「継続で決まりました」という一行のメッセージが、3か月に一度だけ届きます。それが更新の連絡のすべてで、面談も説明もありません。
SESエンジニアとして5年ほど、4社の客先常駐を経験してきましたが、この周期に慣れるまでには時間がかかりました。
今回は、SESの契約期間と更新の仕組み、3か月ごとの更新が働く側の生活に何をもたらすのか、そしてその周期をどう扱うようにしたかをお伝えします。
この記事で分かること
- SESの契約期間は何か月が多いのか、更新の連絡がいつ、どんな形で来るのか
- 契約期間の途中で切られることはあるのか
- 更新されるときと終了するときで、連絡の丁寧さが逆になる話
- 評価は半年に1回なのに契約は3か月ごと、という周期のずれ
- 更新されない兆候が、営業からの連絡より先に現場に出ていた話
- 3か月という周期を、不安ではなく別の用途に使う方法
目次
SESの契約期間は3か月更新が基本です
私が経験してきた範囲では、常駐先との契約期間は3か月で、それを更新していく形が最も多いものでした。現場によっては1か月更新のところも、6か月更新のところもあります。ただ、標準はやはり3か月です。
3社目の現場には2年半いました。3か月更新だったので、単純に数えると9回から10回、更新の判断が繰り返されたことになります。
当時はそう意識していませんでしたが、あとから振り返ると、あの現場にいた期間はずっと3か月刻みで区切られていたわけです。
更新の連絡は、いつどう来るのか
更新月の前月に、自社の営業から連絡が来ます。文面は毎回ほとんど同じで、継続で決まりました、という趣旨の一行だけです。
更新面談のような場が設けられたことは一度もありません。今期はどうだったか、次の3か月で何を期待されているか、といった話が出ることもない。客先がどう評価して更新を決めたのかも、こちらには伝わってきません。
説明がないことに文句を言いたいわけではありません。会社間で結ばれる契約の更新なので、常駐している本人に説明する手続きがそもそも組み込まれていない、というだけの話です。
契約更新の可否は会社同士が決めるもの、という構造は、更新されるときも終了するときも変わりません。終了が決まった後の通知の時期や待機中の給与については、契約終了で現場が変わったときの記事にまとめています。
現場によって周期が違うのはなぜか
3か月が標準とはいえ、現場ごとに周期は違います。1か月更新の現場に入ったこともありますし、6か月でまとめて契約されている現場もありました。
見ていると、この差はフェーズの長さと予算の付き方に対応しているようです。要員を細かく出し入れしたい事情があるほど、周期は短くなります。
| 周期 | 現場の事情 | 働く側の感覚 |
|---|---|---|
| 1か月 | 増員を短期で調整したい局面 | 落ち着かない。入ってすぐ次の更新の判断が来るので、立ち上がりの評価がそのまま継続の可否に直結しているように感じる |
| 6か月 | 要件定義から結合テストまでを一つの契約でまとめて押さえている現場 | 安心感がある一方、合わない現場に当たったときは長く感じる |
ただ、どの周期になるかも自分では選べません。面談の場でも周期の話が出ることはまずなく、参画してから知ることがほとんどでした。
連絡が来ないまま更新月に入ったことがあります
前月に来るはずの連絡が、来ないことがありました。
更新月の前月末になっても何も言われず、営業に自分から確認したところ、まだ調整中です、という返事でした。そこから2週間ほど、更新されるかどうか分からないまま現場で作業を続けることになります。
その間、現場では次のスプリントのタスクが割り当てられ、来月の作業計画にも自分の名前が入っている。現場は自分が続く前提で動いているのに、契約はまだ決まっていない。この時期はさすがに落ち着きませんでした。
結果としては更新されました。理由も特に説明されないままです。あとから考えると、客先の予算処理か元請けの決裁が遅れていただけだと思います。ただ、遅れている理由が本人に共有されないので、こちらは想像するしかありません。
契約期間の途中で切られることはあるのか
結論私の経験では、契約が終わったのはすべて期間満了のときで、途中で打ち切られたことは一度もありません。ただし制度上は、途中で解除できないわけではありません。
「SESは契約を切られやすい」と言われることがあります。私の経験では、契約が終わったのはすべて更新のタイミング、つまり契約期間の満了時でした。3か月の途中で突然打ち切られたことは一度もありません。
ただ、これは運が良かっただけかもしれない、とも思っています。SESの客先常駐で一般的な準委任契約には民法の委任の規定が準用され、各当事者はいつでも契約を解除できるのが原則です(出典: 民法 第651条|e-Gov法令検索)。
ただし、相手に不利な時期に解除した場合は損害賠償の対象になり得る、という例外もあります。契約期間が3か月と決まっていても、その期間が本人の働く場所を法律で保証しているわけではありません。
| 期間満了で更新されない | 期間の途中で解除される | |
|---|---|---|
| 私の経験 | 何度かある(大半はフェーズの区切り) | 一度もない |
| 事前の連絡 | 1か月前後 | 経験がないため不明 |
| 起きやすい場面 | フェーズの終了、体制の縮小、予算の見直し | 予算の凍結、プロジェクト自体の中止など(私は当たったことがない) |
実際に「切られる」の中身は、ほとんどが期間満了で更新されないほうだと感じています。3か月ごとに更新の判断があるので、客先が体制を減らしたいときは、途中で解除するより次の更新をしないほうが角が立たないからです。
労働者派遣であれば、派遣先の都合で契約を途中解除するときに、次の就業先の確保などを求められる仕組みがあります。準委任のSESにはそれに当たる規定がありません。この違いは、契約終了で現場が変わったときの記事で条文まで含めて整理しています。
更新されるときより、終わるときのほうが丁寧です
何度か繰り返すうちに気づいたことがあります。連絡の丁寧さが、内容と逆になっているという点です。
更新されるときの連絡は短く、チャットの一行で済みます。一方、契約が終了するときは、電話がかかってきたり、時間をとって対面で伝えられたりします。伝える側からすれば当然の配慮なのですが、受け取る側としては妙な感覚が生まれます。
営業から「少し時間をもらえますか」と言われた時点で、内容の見当がついてしまう。連絡の形式で結論を察してしまうという状態です。悪意があってそうなっているわけではないぶん、余計に断りようがありません。
評価は半年に1回、契約は3か月ごと
この2つの周期がずれていることに気づいたのは、割と最近です。
自社の評価面談は半年に1回です。期初に目標を立て、期末に振り返る。人事制度としてはごく普通の周期だと思います。一方、常駐先との契約はその半分の周期で更新の判断がなされます。
つまり、半年の評価期間の途中で、契約は少なくとも一度は更新の判断を受けています。そして更新の判断材料は自社の評価とは無関係に、客先の都合とフェーズの区切りで決まります。
| 自社の評価 | 常駐先との契約 | |
|---|---|---|
| 周期 | 半年に1回 | 3か月ごと |
| 決める人 | 自社の営業と部門長 | 客先と自社の間の交渉 |
| 判断材料 | 営業経由の伝聞 | フェーズの区切り、体制の増減、予算 |
| 本人への説明 | 面談で30分ほど | 一行の連絡のみ |
こうして並べると、自分の働き方を実際に区切っているのは左ではなく右だと分かります。評価のサイクルに合わせて半年単位で物事を考えていると、その前提が3か月で崩れることがある。
目標を立てても現場が変わって宙に浮く、という現象の原因はここにもあります。
更新されない兆候は、現場に先に出ます
3社目にいたときの話です。共有フォルダに次期フェーズの体制表が置かれているのを見つけました。何気なく開いてみたら、自分の名前がありませんでした。
その少し前、同じフェーズに向けて出した共通化の提案が課題票に載ったところでした。自分の提案は次期フェーズの検討事項として残っているのに、それを検討する体制の中に自分はいない。奇妙な状態です。
営業から契約終了の連絡が来たのは、その2週間ほど後でした。会社同士で正式に決まるより先に、現場の資料には答えが出ていたことになります。
驚きはしませんでした。むしろ、心の準備ができていた分だけ受け止めやすかったと思います。ただ、これを知ったところで結果が変わったわけではありません。体制表を見て何か行動を起こしたわけでもなく、ただ2週間早く知っていただけです。
現場に先に出やすい兆候
- 次期フェーズや次年度の体制表、要員計画の資料
- 自分の担当範囲の引き継ぎ資料を作るよう依頼される
- 長期の課題や次フェーズの検討会に呼ばれなくなる
- 座席の配置換えの話が出たときに、自分の席が図に入っていない
これらを見つけたところで、できることはほとんどありません。それでも、知っておく価値はあると考えています。突然告げられるのと、薄々分かっていて告げられるのとでは、受け止めるときの負担がだいぶ違うからです。
同じ現場に3年以上いる人がいるのはなぜか
結論SESの客先常駐は準委任契約が一般的で、労働者派遣とは契約の形が違います。派遣の3年という期間制限とは別の話だ、というのが私の理解です。
3か月ごとに更新されるという話をすると、では上限はあるのかという疑問が出てきます。私の周りには、同じ現場に3年以上いる人が何人もいました。
ここで混同されやすいのが、労働者派遣の期間制限です。次のように定められています。
| 区分 | 労働者派遣の期間制限 |
|---|---|
| 事業所単位 | 同一の派遣先事業所で派遣を受け入れられる期間は原則3年が限度。超える場合は過半数労働組合から意見を聞く手続きが必要 |
| 個人単位 | 同一の派遣労働者を派遣先の同一組織単位で受け入れられるのは3年が限度 |
| 例外 | 派遣元に無期雇用されている派遣労働者などは、この期間制限の例外とされている |
(出典: 派遣労働者の受け入れルールの具体的内容|厚生労働省 宮城労働局)
SESの客先常駐は準委任契約で結ばれるのが一般的で、労働者派遣とは契約の形が違います。だから同じ現場に3年、5年といる人が出てくる、という理解です。ただ、契約形態と法律の建て付けについては面談と契約形態を扱った記事で厚生労働省の判断基準まで含めて整理しているので、正確なところはそちらを見てもらうほうが確実です。
私自身は、この上限のなさをありがたいとも困るとも感じていません。3年いられる現場かどうかは自分では決められないので、考えても仕方がない部類の話だと割り切っています。
長くいられること自体が良いとも限りません。同じ現場に何年もいる人は業務知識が深い一方、その知識は現場の外に持ち出せない種類のものです。3か月ごとに更新されながら5年在籍する、という状態は、安定しているようで、積み上がっているものが偏っている可能性もあります。
3か月の周期が、生活のどこに効いてくるか
働き方の話としてより実感が強いのは、生活の側です。
私の場合(引っ越しを検討したとき)
当時の現場までの通勤が長く、近くに移れば楽になるのは分かっていました。ただ、3か月後にその現場にいる保証がありません。契約が更新されなければ、次の現場は都内のまったく別の方向かもしれない。
結局、動きませんでした。
定期券を3か月にするか6か月にするかも、毎回迷います。6か月のほうが割安ですが、途中で現場が変わればその差額は無駄になります。
金額としては大した話ではありません。ただ、こういう小さな判断のたびに自分の予定が3か月で切れていることを思い出すことになります。
数か月先の予定を押さえるものは、だいたい同じ悩み方をします。資格試験の申込、長期の勉強計画、家族との予定。どれも、現場が変わる可能性を織り込んで決めることになります。
今は、継続の連絡が来てから予定を入れるようにしています。定期券を買い直すのも、少し先の約束を確定させるのも、更新が決まった後です。順番を逆にすると、決まっていないことを前提に動くことになるので落ち着きません。
この習慣の副作用
この習慣自体は悪くないと思っていますが、副作用もあります。何かを始めるときに、無意識に3か月で終わる形に設計してしまう。長く続ける前提のものに手を出しにくくなる、という癖がついた自覚はあります。
これを深刻な不利益として書くつもりはありません。転勤のある会社に勤めていれば似た制約はありますし、SESに限った話でもない。ただ、3か月という周期は転勤より短く、そして自分の意思がまったく介在しない、という点は特徴だと思います。
こちらから更新を断ることはできるのか
結論形式の上ではできます。ただ、降りることの影響が自分だけで完結しないため、私は一度も断ったことがありません。
更新の判断は会社同士がする、と書いてきましたが、では自分から降りることはできるのか。形式の上ではできます。自社の営業に、次の更新はしたくないと伝える経路はあります。
ただ、参画前に案件を断るのとは重さが違います。面談の段階で断ることなら、こちらに待機というコストがかかるだけで済みます。参画した後に降りると、客先の体制に穴が開きます。
降りることの影響が、自分だけで完結しない2つの理由
- 現場の計画に穴が開く現場の側は、次のフェーズに自分がいる前提で計画を組んでいます。引き継ぎの相手を用意する必要がありますし、要員の補充にも時間がかかります。
- 営業と客先の関係に傷がつく営業の立場でも、客先との関係に傷がつく話になります。
私自身、更新を断ったことは一度もありません。断りたいと思った現場がなかったわけではないのですが、そこまでの理由かと自問すると、いつも踏みとどまってきました。担当が狭く固定されて判断の経験が積めない状態が続いていた時期でも、結局は更新を受けています。
これを美談にするつもりはありません。単に、降りた後にどうなるかが読めなかったから動かなかった、というのが正直なところです。
次の現場がいつ決まるかも、それが今より良い現場かも分からない。降りる判断には、降りた先の情報が要るのに、その情報はこちらにありません。
続けること自体が難しい理由があるとき
体調や家庭の事情のように、続けること自体が難しい理由があるなら話は別だと思います。そのときは早く伝えるほど選択肢が残ります。更新月の直前より、その1か月前に相談したほうが、引き継ぎも補充も間に合います。
3か月ごとの不安と、どう付き合っているか
更新されるかどうかを心配しても、結果は動きません。決めるのは会社同士で、こちらに交渉の席はない。これは何度確認しても同じ結論に行き着きます。
そこで、周期そのものの使い方を変えました。今は3か月を、不安の周期ではなく棚卸しの周期として使っています。
継続の連絡が来たタイミングで、この3か月で自分が何を判断したか、スキルシートに何を書き足せるようになったかを書き出すことにしました。以前の記事で、自社の評価の代わりに使う指標を3つ挙げたことがあります。
その3つを、半年の評価面談ではなく3か月の更新に合わせて見るようにした、ということです。
3か月ごとの棚卸しで見ること
- この3か月で、自分の判断が成果物に反映されたことがあったかゼロなら、次の3か月で何を試すかを決めます
- スキルシートに書き足せる経験が増えたか増えていなければ、現場の中で動く余地があるかを確認します
- 面談で聞かれそうな質問に、前より深く答えられるようになったか技術名の説明で止まっていないかを見ます
契約のほうが評価より周期が短いので、実態に合っているのはこちらでした。自分の状態を測る周期は、会社の人事制度ではなく契約の周期に合わせるほうが実用的だというのが、今のところの結論です。
もう一つ、これは気休めに近いのですが、更新の連絡が来た日をメモに残すようにしました。並べてみると、自分が思っていたほど不安定ではなかったことが分かります。
実際、更新されなかったのは数えるほどで、その大半もフェーズの区切りによるものでした。体感の不安と実際の頻度は、けっこうずれています。
それでも3か月ごとの区切りそのものが負担になっているなら、契約更新に左右されにくい働き方を調べてみる手もあります。たとえば社内SE転職ナビ
は、常駐のない求人が中心の転職サービスです。棚卸しの周期に合わせて、外の求人にも目を通しておくと、選択肢の幅が見えてきます。
まとめ
SESの契約期間は3か月で、それを更新していく形が基本です。更新の連絡は前月に営業から一行で届き、更新面談も、なぜ更新されたのかの説明もありません。会社間の契約なので、本人に説明する手続きがそもそも組み込まれていないためです。
この記事の要点
- 契約が切られるのは、私の経験ではすべて期間満了のタイミング。ただ、準委任契約は制度上いつでも解除できるのが原則で、契約期間が本人の居場所を保証しているわけではない
- 自社の評価は半年に1回、契約の判断は3か月ごと。この周期のずれを意識していないと、半年単位で立てた計画が途中で前提から崩れる。自分の働き方を実際に区切っているのは、評価ではなく契約のほう
- 更新されない兆候は、営業からの連絡より先に現場の資料に出ていることがある。私の場合、次期フェーズの体制表に自分の名前がないことに気づいたのが、正式な連絡の2週間前だった
体制表に気づいたところで結果が変わったわけではありませんが、心の準備ができた分だけ受け止めやすくはなりました。心配しても更新の可否は動きません。だから私は、3か月を不安の周期ではなく棚卸しの周期として使うようにしました。
継続の連絡が来たら、その3か月で何を判断できたかを書き出す。先の予定が立たない働き方の中で、これは自分の側だけで完結する数少ない習慣です。




