「基本情報を取ったら手当が出るらしい」と聞いても、自分の会社の規程を開いて金額まで確認したことがある人は、意外と少ないのではないでしょうか。
私はSESエンジニアとして5年あまり、4社の現場で働き、基本情報技術者を独学で取得しました。ただ、賃金規程の資格手当の条文を実際に読んだのは、つい最近のことです。
この記事では、私の会社で出た金額(一時金2万円)を出発点に、世間の相場の目安との比べ方、毎月型と一時金型の違い、受験料補助を使えなかった失敗、面談で聞いておきたいことまでを、規程の読み方ごとお伝えします。
この記事で分かること
- 基本情報技術者の資格手当の相場の目安と、厚労省の平均との違い
- 毎月型と一時金型のどちらが得か、年額で並べたときの見え方
- 私の会社で実際に出た金額と、給与明細に載るまでの流れ
- 受験料補助を使えなかった理由(事前申請という要件を知らなかった話)
- 面談・求人で聞いておきたい質問と、手当より還元率を見るべき理由
先に結論から書きます。民間メディアの目安では、基本情報の資格手当は毎月型で月5,000〜10,000円程度、一時金型で2万〜10万円程度とされています。
私の会社は一時金2万円で、目安の範囲でいえば下限側です。ただ、手当の額だけで会社の良し悪しは決まりません。見るべきなのは、手当の額よりも、会社が客先から受け取る単価のうち自分にいくら還元されているかだと、規程を読んで考えるようになりました。
目次
- SES基本情報技術者の資格手当はいくら?相場の目安と厚労省の平均
- 私の会社の規程:賃金規程を初めて開きました
- 資格手当は毎月支給か一時金か、賃金規程での書かれ方
- 毎月型と一時金型、年額に直すとどちらが得か
- どの資格から取ると手当が付きやすいか
- 月額支給はいつまで続くのか、更新の確認は自己申告でした
- 基本情報技術者で実際に出た金額と、給与明細に載ったタイミング
- 受験料補助を使えなかった理由も、規程を読んで分かりました
- 資格を取ったあと辞めたら、手当や補助を返す必要はあるのか
- 毎月型の資格手当は残業代の計算に影響するのか
- 資格手当がSESの単価にも評価にも反映されない理由
- 面談・求人で聞いておきたい質問と、確認の順番
- まとめ
SES基本情報技術者の資格手当はいくら?相場の目安と厚労省の平均
結論民間メディアの目安は、毎月型で月5,000〜10,000円、一時金型で2万〜10万円程度です。私の会社は一時金2万円で、目安の下限側でした。
最初に、世間ではどのくらいが普通なのかを整理します。ここで使う数字は出どころが2種類あり、混ぜると誤解のもとになるので分けて書きます。
一つ目は、就職・転職系メディアが紹介している「目安」です。私が確認できた2つの記事では、基本情報技術者の手当は月5,000〜10,000円、合格報奨金(一時金)は2万〜10万円の範囲で紹介されていました(出典: フォーサイト「資格手当とは」、出典: SkillStack「IT資格の資格手当・報奨金」)。
この目安の読み方
各社の公開事例やメディア独自の整理をもとにした目安で、全国調査の統計ではありません。SES企業に限った平均値でもないので、「この範囲に収まっていなければおかしい」と読む数字ではありません。
二つ目は、厚生労働省の統計です。「令和7年就労条件総合調査の概況」(2025年12月公表、対象は常用労働者30人以上の民営企業)によると、諸手当を支給している企業のうち「技能手当、技術(資格)手当など」を支給しているのは53.0%でした(出典: 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査の概況」)。
全企業に対する割合では48.5%です。ちょうど半数弱の会社が資格手当を出している計算になります。前回の令和2年調査は50.8%(全企業ベースでは43.8%)だったので、この5年でやや増えているようです。
同じ資料には、実際に支給された人の平均額もありました。「技能手当、技術(資格)手当など」を受け取った人の1人あたり平均は、月21.5千円です。
令和7年就労条件総合調査の「技能手当、技術(資格)手当など」。高度資格や複数資格の人も含む平均です。
企業規模別では、意外にも30〜99人の会社の平均が25.0千円で、1,000人以上の企業(20.9千円)より高くなっていました。会社の規模と手当の手厚さは、必ずしも比例しないようです。
この平均は、高度資格や複数資格を持つ人も含めた「資格手当全般」の数字です。基本情報を1つ持っているだけで、この水準が毎月出るわけではありません。
2つの数字の使い分け
- 基本情報1つでいくらか知りたいとき: 民間メディアの目安(月5,000〜10,000円、または一時金2万〜10万円程度)
- 資格手当という制度が世の中でどれだけ普通か知りたいとき: 厚労省の統計(支給企業は約半数、平均月21.5千円)
- どちらも「自社の規程」を読む前の物差しで、最終的には自社の別紙一覧が正解
私の一時金2万円を当てはめると、一時金の目安(2万〜10万円)の下限にあたります。年に1度きりの金額なので、月額の目安(月5,000円なら年6万円)と比べると小さく見えるのも事実です。
ただ、これは冒頭に書いたとおり、この金額だけで会社を評価する話ではありません。次の節から、私が規程を開いて確認した中身を順に書きます。
私の会社の規程:賃金規程を初めて開きました
基本情報技術者を取得したのは2社目のころで、取得の経緯や現場でどう扱われたかは、すでに別の記事に書きました。スキルシートの資格欄に記載しても、営業や上司から特にコメントがなかったという話を中心にまとめています。
今回はその続きというより、もう一段掘り下げた話です。資格手当そのものが、いくら、どういう形で出ていたのかを、規程の条文まで確認して整理します。
きっかけは、退職金の記事や副業の記事を書くために、自社のイントラネットにある規程集フォルダを何度か開いたことでした。フォルダの中には「就業規則(本則)」「賃金規程」「旅費規程」「育児・介護休業規程」といったPDFが並んでいます。同じフォルダを何度も開いていたのに、「賃金規程」だけは中身をきちんと読んだことがありませんでした。
今回、初めてこのPDFを開いてみると、A4で24ページほどのボリュームでした。目次には「基本給」「諸手当」「割増賃金」「賞与」といった章が並んでいます。
「諸手当」の章の中に、通勤手当や住宅手当と並んで「資格手当」という条文がありました。条文番号でいうと第18条にあたる部分です。
会社は、会社が別に定める資格手当対象資格一覧に掲げる資格を取得した従業員に対し、当該一覧に定める区分に応じて資格手当を支給する。
金額そのものは条文本文には書かれておらず、別紙の一覧を見るように、という構成になっています。
改めて振り返ると、この条文にたどり着くまでにやったことは、特別な裏技ではなく地味な手順の積み重ねでした。同じように自分の会社の規程を確認したい人のために、実際にやった手順を残しておきます。
- 目次のページを開く「諸手当」に類する章がどこにあるか確認します。
- その章を上から順に読む通勤手当・住宅手当と並ぶ形で資格に関する条文がないか探します。
- 「別に定める」「別紙のとおり」を追う条文中にこの言葉が出てきたら、同じフォルダや同じPDF内に一覧表がないか確認します。
- 受験料の補助の規程も探す資格手当とは別に、受験料の補助を定めた規程がフォルダ内にないかも合わせて確認します。
資格手当は毎月支給か一時金か、賃金規程での書かれ方
資格手当を紹介する記事を検索すると、たいてい支給パターンは大きく2つに分類されています。毎月の給与に上乗せする「毎月支給型」と、合格したときに一度だけ支払う「一時金支給型」です。
自社の別紙一覧を見ると、まさにこの2パターンがそのまま採用されていました。
| 区分 | 対象資格の例 | 支給形態 | 金額の目安 |
|---|---|---|---|
| 一時金支給 | 基本情報技術者、応用情報技術者 | 合格した月の翌々月の給与に合算して一括支給 | 基本情報 20,000円、応用情報 50,000円 |
| 月額支給 | 高度区分(ITストラテジスト等)、AWS認定(アソシエイト以上) | 資格が有効な期間、毎月給与に合算して支給。更新を怠ると打ち切り | 月3,000円〜5,000円 |
| 対象外 | SEO検定、PMPなど、一覧に掲載のない資格 | 支給なし | ― |
基本情報技術者は一時金区分に入っていました。一方、高度区分やAWS認定のような資格は月額区分で、しかも資格の有効期限が切れて更新を怠ると支給が打ち切られる、という条件つきです。
AWS認定は3年ごとの再認定が必要な資格なので、取ったら取りっぱなしというわけにはいかない設計になっているのだと思います。
もう一つ気づいたのは、自分が持っているSEO検定が、この一覧のどこにも載っていなかったことです。改めて隅々まで見てみると、プロジェクトマネジメントの国際資格であるPMPのような、名前を聞けば難易度が高いと分かる資格も載っていませんでした。
IT系の国家資格やベンダー資格が中心の一覧で、それ以外の分野の資格は最初から想定されていないようでした。資格を持っていることと、それが手当の対象になるかどうかは、まったく別の話なのだと、一覧を見て初めて実感しました。
毎月型と一時金型、年額に直すとどちらが得か
比べやすいように、年額に直してみます。
私の会社の別紙の金額で試算した年額換算の目安です。
資格を維持し続けた場合の総額だけを見れば、月額型のほうがずっと大きくなります。一方で、月額型は更新のたびに再認定の手間がかかる資格が多く、失効すれば打ち切られる条件つきです。
一時金は1回で終わる代わりに、更新の手間も打ち切りの心配もありません。有効期限のない基本情報のような資格が一時金型なのは、自然な設計だと思います。
ただし、手当がいつまで出るかは会社の規程次第で、他社では違う可能性があります。月額区分は私自身が取得・受給した経験のない資格ばかりで、規程を読んで知った範囲の話です。「月額のほうが得」と断定はできません。
どの資格から取ると手当が付きやすいか
私の会社の一覧では、応用情報技術者も一時金区分で、金額は基本情報の2.5倍にあたる50,000円でした。難易度が上がるぶん金額も上がる、という素直な作りです。
基本情報を取ったときは「次はクラウド系の資格を」と考えていましたが、この一覧を見た後は、応用情報を先に狙うほうが手当の面では効率がいいのかもしれないと思うようになりました。実際に勉強を始めたわけではなく、規程を眺めて考えただけの話です。
手当が付くかどうかは、資格の知名度や難しさではなく、その会社の一覧に載っているかで決まります。取る前に別紙を確認する、というのが一番手堅い順番です。
月額支給はいつまで続くのか、更新の確認は自己申告でした
別紙をもう少し読み込むと、月額区分の資格については更新の確認方法についても一文がありました。
「有効期限が切れた場合は、更新後の合格証・認定証の写しを速やかに提出すること」とあり、会社側が資格の有効期限を自動的に追跡してくれるわけではなく、本人からの自己申告が前提になっている書きぶりです。
これを読んで真っ先に思ったのは、うっかり更新を忘れて期限が切れた場合、それに会社側が気づくタイミングはいつなのか、という疑問でした。条文からは、定期的なチェックの仕組みまでは読み取れませんでした。
もし将来AWS認定のような月額区分の資格を取ることがあれば、更新時期をどう自己管理するかも、資格を取ること自体と同じくらい重要になりそうです。
基本情報技術者で実際に出た金額と、給与明細に載ったタイミング
実際に自分が受け取ったのは、一時金の基本情報技術者、20,000円でした。手続きは簡単で、流れは次のとおりです。
- 合格から3週間ほど後:申請書を出す参画中の案件が落ち着いていた時期に、社内のワークフローシステムから「資格手当支給申請書」を提出しました。IPAのサイトからダウンロードした合格を示す書類のPDFを添付しただけです。
- 人事の確認返信は「確認しました、対象資格に該当します」という趣旨の一言だけでした。
- 翌々月:給与明細に載る申請した月の給与には間に合わず、翌々月の給与明細に「資格取得一時金」という項目で20,000円が加算されていました。
給与明細に載る以上、通常の所得税・住民税の対象になるので、額面の20,000円がそのまま手元に残ったわけではありません。ただ、どこまで引かれているのかまでは、明細だけでは切り分けられませんでした。
額面で2万円出たという事実までしか、自分には分かりませんでした。あとから調べた内容と、確認できていないことを整理しておきます。
「資格取得一時金」で確認できていないこと
- 社会保険料への影響:通常の月給に近い扱いか賞与に近い扱いか、人事に確認していません。日本年金機構のサイトには、賞与にあたる「標準賞与額」の対象は名称を問わず年3回以下の支給で、定期的でなくても一時的に支給されるものも含まれる、とあります(出典: 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。毎月型なら毎月の報酬側、一時金型なら賞与側として扱われる可能性がありますが、自社がどちらで処理したかは未確認です
- 受験料補助の課税:国税庁のタックスアンサーには、職務に直接必要な資格を取得させるための研修会・講習会の出席費用などで、適正なものに限り給与として課税しなくてよい、という扱いが載っています(出典: 国税庁 タックスアンサーNo.2601)。会社が費用そのものを負担する場合の話で、合格祝い金のような手当は、給与として課税されるのが原則だと理解しています。受験料の補助がこの扱いに当たるかどうかは確認できていません
金額が2万円と大きくなかったこともあり、深く気にせず終わらせてしまいました。これが何十万円という規模の手当だったら、社会保険料の扱いは先に確認しておくべきだったと思います。
以前の記事では、スキルシートに書いても営業や上司から特にコメントがなかったと書きましたが、この一時金の申請は完全に別ルートでした。営業や上司を介さず、人事への事務手続きだけで完結する話だったからです。現場での評価と、資格手当の支給は、そもそも窓口からして違うのだと、規程を読んで初めて整理できました。
受験料補助を使えなかった理由も、規程を読んで分かりました
賃金規程とは別に、社内には「資格取得支援規程」という文書もありました。開いてみると、受験料の補助について定めた条文があります。
業務に関連する資格として別に定めるものを受験しようとする従業員が、受験前に所定の様式により申請し、所属長の承認を得た場合であって、当該試験に合格したときは、受験料の実費を支給する。
ポイントは受験前の事前申請が要件になっていることです。合格した後に「実は受けていました」と申告しても、この規程の対象にはなりません。
もう一つ気づいたのは、資格取得支援規程が定める「業務に関連する資格として別に定めるもの」という対象範囲が、資格手当の対象資格一覧とまったく同じなのかどうか、条文を読んだだけでは判断できなかったことです。
趣旨としては重なっていそうですが、別の規程である以上、対象を定めた別紙も別に存在している可能性があります。今回はこの点まで人事に問い合わせておらず、正確な対象範囲はいまだに把握できていません。
私の場合
基本情報技術者は完全に独学で、誰にも相談せず参考書を買って、仕事の合間を縫ってコツコツ勉強していました。会社にこういう制度があること自体、当時はまったく知りませんでした。
事前に申請するという発想がそもそもなく、結果として受験料は全額自腹で払っています。
IPAの公式サイトによると、現在の基本情報技術者試験の受験手数料は7,500円です(出典: IPA「試験日程・受験手数料」)。私が払った時期の金額とは違う可能性がありますが、いずれにしても数千円が丸ごと自腹だったことになります。
ポイント: 資格取得支援規程は、賃金規程とは別のファイルに置かれていて、資格手当の条文だけを読んでいても存在に気づけませんでした。先に知っていれば実費が出ていたはずの制度を、知らないまま自腹で受験していたことになります。
規程集は「該当しそうな条文だけ」を探しに行くと、こういう見落としが起きやすいのだと実感しました。
今から遡って申請できるわけでもないので、この件はもう取り返しがつきません。ただ、次に何か資格を取ろうとするときは、勉強を始める前に規程集全体に目を通しておこうと思っています。会社の研修や学習支援がどこまであてになるかは、研修制度を扱った記事にも書いています。
会社の支援とは別に、自分で学習手段を選ぶなら、スマホで講義と問題演習ができる月額制のオンライン講座(オンスク.JP
など)もあります。手当の対象資格が決まったあとに教材を探す段階で、比較の候補にはなると思います。
資格を取ったあと辞めたら、手当や補助を返す必要はあるのか
結論返す必要があるかどうかは、自社の規程に返還の条項があるかで変わります。労働基準法第16条は違約金の予定を禁じていますが、返還条項がそれに触れるかは個別の判断です。
受験料補助や手当の規程を読んでいて、もう一つ気になったのが、取得後にすぐ辞めた場合の扱いです。よくある不安なので、分かる範囲で整理しておきます。
労働基準法第16条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしたりすることを禁じています(出典: e-Gov法令検索 労働基準法)。
断定できないこと
規程に「一定期間内に退職したら受験料や手当を返還する」という条項がある会社もあり、それが第16条に触れるかどうかは、条項の書き方や費用の性質によって個別に判断される、と理解しています。ここは私の専門外で、断定はできません。
私の会社の賃金規程と資格取得支援規程には、自分が読んだ範囲では返還に関する条項を確認できていません。読み漏らしの可能性もあるので、「返還の条項はない」と言い切るつもりはありません。
だからこそ、受験前や申請前に読むべき箇所として、規程の中の「退職」「返還」「償還」といった言葉を一度検索しておくことをおすすめします。PDFなら文字列検索で数秒です。
毎月型の資格手当は残業代の計算に影響するのか
別紙の一覧を眺めていて、もう一つ気になったことがあります。月額支給型の資格手当(高度区分やAWS認定)は、残業代の計算にどう影響するのか、という点です。
結論影響します。資格手当は割増賃金の基礎から除外できる7つに入っていないため、毎月支給の資格手当は原則として残業代の計算に含める必要があるとされています。
厚生労働省・労働局・労働基準監督署が出しているリーフレットによると、割増賃金の算定基礎から除外できる賃金は、次の7つに限られています。
割増賃金の算定基礎から除外できる7つの賃金
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
これは例示ではなく限定列挙だと明記されています(出典: 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「割増賃金の基礎となる賃金とは?」、根拠条文は出典: 労働基準法施行規則第21条|e-Gov法令検索)。資格手当はこの7つのどこにも名指しされていないため、毎月支給される資格手当は、原則として残業代を計算するときの基礎に含める必要があるとされています。
自分が受け取った基本情報の資格手当は一時金だったので、この論点はそのまま当てはまりません。条文には「臨時に支払われた賃金」も除外項目として挙がっていますが、この一時金がその区分に当たるのかは、条文を読んだだけでは判断がつきませんでした。
もし今後、高度区分やAWS認定で月額の手当をもらうことになれば、その分だけ残業単価もわずかに底上げされるはずです。
資格手当がSESの単価にも評価にも反映されない理由
ここまで見てきたように、資格手当という制度自体はきちんと存在していて、基本情報技術者で実際に20,000円が出ました。ただ、これが単価アップや評価アップにつながったかというと、まったく別の話です。
結論資格手当は自社の賃金規程、単価は自社と客先の個別契約書で決まり、両者をつなぐ条文がないからです。
以前の記事にも書きましたが、スキルシートに資格を記載しても、営業や上司から単価交渉の材料として扱われた実感はありません。今回、賃金規程を読んで、その理由が少し整理できました。
| 資格手当 | 単価 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 賃金規程(自社の内部制度) | 自社と客先の間で結ばれる個別契約書(会社同士の取引条件) |
| 資格取得と結びつける条文 | 対象資格の別紙一覧に載っていれば支給 | どこにもない |
この2つの書面には、資格取得と単価改定を結びつける条文はどこにもありません。資格手当と単価は、そもそも別の財布から出ているというのが、規程を読んでたどり着いた結論です。
賞与が単価に連動しないという話も、根っこは同じ構造です。自社から出るお金(資格手当・賞与)は自社の制度で決まり、客先からの請求単価は会社間の交渉で決まる。
この2つが独立している以上、資格を取ったからといって単価が動くことを期待するのは、そもそも規程の建てつけに合っていないのだと思います。
もう一つ、手当の額を見るときに忘れたくない視点があります。月1万円の手当があっても、客先から会社が受け取る単価のうち自分に還元される割合が低ければ、差はそちらで簡単に逆転します。
たとえば、私は単価60万円で月収30万円という現場を経験しましたが、還元率が1割違えば、月に数万円の差になります。月5,000円や1万円の手当より、マージン率・還元率や昇給幅のほうが、年収への影響は大きくなりやすいのです。単価が上がらない構造については、単価が上がらない理由を扱った記事にもまとめています。
面談・求人で聞いておきたい質問と、確認の順番
求人票や面談で「資格手当あり」と言われても、それが毎月型なのか一時金型なのか、対象資格がどこまで広いのかは、聞かなければ分からないことがほとんどです。
私が今なら聞く質問を、例文つきで並べます。
面談・入社前後に聞いておきたい質問
- 毎月型か一時金型か:「基本情報だと、手当は毎月ですか、合格時の一時金ですか」
- 対象資格の範囲:「対象資格の一覧(別紙)は、見せていただけますか」
- 入社前に取った資格は対象か:「入社前に取得済みの資格も、手当の対象になりますか」
- 手当に期限や失効条件はあるか:「更新が必要な資格は、更新しないと打ち切りになりますか」
- 受験料補助は事前申請か:「受験料の補助は、受験前の申請が必要ですか」
「資格手当はありますか」とだけ聞いても、返ってくるのは「あります」の一言だけのことが多いはずです。金額や条件まで踏み込んで聞くのは気が引けるかもしれませんが、上のように具体的な言い方にすると角が立ちにくくなります。
入社が決まった後であれば、人事に「賃金規程の資格手当の別紙を見せてもらえますか」と一言添えるだけで、対象資格と金額の一覧を見せてもらえる可能性があります。
なお、統計上も資格手当を出している会社は約半数ですから、手当が無いこと自体は珍しくありません。無いからといって、それだけで悪い会社とは決めつけないでください。
私のように、働き始めて5年以上経ってから初めて条文を読む、というのはさすがに遅すぎました。
まとめ
自社の賃金規程を実際に読んで分かったのは、資格手当という制度そのものはきちんと存在していて、基本情報技術者で20,000円の一時金が出た、という事実でした。民間メディアが挙げる一時金の範囲(2万〜10万円程度)では下限側です。厚生労働省の統計では、支給企業は全体の半数弱、支給された人の平均は月2.15万円でしたが、基本情報1つの話ではないので比べすぎないほうがよいと思っています。
規程を読んで持ち帰ったこと
- 対象資格の別紙一覧に載っていなければ、資格を持っていても手当は出ない
- 受験料補助は受験前の事前申請が要件で、合格後の申告では対象にならない
- 資格手当は自社の賃金規程、単価は自社と客先の個別契約書で決まり、両者をつなぐ条文はない
- 年収への効き方は、手当の額よりも還元率や昇給幅のほうが大きくなりやすい
だから、手当の額に一喜一憂するより、還元率や昇給幅のような年収に大きく効く数字を見るほうが優先度は高いと私は考えています。
もし今、自分の会社に資格手当があるかどうかを知らないまま働いているなら、賃金規程の「諸手当」の章と、その別紙の対象資格一覧を、一度自分の目で確認してみてください。私のように資格を取った後になってから読むより、取る前に条件を知っておいたほうが、受験料補助のような見落としも防げるはずです。




