場には見えていません。
ポイント: 「客先に交渉すればリモートできるのでは」と考える人もいるかもしれませんが、二次請け以下では、目の前の客先担当者も、上から降りてきた規程を運用しているだけの立場であることがあります。その場合、交渉は意味を持ちにくくなります。
交渉相手が交渉の当事者でない、という状況を先に見抜いておくと、無駄な期待をせずに済みます。
開発環境への接続方法が、リモートの上限を決めます
制度の話より前に、技術的にリモートができるかどうかが決まる部分があります。
2社目・3社目の接続方法
2社目も3社目も、自宅からはVPNで接続する形でした。3社目ではインターネットが一部制限され、データの社外持ち出しは禁止でした。
VPNで接続できる環境が用意されていたから、週1〜2日のリモートが成立していました。逆に、接続の仕組みがなければ、規程がどうであれ在宅では何もできません。接続の仕組みが、リモートの上限を決めているという形になります。
| 環境の置き場所・接続方法 | リモートの見込み |
|---|---|
| 客先のネットワーク内に閉じていて、社外からの接続手段がない | 在宅は基本的に不可能。交渉の余地がない |
| VPNやVDI(仮想デスクトップ)経由 | 接続元の制限次第。自宅から許可されているかがすべて |
| クラウド上にあり、支給端末から接続 | リモートの可能性がある。あとは運用ルールの問題 |
案件を見るときは、この3分類のどれに当たるかを先に確認すると、リモートの見通しが立てやすくなります。
業種だけでは決まりません
金融系と聞くと、在宅は難しそうに思えます。ただ、私の場合は、金融系のWebサイトの現場(3社目)でも、VPNで自宅から接続でき、週1〜2日のリモートができました。インターネットの一部制限やデータ持ち出しの禁止はありましたが、閉じた環境で在宅できない、という現場ではありませんでした。
日数は、時期や立場でも変わります
同じ会社に所属していても、現場だけでなく、時期や立場で日数が変わります。
1社目の0日は、研修直後でリモートの対象外だったためです。
4社目は、もともと週1出社の予定でした。ただ、基本的にフリーアドレスで、出社しても座席がない可能性があるため、出社は控えるようにしていて、最近はほぼフル在宅になっています。
理由は聞いていません(私の理解です)
4社目で出社が減ったのは、座席の都合が大きい、というのが私の理解です。客先の規程が変わったのかどうかは、確認していません。
規程の上では週1出社でも、運用や座席の都合で、実際の日数が変わることがあります。案件を検討するときは、制度の上の日数と、実際の日数を分けて考える価値があります。
出社が前提だと、生活の設計まで縛られます
働く場所の話は、通勤時間の話でもあります。そして客先常駐では、通勤先が自分の意思と関係なく数年おきに変わります。
2社目の客先までの通勤は、片道45〜60分でした。往復では1時間半から2時間になります。リモートの日は、この時間がそのまま手元に残ります。
現場が変われば最寄り駅が変わり、通勤時間も変わります。それでも引っ越して調整するわけにはいきません。次の現場がどこになるか分からないからです。
私は現場で得られないものを業務外の学習で埋めようとしてきたので、この時間の有無は積み上がるものの量に直接効いてきます。
働く場所の条件は、単なる快適さの問題ではなく、そのまま学習時間の条件になっています。
面談で「リモートは可能ですか」と聞いても分からない理由
結論制度には解釈の幅があって答えが曖昧になりやすいのに対し、実績には幅がないからです。聞くなら制度ではなく実績です。
「リモートは可能ですか」と聞くと、「状況次第です」のような答えになりやすく、実際の日数までは分かりません。
ここから言えるのは、制度の有無を聞いても答えは曖昧にしかならないということです。制度は解釈の幅がある一方、実績には幅がありません。だから聞き方を変える必要があります。
参画前に確認しておく4つの質問
現場を自分で選べる立場ではないので、聞いたところで参画するかどうかを決められるわけではありません。それでも、入る前に実態を把握しておけば、入ってからの落差に振り回されずに済みます。
面談・営業に確認するリモートの4つの質問
- 今チームの何人が、週何日リモートしていますか制度ではなく実績を聞きます。数字で答えられなければ、運用されていないか、答える側が把握していないかのどちらかです
- 開発環境にはどう接続しますかVPNか、VDIか、クラウドか。社外からの接続手段がなければ、他の条件が良くてもリモートは実現しません
- リモートの可否はどなたが決めていますか客先の判断なのか、元請けの規程なのか。後者なら現場に交渉の余地はないと考えておきます
- 座席や出社の運用はどうなっていますかフリーアドレスで座席が足りないなど、規程とは別の事情で日数が変わることがあります
このうち1つ目が一番効きます。制度について聞くと解釈の話になりますが、実績を聞くと事実の確認になるので、相手も曖昧に答えにくくなります。今は全員出社です、とはっきり返ってくれば、それはそれで有益な情報です。
聞く相手は使い分けるとよいと考えています。1つ目と4つ目は現場の実態なので面談の場で聞き、3つ目のように契約や規程に関わる部分は、面談の前後に自社の営業へ確認します。面談で聞ける範囲と、営業のほうが詳しい範囲は違う、と考えておくと取りこぼしが減ります。
結局、選べないことは変わりません
正直に書いておくと、これらを確認したところで、私が案件を選べる立場にないことは変わりません。リモートが少ない現場だと分かっていても、提示されたのがその案件なら基本的には入ることになります。
それでも聞いておく意味はあると思っています。参画してから「思っていたのと違う」と分かる状態が、生活の設計に一番響くと考えているからです。週1あると思って通勤時間の前提を組んでいたのに実際は毎日だった、という状態は、単に出社が多いこと以上に負担になりそうです。
期待値を先に現実へ合わせておく。この記事で書きたかったのは、結局そこに尽きます。構造上どうにもならない部分がはっきりしていれば、どうにかなる部分に労力を回せます。
まとめ
SESのリモートの日数が現場ごとに違うのは、私の実感では、自社の制度の問題ではなく、決定権が自社の外にあることが大きいと考えています。要点は次の3つです。
- 決めているのは誰か 私の実感では、可否は客先や元請けの規程で決まっていました。自社にリモート制度があっても、常駐先で在宅できるかは別の話になります
- 接続方法と時期 開発環境への接続方法がリモートの上限を決め、同じ現場でも時期や座席の事情で日数が変わります。私の場合は、1社目0日(研修直後)、2社目・3社目は週1〜2日(VPN)、4社目は現在ほぼフル在宅でした
- 統計とのずれ 情報通信業の雇用型テレワーカーは74.1%という数字が出ていますが、SESの客先常駐は現場ごとにばらつきます。統計と自分の実感が合わないことを、自分の会社の問題として受け取る必要はありません
参画前に何か一つだけ聞くとしたら、今チームの何人が週何日リモートしているか、です。制度ではなく実績を聞けば答えは具体的になりますし、開発環境への接続方法と合わせて確認しておけば、入ってからの落差はかなり減らせます。




