自分の昇給額が世の中と比べて多いのか少ないのか、正直ちゃんと確かめたことがありませんでした。
SESエンジニアとして5年ほど、4社の客先常駐を経験し、今回この記事を書くために厚生労働省の最新の賃金引上げ調査も確認しました。
それは自分の数字を並べないと分かりません。今回は、2022年から2025年までの4回の昇給の実額を並べ直し、統計と比べて、昇給額の決まり方と、昇給以外に給与を上げる現実的な手段まで、実体験を交えてお伝えします。
この記事で分かること
- 自分の4年分の昇給の実額(基本給226,000円→269,000円の推移)
- 情報通信業の1人平均改定額14,096円と比べて、額と率で何が違ったか
- 基本給の昇給が、賞与にも効く仕組み
- 自分の昇給通知・賃金規程を確認する手順
- 確認・交渉に向いているタイミングと、昇給以外に給与を上げる現実的な手段
目次
- SESの昇給額を、4年分の昇給通知から確認する
- SESの昇給額は平均いくらか、統計と自分の数字を比べる
- 定昇制度はあっても、大半は業績評価しだい
- 何を基準に賃金を改定するか、企業の本音
- 労働組合の有無で、改定額に3,000円以上の差
- 平均という数字の落とし穴
- 数字を並べて比べる
- 昇給は賞与にも効きます
- 昇給額は、何で決まっているのか
- 契約更新の周期と、昇給のタイミングは噛み合っていない
- 自分の昇給通知・賃金規程を確認する手順
- 昇給通知を残しておく
- 賃金規程は「見せてください」と言えば見られる
- 目次から「基本給」「昇給」の章を探す
- 条文の後ろにある別紙・様式まで見る
- 目安表がない場合は、評価と昇給額を自分で照合する
- 確認や交渉に向いているタイミング
- 昇給以外で給与を上げるには何が現実的か
- まとめ
SESの昇給額を、4年分の昇給通知から確認する
所属しているSES企業は、入社した2021年4月からずっと同じ1社です。現場は4社目まで変わりましたが、雇用契約そのものは一度も変わっていません。
基本給が改定されたのは、毎年4月でした。この記事を書くにあたって、基本給の推移を並べ直してみました。
| 時期 | 基本給(月額) | 前年からの昇給額 |
|---|---|---|
| 2021年4月(入社時) | 226,000円 | ― |
| 2022年4月 | 232,000円 | +6,000円 |
| 2023年4月 | 245,000円 | +13,000円くらい |
| 2024年4月 | 258,000円 | +13,000円くらい |
| 2025年4月(3社目の離任時) | 269,000円 | +11,000円くらい |
| 現在(2026年) | 28〜30万円 | 未確認(4社目、自社の役職上の管理職) |
2023年から2025年の昇給額は、「くらい」と付けた概数です。手元の通知で確認した数字ではなく、記憶をもとにしています。
2社目のときの額面月収は、残業代を含めて平均で28〜32万円ほどでした。基本給はその中の約23万円で、残りは手当と残業代です。
基本給(月額)の2022〜2025年4月の動き。4回の昇給(+6,000円・+13,000円・+13,000円・+11,000円)の平均です。
昇給は毎年あり、2年目以降は1年目の約2倍の額になっていたというのが、数字を並べ直して最初に分かったことです。1年目の+6,000円に対して、2年目以降は+11,000円から+13,000円になっています。
毎年決まった額が自動的に上乗せされる形ではなく、年によって幅がありました。この額が世の中と比べてどうなのか、まず統計で確認しました。
SESの昇給額は平均いくらか、統計と自分の数字を比べる
結論情報通信業の1人平均改定額14,096円に対して、私の4年間の平均は約10,750円で、額では4分の3ほど、率では同程度か上回る年もありました。
厚生労働省が2025年7〜8月に実施した「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」(常用労働者100人以上の企業が対象、有効回答1,847社)に、業種別の1人平均賃金の改定額が載っています。
自社の従業員数が調査対象の規模に当たるかは確認していないため、あくまで参考の比較対象として使っています。
情報通信業の令和7年の1人平均賃金の改定額は14,096円、改定率3.9%でした(出典: 令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査 統計表|厚生労働省)。
前年の令和6年は14,989円、4.3%だったので、金額としてはやや縮んでいます。全産業計は13,601円・4.4%で、情報通信業はこれよりわずかに高い水準です。
| 区分 | 令和7年 改定額 | 改定率 |
|---|---|---|
| 情報通信業 | 14,096円 | 3.9% |
| 全産業計 | 13,601円 | 4.4% |
自分の4年間の平均は約10,750円でした。情報通信業の平均改定額14,096円と比べると、およそ76%の水準です。
率で比べると、見え方が少し変わります。2025年4月の昇給は、基本給258,000円に対して+11,000円で、率は約4.3%でした。令和7年の情報通信業の改定率3.9%を、わずかに上回っています。2024年4月も、245,000円に対して+13,000円で約5.3%、令和6年の4.3%を上回りました。
ただし、調査の改定率は賃金総額に対する率で、基本給の月額に対する私の数字とは基準が少し違います。厳密な比較ではなく、目安として見てください。
定昇制度はあっても、大半は業績評価しだい
同じ調査には、定期昇給制度の有無も出ています。情報通信業で定昇制度がある企業は89.6%、ない企業は7.5%でした。制度自体はほとんどの会社にあります。
ただし、その中身を見ると印象が変わります。情報通信業の企業のうち、定期昇給の内容に「自動昇給」を含む企業は29.0%にとどまり、業績評価などを含む企業は85.9%(複数回答)を占めていました。
ポイント
定昇制度があるかどうかを聞いて「あります」と言われても、それが自動で積み上がる仕組みなのか、評価しだいで幅が変わる仕組みなのかは別問題です。自分の昇給額は年によって6,000円から13,000円まで動きましたが、その理由が評価や業績にあるのかは確認できていません。
なお、定昇制度がある情報通信業の企業のうち、令和7年に実際に定昇を行った・行う予定の企業は86.2%、行わなかった企業は2.2%でした。制度があっても実施されない年が一定数ある、という点も見えてきます。
ベースアップ(ベア)については、行った・行う企業が52.1%、行わなかった企業が23.8%、定昇とベアの区別をしていない企業が24.1%という内訳でした。ベアがある年とない年で、同じ評価でも昇給額の幅が変わりうることになります。
何を基準に賃金を改定するか、企業の本音
全産業計で見ると、企業が賃金改定の決定で最も重視した要素は「企業の業績」で41.7%(前年は35.2%)でした。次いで「労働力の確保・定着」17.0%、「雇用の維持」11.9%と続きます。
昇給の原資そのものが、個人の頑張りよりも会社の業績に強く紐づいている、という企業側の本音がここに出ています。
労働組合の有無で、改定額に3,000円以上の差
もう一つ気になったのが、労働組合の有無別の数字です。全産業計で見ると、労働組合がある企業の1人平均改定額は15,229円・4.8%、ない企業は11,980円・4.0%でした。差は3,249円で、率にすると0.8ポイントの開きがあります。
私の場合
自分の会社に労働組合があるかどうかを、正直これまで確認したことがありません。そのため、この差が自分に当てはまるのかは分かりません。
参考までに、JILPTが公表している連合の2026春季生活闘争の第1回回答集計では、平均17,687円・5.26%という数字が出ています(出典: 2026春季生活闘争 第1回回答集計|労働政策研究・研修機構)。300人未満の組合では14,300円・5.05%、300人以上では17,849円・5.27%でした。
ただしこちらは労働組合に加盟している、主に大手企業が中心の集計です。二次請け・三次請けが中心のSES企業の実態とは母集団が大きく異なるので、あくまで「組合がある大手だとここまで交渉できている」という参考の数字として見ています。
平均という数字の落とし穴
もう一つ、統計を見るときに注意しておきたいことがあります。同じ調査で、情報通信業で1人平均賃金を引き上げた・引き上げる予定の企業は97.4%でした。
平均額を読むときの前提
14,096円は各企業の「1人あたり平均改定額」を常用労働者数で加重平均した数字で、社員一人ひとりの昇給額の分布までは分かりません。定期昇給とベースアップの両方を含んだ額で、調査の対象も常用労働者100人以上の企業に限られています。同じ会社の中でも、評価によって数千円の人と1万円を超える人が混ざっているはずです。
平均という数字だけを見て「自分の昇給は世の中より低い」「高い」と判断するのは早計です。自分の実額と照らし合わせて初めて、その数字は意味を持ちます。
数字を並べて比べる
ここまで出てきた改定額を並べると、自分の実額がどのあたりに位置しているかが分かります。
| 比較対象 | 1人平均の改定額(月額) | 自分の平均(約10,750円)との差 |
|---|---|---|
| 自分の4年間の平均 | 約10,750円 | ― |
| 情報通信業(令和7年) | 14,096円 | 約3,350円 |
| 労働組合あり(全産業) | 15,229円 | 約4,480円 |
| 労組の春闘集計(JILPT) | 17,687円 | 約6,940円 |
自分の数字は、情報通信業の平均より月に約3,350円低い水準でした。年収換算では、月額の差の12か月分と、賞与(年3か月分)を合わせて約5万円です。
基本給は毎年の昇給額の土台になる数字なので、この差は1年限りでは終わりません。一度ついた差は翌年以降の基本給にもそのまま残り、毎年の差が上に積み重なっていきます。
昇給は賞与にも効きます
昇給額の話で見落としやすいのが、賞与との関係です。
私の会社の賞与は、年2回(7月と12月)で、年間で基本給の3か月分です。算定の基礎は基本給だけで、職能手当・家族手当・住宅手当・残業代は含まれません。
つまり、基本給が1円上がると、月給が12か月分、賞与が3か月分、合わせて年に15か月分の金額に響きます。
基本給の昇給が、年収にどれだけ効いたかの目安(額面)。
2025年4月の+11,000円だけでも、年間では11,000円×15か月=約16.5万円です。月給の数字で見ると小さく感じる昇給額が、年収では意外に大きくなります。
一方で、手当は賞与の算定に入りません。3社目の離任前の明細では、基本給269,000円のほかに、職能手当等が約15,000円、家族手当が20,000円、住宅手当が40,000円ありました。これらは賞与の算定基礎に入らない部分です。
昇給額は、何で決まっているのか
結論私の場合、昇給は毎年あり、2年目以降は1年目の約2倍の額でした。ただ、年によって幅がある理由までは、確認できていません。
統計でも見たとおり、昇給額は業績評価や会社の業績を反映して決まる会社が大半です。自分の昇給も、毎年同じ額が自動的に積み上がる形ではありませんでした。
6,000円、13,000円、13,000円、11,000円と並べると、1年目だけ低く、その後は1万円を超えています。
この点は、自分の昇給通知と賃金規程を並べて確かめていくしかありません。次の節で、確認の手順を整理します。
契約更新の周期と、昇給のタイミングは噛み合っていない
もう一つ気づいたのは、契約更新は3か月ごとであるのに対し、昇給は年1回という周期のずれです。契約更新の周期については、別の記事にまとめています。
たとえば10月の契約更新で担当工程が広がったとしても、次の昇給のタイミングである4月まで、その変化が給与に反映される機会がありません。
契約更新のたびに給与が見直されるのではなく、年に一度の改定にまとまると考えると、昇給の前に自分の変化を伝えておくことが現実的な対応になります。
自分の昇給通知・賃金規程を確認する手順
同じことは、他のSES企業に所属している人でも、手順さえ踏めば自分の会社で確認できます。
昇給通知を残しておく
毎年届く基本給改定のお知らせやメールは、その場で確認して終わりにせず、ファイルに残しておくことをおすすめします。
1年分の金額だけを見ていたときは気づかなかった昇給の幅も、数年分を並べて初めて「年によって6,000円から13,000円まで動いている」という傾向が見えてきます。
賃金規程は「見せてください」と言えば見られる
賃金規程は就業規則の一部として、労働基準法で労働者への周知が義務づけられています。イントラに掲示されていなくても、人事に依頼すれば閲覧できるのが原則です。
置かれていない会社なら、人事に「賃金規程を確認したいので共有してもらえますか」と伝えるだけで、それほど身構えられる依頼ではないはずです。
昇給額そのものの根拠を尋ねたいときも、「なぜこの金額なのか」と聞くより、「賃金規程の何を基準に昇給額が決まるのか教えてください」と規程の存在を前提に聞いたほうが、角が立ちにくいはずです。
目次から「基本給」「昇給」の章を探す
賃金規程は数十ページに及ぶことが多いので、最初から通読しようとせず、目次を見て「基本給」「賃金の改定」「昇給」といった章を探すのが近道です。
条文の後ろにある別紙・様式まで見る
条文の本文だけで終わらせず、末尾に別紙や様式がついていないかも確認してください。条文自体は「業績等を勘案し改定を行うことがある」という抽象的な一文でも、会社によっては別紙にランク別の昇給額の目安表が添付されていることもあります。
目安表がない場合は、評価と昇給額を自分で照合する
規程に目安表が見当たらない会社もあると思います。その場合は、評価面談などで示された評価と、実際の昇給額を自分で並べてみるだけでも傾向はつかめます。評価面談については、別の記事に書きました。
自分の昇給を確認する3つのチェックポイント
- 過去数年分の昇給通知・給与明細を並べ、金額の推移とばらつきを確認する
- 賃金規程の目次から「基本給」「昇給」の章を探し、条文と別紙の両方を読む
- 賞与の算定基礎が基本給なのか、手当を含むのかを確認し、昇給が年収にどれだけ効くかを計算する
確認や交渉に向いているタイミング
賃金規程を確認したこと自体は、人事にぶつける話ではありません。それより効くのは、昇給に響きそうな材料を先に渡しておくことです。
昇給は年1回なので、担当工程が広がった、新しい技術に携わった、といった変化は、改定の前に一言メモにして担当営業や人事に渡しておく、という方法が考えられます。
昇給以外で給与を上げるには何が現実的か
昇給は毎年あり、年収への効果も小さくはありません。それでも、メンバーの立場のまま自社の昇給だけで給与を大きく増やすのは、構造的に難しいと感じています。
昇給以外で給与を上げる方法を、自分の経験と結びつけて並べてみます。
- 資格手当を積み上げる 会社の制度として月額型の資格手当があれば、昇給とは別枠で毎月の額面を底上げできます。制度があるかどうかは、賃金規程で確認する必要があります
- 単価が上がる現場に移る 単価は経験年数よりも役割や商流の深さで決まりやすいので、現場を変えても給与に直結するとは限りません。私の会社では賞与の算定基礎が基本給なので、単価が上がった現場でも賞与が自動で増えるわけではありません
- 作る側から決める側の役割に移る 設計・要件定義など、上流の工程や案件の予算に関与する側に回れれば、給与の上がり方が変わる可能性があります。ただし下流のSESではその工程が降りてきていないこともあり、現場での努力だけでは手が届きにくいと感じています
- 還元率の高い自社・雇用形態に転職する 同じ単価でも、会社の取り分(マージン率)が低いほど手元の給与は増えます。ただしマージン率の見方には注意が必要で、転職先の還元率や昇給制度の中身(自動昇給かどうか)は面談で直接確認するしかありません
- フリーランスとして独立する 年530万円の単価で試算した記事にも書いたとおり、会社を挟まなければ中間のマージンがなくなる分、手取りは変わる可能性があります。ただし社会保険や案件の切れ目のリスクは自分で負うことになります
- 副業で別の収入源を持つ 客先常駐でも就業規則やNDAの範囲内であれば副業自体は可能ですが、これは本業の給与を上げる話ではなく、別の財布を増やす話として切り分けたほうが実態に合っています
自分の場合、昇給とは別に変わったのは、4社目で自社の役職上の管理職になったことでした。基本給は3社目の離任時の269,000円から、現在は28〜30万円になっています。管理職手当の有無など、細かい内訳は今回確認できていません。
昇給という毎年の積み上げとは別に、役割が変わったタイミングで基本給の水準そのものが動く、というのが、数字を並べてみた実感です。転職を選んだ場合の話は、別の記事に書きました。
土俵の外を見るといっても、いきなり転職を決める必要はありません。まずはIT職種に特化した転職エージェント(@PRO人
など)で面談を受け、自分の経験でどんな給与水準の求人があるのかを聞いてみると、今の昇給額を比べる物差しが手に入ります。エンジニアとして1年以上の実務経験があり、39歳以下で勤務地が一都三県か大阪なら、年収の相場を聞ける経験者向けのユニゾンキャリアもあります。
まとめ
4年分の昇給を並べ直して分かったのは、昇給が毎年あり、基本給が226,000円から269,000円まで、4年間で43,000円上がっていたという事実でした。
- 平均すると1回あたり約10,750円で、情報通信業の1人平均改定額14,096円のおよそ76%。率では同程度か、上回る年もあった
- 賞与の算定基礎が基本給のため、基本給の昇給は年に15か月分(月給12か月+賞与3か月)の額面に響く。4年間の昇給の合計43,000円は、年間で約64.5万円にあたる
- 手当(職能・家族・住宅)は賞与の算定基礎に入らず、基本給の水準が大きく動いたのは、役割が変わったとき(管理職になったとき)だった
もし今、毎年の昇給額が数千円程度で頭打ちになっていると感じているなら、まず自分の昇給通知を数年分並べ、賞与の算定基礎が何なのかを確認してみてください。確認の手順は本文の3つのチェックポイントにまとめたので、参考にしてもらえればと思います。
昇給という土俵の中で伸ばせる額には限りがあります。単価・役割・所属先という、土俵の外側にも選択肢を広げておくことが、次の一手としては現実的です。




