最初にお伝えしておくと、私はSESエンジニアとして5年ほど4社の現場に入ってきましたが、欠勤や遅刻で給料を引かれた経験がありません。引かれた明細の実例を出せない、ということです。
それでも、自社の賃金規程にどう書かれているかは知っています。休んだ日の給料がどういう理屈で扱われるのかは、引かれた経験の有無に関係なく、知っておいたほうがいい内容だと考えています。
今回は、欠勤・遅刻の控除の一般的な考え方、計算の例、客先の精算幅との違い、そして自社の規程で何を確認すればいいのかを整理します。
この記事で分かること
- 欠勤・遅刻で給料が引かれるかどうかを決めているのは、何の書類か
- ノーワーク・ノーペイの考え方と、欠勤控除の計算の仕方
- 基本給269,000円を例にした、分母の置き方による1日分の額の違い
- 客先の精算幅の下限割れと、自社の給与控除は別の話であること
- 欠勤控除と、労働基準法91条の「減給の制裁」の違い
- 自社の規程で確認する9項目と、明細の確かめ方
目次
- SESで欠勤・遅刻すると給料が引かれるかは、自社の賃金規程で決まります
- 私は欠勤・遅刻で給料を引かれた経験がありません
- 欠勤控除の計算は、1日分を「何で割るか」で金額が変わります
- 分母の置き方は、主に3通りあります
- 何を分子にするかも、規程が決めます
- 遅刻の控除は、時間単位で計算するのが一般的です
- 半日休み・時間単位の休み・遅刻は、勤怠にどう載るかが会社ごとに違います
- 客先の精算幅の下限を割ると、自社の給与も下がるのか
- 精算幅の控除は、客先から自社への請求の話です
- 自社の給与に連動させるには、賃金規程の根拠が要ります
- 欠勤控除と「減給の制裁」は、別の仕組みです
- 91条が決めている上限
- 「制裁」として引かれる場合は、別の条件がかかります
- 勤怠不良の評価は、給与の控除とは別の軸です
- 自社の規程で確認する9項目と、明細から控除額を確かめる手順
- まとめ
SESで欠勤・遅刻すると給料が引かれるかは、自社の賃金規程で決まります
結論引かれるかどうか、いくら引かれるかは、自社の賃金規程と雇用契約で決まります。客先との契約にある精算幅は、別の話です。
SESには、お金に関わる約束事が2本あります。1本は、自社と自分の間の雇用契約と賃金規程です。もう1本は、自社と客先の間の契約で、月の稼働時間の幅(精算幅)や単価が決まっています。
欠勤や遅刻で引かれるかどうかを決めるのは、自社と自分の間の賃金規程のほうです。客先との契約書は、私の立場では見られませんでした。
自社と私の間(給与)
- 根拠は雇用契約と賃金規程
- 自分の会社の規程として確認できる
- 欠勤は日数、遅刻は時間で控除する形が一般的
- 明細の勤怠欄・控除欄に出る
客先と自社の間(請求)
- 根拠は個別契約書
- 私の立場では見られない
- 月の稼働時間が下限を割ると請求が減る契約がある
- 社員の給与明細には登場しない
この2本を混ぜると、話がこじれます。「迷惑をかけたから引かれる」と「下限を割ったから減る」は、根拠がまったく別です。
欠勤控除の理屈は、働いていない時間の賃金は発生しない、いわゆるノーワーク・ノーペイの考え方で説明されることが多いです。ただ、この記事で確認した厚生労働省の資料には、欠勤控除そのものの記述がありません。理屈の部分は一般論として読んでください。
私は欠勤・遅刻で給料を引かれた経験がありません
ここで、私の立場を正直に書いておきます。4社の現場に入りましたが、欠勤や遅刻で給与から控除された経験はありません。明細の控除欄に欠勤控除の行が出たことがないので、控除額の実例は持っていません。
そのため、この記事の金額は、実際に引かれた額ではなく計算例です。計算例に使うのは、3社目の離任前(2025年)の基本給269,000円です。固定残業手当(みなし残業)の行はなく、残業手当は実際の時間に応じた実費でした。月給制で、基本給のほかに職能手当等、家族手当、住宅手当が付いていました。
自社の賃金規程は、私も把握しています。ただ、規程の中身は会社ごとのものなので、この記事では条文の内容は書きません。「自分の会社の規程で何を見ればいいか」を中心に書きます。
欠勤控除の計算は、1日分を「何で割るか」で金額が変わります
欠勤控除は、月給を1日分に割り戻して、欠勤日数を掛ける形で計算されるのが一般的です。割り戻すときの分母と、分子にする賃金の範囲は、会社の規程で決まります。
分母の置き方は、主に3通りあります
人事向けの解説では、欠勤1日分の分母を次の3つのどれかに置く例が紹介されています。どれを使うかは会社の規程次第です。基本給269,000円で、分母の違いだけを比べてみます。
| 分母の置き方 | 計算例の分母 | 1日分(基本給269,000円) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 当月の所定労働日数 | 20日 | 13,450円 | 月ごとに変わる。連休の多い月ほど1日分が高い |
| 月平均所定労働日数 | 21日 | 12,809円(円未満切り捨て) | 毎月同じ額になる |
| 暦日数 | 30日 | 約8,967円 | 休日も分母に入るので、1日分は小さくなる |
分母の日数(20日・21日・30日)は、説明のために置いた例です。実際の月の日数や会社の規程とは関係ありません。
同じ欠勤1日でも、分母だけで13,450円から約8,967円まで、4,000円以上の開きが出ます。自分の会社がどの分母を使っているかを知らないと、明細の数字が妥当かどうかを判断できません。
一般的な計算式の例として、月給25万円・月平均所定労働日数22日・欠勤5日の場合に56,818円になる、という説明があります(出典: 欠勤控除とは?計算方法を解説|jinjer)。月給÷月平均所定労働日数×欠勤日数という形です。
ただし、月平均で割る会社がどれくらい多いのかは、私は統計で確認していません。「標準だから自分の会社もこうだろう」と決めつけず、規程の分母を直接見るのが確実です。
何を分子にするかも、規程が決めます
もう1つ効いてくるのが、何を分子にするかです。基本給だけを基礎にする会社もあれば、手当を含める会社もあります。
私の明細には、基本給のほかに職能手当等(約15,000円)や家族手当、住宅手当がありました。仮に基本給と職能手当等の合計約284,000円を基礎にして21日で割ると、1日分は約13,523円です。基本給だけなら12,809円なので、対象賃金の置き方だけで、1日あたり700円ほど違う計算になります。
これも計算例で、私の自社の規程がどちらかという話ではありません。端数の扱い(円未満を切り捨てるか、切り上げるか)も規程次第です。
遅刻の控除は、時間単位で計算するのが一般的です
遅刻や早退は、月給を月平均所定労働時間で割った1時間分の額に、不就労の時間を掛けて計算する形が一般的です。月給30万円・月平均所定労働時間160時間・遅刻早退5時間で、9,375円になるという例が紹介されています(出典: 遅刻・早退の控除の計算方法|TeamSpirit)。
基本給269,000円で、同じ形の計算をしてみます。月平均所定労働時間を168時間(21日×8時間)と置いた例です。
| 項目 | 計算例 |
|---|---|
| 1時間分 | 269,000円÷168時間=約1,601円 |
| 15分の遅刻 | 約400円 |
| 30分の遅刻 | 約800円 |
| 1時間の遅刻 | 約1,601円 |
遅刻を分単位でそのまま数えるのか、15分や30分の単位に切り上げるのかは、会社の規程で決まります。切り上げの単位があると、1分の差で控除額が変わることがあるので、規程の確認項目に入れています。
遅刻した日に夕方まで残って取り返したとき、遅刻と残業が相殺されるのかどうかも、会社の規程と時間外の扱い方で変わります。法律でどう整理されるかまでは、私は確認していません。通院のように前日から分かっている遅れなら、時差出勤などの事前申請の制度があるかを、先に確認しておくと安心です。
半日休み・時間単位の休み・遅刻は、勤怠にどう載るかが会社ごとに違います
休み方は全日だけではなく、半日や時間単位もあります。私が確認できた範囲では、半日休みや遅刻を勤怠にどう反映するかを細かく定めた共通のルールは見つけられていません。自社の規程と運用で決まる部分です。
休み方ごとに、確認しておきたい点を整理します。
| 休み方 | 確認したい点 |
|---|---|
| 全日の有給 | 当日の朝に申請できるか、事後の申請でもよいか |
| 全日の欠勤 | 有給との区分を自分で選べるか、あとから振り替えられるか |
| 半日の休み | 何時間として数えるか、有給と欠勤のどちらで処理されるか |
| 時間単位の休み | 時間単位の有給の制度があるか、年間の上限はあるか |
| 遅刻 | 控除の単位と端数の扱い、事前申請の制度があるか |
ここで押さえたいのは、客先の記録と自社の勤怠は別物だということです。客先に出す作業報告書には稼働した時間が載り、休みの理由までは載らないのが一般的です。同じ稼働0時間でも、自社の勤怠で有給なのか欠勤なのかで、給与への影響は変わり得ます。客先の記録を見ているだけでは、自分の給与の増減は分かりません。
時間単位の有給は、健康診断の受診時間の記事で、4社目での使い方を書きました。有給そのものの取りにくさは、別の記事にまとめています。
自社の勤怠と客先の記録の持ち方そのものは、こちらに整理しています。
客先の精算幅の下限を割ると、自社の給与も下がるのか
結論客先の請求が減ることと、自分の給与が引かれることは、別々の根拠で動きます。連動させるなら、自社の賃金規程にその旨の根拠が要ります。これは一般論と論理による整理で、法的な結論ではありません。
検索で混ざりやすいのが、ここです。精算幅の下限を割ると控除されるという話と、欠勤で給料が引かれるという話は、並べて語られがちです。
精算幅の控除は、客先から自社への請求の話です
精算幅は、月の稼働時間に幅を設けて、下限を割れば請求から控除、上限を超えれば超過分を加算する仕組みです。控除の単価は、月額を下限時間で割る形が例として紹介されています。
月額50万円・140〜180時間の例では、控除単価は3,571円で、130時間なら35,710円が引かれて464,290円になります(出典: 精算幅とは|HRMOS)。引かれるのは自社の売上で、そこに社員の給与明細は登場しません。
この例の前提
上の金額は一般的な計算例で、私の契約の数字ではありません。私自身は、精算幅の控除を受けたことも、それが自分の給与にどう響くかを実例として経験したこともありません。
自社の給与に連動させるには、賃金規程の根拠が要ります
給与から何かを引くには、雇用契約や賃金規程に根拠が要ります。厚生労働省の資料では、労働基準法24条は賃金を全額残らず支払うことを求めていて、「積立金」名目の天引きは禁止、法定の所得税・社会保険料の控除は認められる、と説明されています(出典: 労働条件・職場環境に関するルール|厚生労働省)。
客先の請求が減った分を、自社が黙って社員の給与から差し引けるとは、この説明からは読み取れません。同じ資料には、これ以外の控除は労使協定がある場合に認められるとも書かれています。自社の給与にどの控除が許されるかは、私は判断できないので、気になる場合は労働基準監督署などの窓口で確かめてください。
整理すると、休み方と稼働時間の組み合わせで、請求と給与は次のように動き分かれます。
| ケース | 客先への請求(精算幅) | 自社の給与 |
|---|---|---|
| 有給で休んだが、稼働は下限以上 | 変わらない | 引かれない |
| 欠勤で休んだが、稼働は下限以上 | 変わらない | 規程に基づく欠勤控除 |
| 有給で休み、稼働が下限割れ | 下限割れ分が控除される契約がある | 引かれない |
| 欠勤で休み、稼働が下限割れ | 同じく控除される契約がある | 欠勤控除(請求の減額とは別) |
有給で休んで下限を割ったケースでは、自社は給与を満額払いながら、請求は減るという形になり得ます。自分が休むことが自社の売上に効いてくる可能性は、有給の記事でも触れたとおりです。
欠勤控除と「減給の制裁」は、別の仕組みです
ここは一次資料で確認できた範囲だけを書きます。労働基準法91条の減給の制裁と、欠勤控除は、よく混同される組み合わせです。
91条が決めている上限
厚生労働省の資料では、労働基準法91条が、制裁として賃金の一部を減額することを「減給」と呼び、1回の減給は平均賃金の1日分の半額まで、総額は一賃金支払期の賃金額の10分の1以下、と定めていると説明されています。減給の対象になる規律違反の例として、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱すことが挙げられています(出典: 労働条件・職場環境に関するルール|厚生労働省)。
上限のイメージをつかむために、仮の数字で概算してみます。平均賃金は、直近3か月の賃金総額を暦日数で割るもので、待機給与の記事で計算の仕方を書きました。ここでは、3か月の賃金総額が90万円、暦日数が92日、月の賃金総額が30万円という仮定です。
仮の数字による概算です。時間外手当や通勤手当などを含めた実際の平均賃金は、賃金総額の中身と算定期間で変わります。
先ほどの計算例で見た欠勤1日分(12,809円など)は、この1回あたりの上限を超えています。それでも制裁の上限に当たらないと私が考えているのは、欠勤控除が「罰」ではなく、働かなかった分を計算上引いているものだからです。
この区別に近い記述として、厚生労働省のQ&Aに、賞与を勤務評価に基づいて算出する場合、不就労期間にかかる賞与額の減額は91条の減給の制裁に該当しない、というものがあります(出典: 賞与の減額と減給の制裁|厚生労働省 スタートアップ労働条件)。これは賞与の話で、毎月の賃金の欠勤控除を明示した一次資料は、私は見つけられていません。賞与のQ&Aからの類推として読んでください。
「制裁」として引かれる場合は、別の条件がかかります
もし「遅刻したから罰として5,000円」のような引かれ方をしていたら、それは欠勤控除ではなく制裁の側に入ります。就業規則に定めがあること、上限の半額と10分の1を超えないこと、が条件になります。
鹿児島労働局のQ&Aでは、遅刻が多い従業員に3か月間給与の10%を減らす制裁は許されないと回答されています(出典: よくあるご質問|鹿児島労働局)。
遅刻が多いことを理由に、3か月間、給与を10%減額する制裁は許されません。減給の制裁には就業規則の定めが必要で、1回の事案は平均賃金の半額まで、1賃金支払期の合計は賃金総額の10分の1までです。
欠勤・遅刻の行が、時間や日数に比例した控除だけなら、通常は欠勤控除の側です。明細に「罰金」的な行があったときだけ、91条の上限を確かめるという見方で足りると考えています。
勤怠不良の評価は、給与の控除とは別の軸です
遅刻や欠勤が重なると、客先から「勤怠不良」として指摘される、という話もあります。これは給与の控除とは別の軸で、評価や契約更新の話です。
私は、遅刻や欠勤を理由に客先から直接指摘された経験がありません。給与の控除が出ているかどうかと、客先の評価は別の話だと理解しています。
会社の都合による待機とは、扱いが逆になります。自分の事情の欠勤は、一般にはノーワーク・ノーペイで賃金が出ない側です。会社の責任による休業は、休業手当の対象になり得ます。
自社の規程で確認する9項目と、明細から控除額を確かめる手順
ここまでの内容を、自分の会社に当てはめられる形にまとめます。まず、賃金規程で見る項目です。
賃金規程で見る9項目
- 欠勤・遅刻・早退の控除を定めた条文があるか
- 控除の対象は基本給だけか、手当も含むか
- 1日分の分母は何か(当月の所定日数・月平均の所定日数・暦日数)
- 遅刻・早退の単位と端数(15分単位か、切り上げか切り捨てか)
- 半日休みは何時間か、有給と欠勤のどちらで処理されるか
- 当日の休みを、事後に有給へ振り替えられるか。期限はいつか
- 時差出勤や始業時刻の変更は、事前申請が必要か
- 客先の稼働時間や精算幅に連動する控除の定めがないか
- 賞与の計算で、欠勤・遅刻がどう扱われるか
実際に控除が出た月は、次の5つの順で明細と規程を突き合わせると、金額の根拠が確かめられます。
- 明細の勤怠欄を読む欠勤日数、遅刻早退の時間、有給日数が、自分の手元の記録と合っているかを見ます。
- 控除欄の該当行を読む「欠勤控除」「遅刻早退控除」「不就労控除」など、名前は会社で違います。金額を控えます。
- 賃金規程で控除の条文を探す目次の「賃金の計算」「控除」「不就労」のあたりにあります。
- 対象賃金・分母・端数を決めて計算する条文の言葉どおりに、自分で式を組み直します。
- 合わなければ、労務に聞く「何を基礎に、何で割った額ですか」と聞くのが、角が立たない聞き方です。
合わないときは、分母・対象の手当・端数の3つを疑うと、原因が見つかりやすいです。この手順は、控除が出たことのない私自身は実際に回したわけではなく、計算の考え方から組み立てたものです。
明細の見方そのものは、別の記事に書きました。
規程の置き場所が分からない会社なら、頼み方は、昇給の記事に書いたとおり、規程の存在を前提に「どの条文を基準にしていますか」と聞くのが、角が立ちにくいと感じています。
最後の項目は、賞与の話です。厚生労働省のQ&Aでは、賃金には賞与も含まれるとされ、勤務評価に基づく賞与の不就労期間分の減額は、減給の制裁に当たらないと説明されています。欠勤や遅刻は、月々の明細だけでなく、賞与の算定にも別の形で響くかもしれません。
まとめ
SESで欠勤・遅刻すると給料が引かれるかどうかは、自社の賃金規程で決まります。私自身は引かれた経験がないので、金額は基本給269,000円を使った計算例としてお伝えしました。
- 引かれるかどうかは賃金規程が決める 客先の精算幅とは別の話です
- 欠勤控除は分母で額が変わる 基本給269,000円の例では、1日分が13,450円(20日)、12,809円(21日)、約8,967円(30日)と分かれました
- 遅刻は時間単位が一般的 単位や端数の扱いは、規程で確認します
- 客先の請求の減額と、自社の給与控除は別物 連動させるには賃金規程の根拠が要ります
- 欠勤控除は減給の制裁とは別 明細に罰金的な行があるときだけ、91条の上限を確かめます
引かれた経験がなくても、規程を読んでおく意味はあります。欠勤や遅刻が出てから慌てて読むより、元気なうちに分母と対象賃金、有給への振り替えの可否だけ確認しておくほうが、判断が楽になるからです。
まずは自社の賃金規程を開いて、上の9項目のうち、分母と対象賃金の2つだけ探してみてください。それが分かれば、明細の控除額が妥当かどうかを、自分で計算して確かめられるようになります。




