参画前の面談で「通勤費は出ますか」とだけ聞いて、支給される前提で契約してしまったことはないでしょうか。

私はSESエンジニアとして5年ほど、複数の客先常駐を経験してきましたが、現場によってリモート日数が違い、今の現場ではほぼフル在宅のため、交通費を毎日の通勤前提では考えられなくなりました。

今回は、その仕組みと、リモート日が混ざったときに支給がどう動くのかを、確認できた範囲の事実とあわせてお伝えします。

この記事で分かること

  • SESの交通費は、一般に法律上の支給義務がなく会社の規程次第という前提
  • 定期代の現物支給と、出社日数に応じた実費精算の違い
  • 出社頻度が下がると、定期代から実費精算に切り替わる現場がある、という一般的な仕組み(私の今の現場はほぼフル在宅)
  • 通勤手当の非課税限度額が2025年と2026年にどう変わったか(電車通勤とマイカー通勤の違い)
  • 在宅勤務が混ざるとき、交通費の課税関係がどう扱われるか
目次
  1. SESの交通費が出ない理由|支給は法律の義務ではない
  2. 交通費は請求単価に含まれているのか、私は知りません
  3. 客先常駐の交通費支給、定期代と実費精算の違い
  4. 私が経験してきた3つの現場での違い
  5. 交通費のルールを決めているのは自社か客先か
  6. 出社の頻度が下がると、定期代から実費精算に切り替わる現場がある
  7. 出社の頻度が下がると、支給方式が見直されることがある
  8. 通勤手当の非課税限度額はいくらまでか|2025年・2026年の2段階改正
  9. 2025年4月と2026年4月、マイカー通勤の区分が変わった
  10. 在宅勤務が混ざると交通費の課税関係はどうなるのか
  11. 現場が変わるたびにルールが変わることへの向き合い方
  12. まとめ

SESの交通費が出ない理由|支給は法律の義務ではない

結論通勤手当は、一般に法律で支給が義務付けられていないからです。会社の規程次第で、出ない会社もあります。

通勤手当は、一般に法律で支給が義務付けられた手当ではないと説明されています。支給するかどうか、いくら支給するかは、各社が就業規則(賃金規程)などで決める事項です。

ただし、支給すると決めた以上は、金額や計算方法を就業規則(賃金規程)に定めておく必要があるというのが一般的な整理です。「出すか出さないか」は会社の自由でも、「出す」と決めたあとは会社が勝手に運用を変えられるわけではありません。

つまり「SESだから交通費が出ない」という単純な話ではなく、「そもそも通勤手当は会社が規程で決める手当である」というのが出発点になります。

私の場合

これまで経験した現場ではすべて何らかの形で交通費が支給されてきましたが、それは会社の規定がそうなっていたからであって、法律が保証してくれていたわけではありません。

この点は、意外と知られていないと感じています。交通費は会社の規程が決めるものなので、もし今の現場で交通費が出ていないなら、まず確認すべきは法律ではなく、自社の就業規則(賃金規程)と雇用契約書です。

なお、現場から現場への移動や、客先を離れて自社に出向く帰社日の交通費は、毎日の通勤費とは別の論点になります。こちらも扱いは会社の規程次第なので、気になる方は規程の該当箇所を確認してみてください。

交通費は請求単価に含まれているのか、私は知りません

もうひとつ、正直に書いておきたいことがあります。

私が確認できていないこと

自社が客先に請求している単価の中に、私の交通費ぶんが上乗せされているのか、それとも会社が単価とは別に自腹で負担しているのか、私は今も知りません。

以前、リーダーや営業から年間単価490万円(月に約41万円)だと聞いたことを書きましたが、あのときも交通費の扱いについては何の説明もありませんでした。契約書を見られる立場でもないので、確かめようがないというのが実態です。

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交通費が現物支給か実費精算かという話題は社内でよく出てきますが、その原資がどこから出ているのかまで話が及んだことは一度もありません。この不透明さは、単価そのものを教えてもらえない構造とよく似ています。数千円、数万円という小さな金額だからこそ、誰も突っ込んで聞かないまま流れていくのだと思います。

還元率の観点でいえば、会社が負担している交通費は、単価と給与の差額のうち「見えない費用」に含まれている可能性があります。ただ、実際にどう計上されているかは確認できていません。月1万円前後の交通費でも、年間で見れば十数万円になります。単価と手取りの差を考えるときは、頭の片隅に置いておく価値はあります。

客先常駐の交通費支給、定期代と実費精算の違い

交通費の支給方法には、大きく分けて2つのパターンがあります。ひとつは定期券代をそのまま現物支給する方法、もうひとつは出社した日数に応じて実費を精算する方法です。違いは次のとおりです。

定期代の現物支給実費精算
支給の形6か月定期をまとめて会社が用意するか、その相当額を渡す形が一般的ICカードの運賃記録や出社日数の申告をもとに、月ごとに支給額を計算
毎月の金額固定出社日数が変われば支給額も変わり、毎月同じ金額にはならない
本人の手間毎月申請する手間はほとんどない申請の手間が増える
会社側の利点一度手続きすれば半年間は何もしなくていいので、管理の手間が小さい出社しなかった日のぶんまで払わずに済む

私が経験してきた3つの現場での違い

自分が経験してきた現場を並べると、リモート日数だけでは支給方式が決まらないことが分かります。以下は各現場のリモート日数と交通費の支給方式です。

現場リモート日数交通費の支給方式
2社目週1〜2日(VPN)、通勤は片道45〜60分6か月定期代を現物支給、金額は固定
3社目週1〜2日(VPN)同様に6か月定期代を現物支給
4社目(今の現場)もともと週1出社の予定。2026年10月時点ではほぼフル在宅確認できていません(出社をほぼしていないため、通勤を前提にした金額は書けません)

2社目と3社目は週1〜2日リモートでも定期代のままでした。リモート日数が同じくらいでも、会社の規程や現場の体制によって、見直しが入る現場と入らない現場に分かれるということです。リモート日数を決めていたのは、客先や元請けの規程だというのが私の実感です。

今の現場は、もともと週1出社の予定でしたが、2026年10月時点ではほぼフル在宅です。この働き方では、毎日の通勤を前提にした定期代の考え方が当てはまりにくくなります。

交通費のルールを決めているのは自社か客先か

私が経験した範囲では、決めているのは自社です。客先の条件が見直しのきっかけになることはあっても、決めるのは自社の就業規則です。

ここで一つ、リモートの可否と比べておきたい違いがあります。リモートできるかどうかは、開発環境の置き場所やセキュリティ規程など、客先側の事情で決まることがほとんどでした。

一方、交通費の支給方式は、私が経験した範囲では基本的に自社の就業規則の話であって、客先が直接口を出してくる話ではありません。もちろん、客先常駐という働き方自体が前提にある以上、リモート日数という客先側の条件が変わったことが、結果として自社の交通費規定を見直すきっかけになる、という間接的なつながりはあります。

ただ、最終的に「定期代にするか実費精算にするか」を決めるのはあくまで自社です。ここを混同して客先に交通費の相談を持ちかけても、まず取り合ってもらえません。困ったときにまず声をかけるべき相手が誰なのかを、切り分けておく価値はあると思います。

出社の頻度が下がると、定期代から実費精算に切り替わる現場がある

今の現場は4社目にあたる案件(二次請け、保守・改修)で、もともとは週1出社の予定でした。2026年10月時点では、ほぼフル在宅です。

基本的にフリーアドレスで、出社しても座席がない可能性があるため、出社は控えているというのが実態です。

そのため、この現場については「毎日通勤する前提」の交通費の金額を書ける状態ではありません。支給方式の細かい中身も、記事に書けるほど確認できていないので、ここでは書かずにおきます。

出社の頻度が下がると、支給方式が見直されることがある

定期代を6か月分先払いしても、出社しない日のぶんは無駄になります。会社としては、出社日数に応じた実費精算に切り替えたくなる、というのが一般的な考え方です。

実費精算になると、毎月の支給額は出社日数で動き、自分で出社日を数えて申請する作業が増えます。出社頻度が高い現場ほど定期代のほうが手間がなく、下がるほど実費精算のほうが会社にとって合理的になる、という関係です。

ただし、リモート日数だけで支給方式が決まるわけではありません。先ほどの表のとおり、2社目と3社目は週1〜2日リモートでも定期代のままでした。出社頻度が同じくらいでも、会社の規程によって見直しが入る場合と入らない場合があります。

私が確認できていないこと

今の現場で、支給方式がどうなっているかは、出社をほぼしていないこともあり、具体的な金額を含めてここに書けるほど確認できていません。通勤時間についても、確認できているのは2社目の片道45〜60分程度です。

通勤手当の非課税限度額はいくらまでか|2025年・2026年の2段階改正

結論電車やバスなど公共交通機関の通勤なら、月150,000円までが非課税です。この上限は変わっておらず、2025年と2026年の改正で動いたのはマイカー・自転車通勤の区分です。

交通費に税金がかかるかどうかは、非課税限度額という基準で決まります。電車やバスなど公共交通機関を利用する人の限度額は、1か月あたり150,000円です(出典: 通勤手当の非課税限度額|国税庁 タックスアンサー No.2582)。

電車通勤の一般的な金額なら、この上限からはかなり余裕があり、全額が非課税の範囲に収まります。電車通勤が中心の方は、ここまで読めば十分です。

マイカーや自転車で通勤する人の限度額は距離区分で決まり、直近で2段階の改正がありました。

2025年4月と2026年4月、マイカー通勤の区分が変わった

1段階目は令和7年(2025年)4月1日以後に支払われる通勤手当からの改正です。片道55km以上の区分がそれまでの31,600円から38,700円に上がり、10km以上55km未満の区分も引き上げられました(出典: 2025年の通勤手当の非課税限度額の改正|国税庁)。

2段階目が令和8年(2026年)4月1日以後の改正で、片道55km以上の区分がさらに細分化されました(出典: 2026年の通勤手当の非課税限度額の改正|国税庁)。

通勤距離(片道)〜2025年3月2025年4月〜2026年4月〜
2km以上10km未満4,200円4,200円4,200円
10km以上15km未満7,100円7,300円7,300円
15km以上25km未満12,900円13,500円13,500円
25km以上35km未満18,700円19,700円19,700円
35km以上45km未満24,400円25,900円25,900円
45km以上55km未満28,000円32,300円32,300円
55km以上65km未満31,600円38,700円38,700円
65km以上75km未満31,600円38,700円45,700円
75km以上85km未満31,600円38,700円52,700円
85km以上95km未満31,600円38,700円59,600円
95km以上31,600円38,700円66,400円

あわせて2026年4月からは、一定の要件を満たす駐車場を利用している人に、月5,000円を上限として駐車場料金相当額を加算できる措置も新設されています。2026年4月の改正で変わったのは55km以上の遠距離区分と駐車場の加算で、電車・バスの月150,000円は動いていません。

自分は電車通勤なので、この改正の影響を直接受ける立場ではありません。ただ、現場にマイカー通勤の人がいるなら、非課税枠が広がったことは給与明細や源泉徴収の話に関わってきます。

なお、残業代の計算では、通勤手当は割増賃金の算定基礎から除外できる賃金の一つとされています(出典: 割増賃金の基礎となる賃金の取扱い|厚生労働省 基発0405第6号)。ただし、除外が認められる条件の細部までは私は確認できていないので、気になる場合は会社の担当者か労働基準監督署に聞いてみてください。

在宅勤務が混ざると交通費の課税関係はどうなるのか

結論国税庁のFAQでは、実費相当額を精算する支給は課税不要、渡し切りの手当は課税とされています。ただしこれは在宅勤務手当の話で、交通費にそのまま当てはまるかは確認できていません。

もうひとつ、リモートが混ざる働き方ならではの論点があります。在宅勤務手当の課税関係についての国税庁のFAQでは、在宅勤務に通常必要な費用について実費相当額を精算する方法で支給する金銭は、給与として課税する必要がないとされています。

一方、実際に使ったかどうかにかかわらず、毎月一定額を渡し切りで支給し、会社への返還も不要とするような手当は、給与として課税する必要があるという整理です(出典: 在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)|国税庁)。

このFAQの限界

このFAQ自体は在宅勤務の作業スペースや光熱費相当の補助についての問答で、交通費そのものを扱ったものではありません。ただ、「実費精算なら非課税、渡し切りの手当なら課税」という考え方の枠組みは、交通費にも通じるところがあると感じています。

出社日数に応じて実費を精算する方式は、まさにこの「実費相当額の精算」にあたる形です。逆に、出社してもしなくても毎月一律で「交通費手当」として同じ金額を渡し切りにするような制度があったとしたら、その部分は給与として課税される可能性が出てくることになります。

リモート日が増えている会社ほど、この境目を意識した制度設計に切り替えているのではないかと、今回調べていて感じました。

もし今、定期代を一律支給している会社にいて、それが「出社してもしなくても変わらない渡し切りの手当」に近い形になっているなら、リモートが増えたタイミングで一度税務上の扱いを確認してもらう価値はあると思います。会社側が意識していない場合、担当者に聞いても即答は返ってこないかもしれませんが、聞くこと自体に損はありません。

現場が変わるたびにルールが変わることへの向き合い方

ここまで書いてきた通り、交通費の支給方式は現場ごとに違いますし、同じ現場でもフェーズが変わればルールごと変わることがあります。

事前に確認できることは限られていますが、面談や参画前の説明の場で聞いておくと、後から戸惑わずに済むと思っている点を挙げます。

面談・参画前に確認しておきたいこと

  • 支給方式は「定期代」か「実費精算」か どちらになるかはリモート日数や出社頻度、会社の規程によって変わることがあります。リモートが多い案件では、実費精算になる可能性を織り込んでおいたほうがいいです
  • 実費精算の場合、上限額はいくらか 非課税限度額(電車通勤なら月15万円)とは別に、自社独自の上限が設定されている会社があります
  • 出社日数の数え方・申請方法は誰が管理しているか 自己申告なら、客先の入退館記録と自分の申告がずれないよう、日々の記録を残しておくと安心です
  • リモート日数が今後増えた場合、支給方式は自動的に見直されるのか 自分から申告しないと変わらない制度なら、変化に気づいた時点で確認しておく必要があります

出社日数の数え方については、以前、残業の申告のずれについて別の記事で書いたときと同じ理屈です。客先には正確な出社記録が残っているのに、それを自社への申請に反映するのは結局本人の作業になり、記録の突き合わせを怠ると、数百円、数千円単位の差が積み重なっていくことになります。

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支給方式の見直しは、経緯が記録として残っていない現場も多いと感じています。記録がなければ、支給方式が変わるタイミングも、変わった理由も分からないまま従うしかありません。だからこそ、参画前の面談で確認しておく価値があります。

交通費は、単価や還元率の話に比べれば小さな金額に見えるかもしれません。ただ、リモート日数や出社頻度が変わるたびに、支給の仕組みも自分の知らないところで見直されうるというのは、契約の当事者になれない立場のエンジニアが体感しやすい構造だと思っています。金額の大小より、こうした小さな制度の変化に気づけるかのほうが、長く常駐で働く上では効いてくる気がしています。

まとめ

  • 交通費は、一般に法律上の義務ではない 各社の就業規則(賃金規程)で決まる制度です
  • 支給方式はリモート日数・出社頻度と関わる 私が経験した2社目・3社目は、週1〜2日リモートでも定期代のままでした。出社頻度がさらに下がると、定期代から実費精算に切り替わる現場がある、というのが一般的な仕組みです。私の今の現場は、もともと週1出社の予定でしたが、2026年10月時点ではほぼフル在宅です
  • 実費精算は出社日数に応じて金額が動く 毎月同じ金額にはならず、自分で出社日を数えて申請する手間が増えます
  • 税金の面では境目を意識する 非課税限度額は電車通勤なら月15万円で変わっておらず、2025年と2026年の改正で動いたのはマイカー・自転車通勤の区分です。実費精算なら非課税、渡し切りの手当なら課税という考え方の境目も意識しておく価値があります

今の現場がほぼフル在宅になったことで、交通費を「毎日の通勤が前提のお金」として考えられなくなったのは、私にとって大きな変化でした。出社頻度が変わると、支給の仕組みも見直しの対象になりやすいという点は、頭に置いておくと役に立ちます。

もし今、面談で交通費について聞くとしたら、「出ますか」ではなく「定期代ですか、実費精算ですか、リモート日数が増えたらどうなりますか」まで踏み込んで聞いてみてください。それだけで、参画してから戸惑う場面はかなり減らせるはずです。